Antonio Vivaldiは1725年にアムステルダムのLe Cene社より、
作品8「和声と創意への試み」"Il Cimento dell'Armonia e dell'Inventione"
を出版しました。そう、有名な「四季」を含む12曲の協奏曲集です。
ヴィヴァルディの他の作品集と同様に、自筆譜の類は残されておらず、
この曲集もいつ頃どこで作曲された物かは不明ですが、
1725年よりもかなり前から曲は存在していたようです。
この曲集はボヘミアの貴族、
ヴェンツェル・フォン・モルツィン伯爵に献呈されました。
四季と言えば日本人でも知らぬ者のいないほどの有名な曲集です。
各季節を楽譜に書き加えられたソネットに基づいて描写するスタイルから、
季節の移ろいに敏感な日本人の心を掴んだのかもしれません。
もちろんヨーロッパでも有名で、出版当初から大きな反響を呼びました。
例えばフランスの「メルキュール・ド・フランス」紙の記事によると、
1730年11月25日に時のフランス王ルイ15世は突然ヴィヴァルディの「春」
が聴きたくなり、ヴェルサイユの宮廷貴族達に自分たちですぐに演奏するよう命じたそうです。
ヴィヴァルディ自身も気に入ったのか、オペラや宗教曲にも転用されています。
自筆譜類が残されていないため、現在の楽譜は殆どアムステルダム初版譜に基づいていましたが、
最近ベーレンライター社から、
マンチェスターのパブリックスクールに保管されていた手稿パート譜に基づく版が出版されました。
これは1726年にオットボーニ枢機卿に献呈されるために製作されたそうです。
こちらの方がよりオリジナルに近いと思われ、
細かく指示されている強弱やアーティキュレーションは、
より生き生きとした演奏を可能にするのではないでしょうか。この版に基づくCDも出てきています。
四季なんてもう聴き飽きたなんて言わないで、
アムステルダム版とマンチェスター版の違いを聴き分けてみるというのはいかがでしょうか?
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