博士の愛した数式

渋谷・渋谷東急

起きたら外は雪が積もっていた。こっち来てから積もったの何回目だろう？今日は久しぶりに渋谷に行きたい。

「有頂天ホテル」でもいいかなぁ、と思ったのだけど、まだまだ混んでいそう。シネタワーだからなぁ。そんなわけで、空いていそうな作品を探すと・・・、初日だけど「博士の愛した数式」か？場所は渋谷東急と外れた位置にあるし、作品的に渋谷っぽくないし。午前中に舞台挨拶があったみたいなので、目当ての人はそこに来ているだろう。

そんなわけで、まだ雪がちらつく中、渋谷へ。一時間前にチケットを購入。ふむ、いつもより入っているようだけども、まだ良い席は空いている。いつもどおりのあたりを確保。

今年初渋谷なので、 HMV を物色。今日はポイント3倍らしい。セールもやっていたので、数枚購入。 Book1st にもいって、こちらも数冊。雪で道が悪くなっているので、早めに戻る。結局は時間どおりでした。

「博士の愛した数式」。新しいクラスで教えることになった数学教師のルート。彼は自分が数学の道を目指すきっかけとなった、ある博士の話を始める。博士は、家政婦で派遣された先で出会った。ルートと名付けてくれたのも博士だ。博士は交通事故の後遺症で、80分しか記憶がもたない障害を抱えていた。

直木賞作家、小川洋子の原作を「阿弥陀堂だより」の小泉堯史監督が映像化。原作は第一回本屋大賞に輝いています。

私としては珍しく、原作を読んだ後の鑑賞となりました。原作は大変印象的で爽やかな読後感を与えてくれる作品でしたが、それがどう映像になっているのか？

タイトルの大海原と重々しい音楽に、まず違和感を覚える。次に、吉岡秀隆が先生役ででてきたのに驚く。原作から、彼がルートであることはすぐにわかったが、彼の登場は導入だけではなかった。

キャストはね、良いと思うんですよ。深津絵理も寺尾聰も。映像も綺麗なんですよ、爽やかな感じで。でも、違和感が残る。その原因のひとつは音楽。加古隆が担当で、小泉監督とはおなじみの組合せ。最初にこのオファーありきだったのかなぁ。ちょっと重すぎ。

あとは語り部にルートを持ってきたこと。これでは彼と博士の物語になりかねない。あくまでも主人公は深津絵理であるはずなのに。

さらに、この物語で一番重要なエピソードである江夏のくだりがあっさりと描かれてしまい、それに絡むエピソードは少しずつ変えられていた。

映画単体で作品を見た場合、心暖まるエピソードが続くので、これはこれでいい印象を受けるだろう。ただし、博士がオイラーの公式を持ちだしてくる意味が、そしてそれによりもたらされるものが、ものすごーく分かりにくくなっている。

映画と原作は別物だという人もいるだろう。でも、それならば原作はいらない。原作があるからこそ映画化されるのだ。で、原作のいいとこどりをした結果、原作を知らないと理解できない作品というのができあがることがある。最近でいうならば、「レディ・ジョーカー」がそうだった。そして、この作品も同じ轍を踏んでしまったようだ。

それぞれのエピソードは成立している。しかし、それぞれに加えられた小さな変更が、最後の重要なエピソードに集約しない。なんとなくいい作品だが、そこまでどまり。「原作の方がよかった」のではなく、「原作の良さがでていない」のだ。

原作未読で見た人に、オイラーの公式の役回りが理解できたのか聞いて見たい。

前述のとおり、映画自体は、いい印象を残しますよ。じゃあ、どこが見どころか？と言われると、困るんです。山場が分かりにくいので。

エンドロールでまた重くなるんです。

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