少年たちは花火を横から見たかった

岩井俊二(1999)

いやね,昨日の夜バスで帰省から戻って来たんですが,さすがに疲れましてね. 朝から午後まで寝てたわけですよ.そして明日は健康診断があるので早めに寝な いといけないし,家で過ごそうということにしました.それで,ビデオ・・・ というかDVDを買ったので,これを見ましょう.

買ったのは「打ち上げ花火,横からみるか?下から見るか?」と 「少年たちは花火を横から見たかった」.結構好きな作品だし,レンタルはして ないし.ん?ビデオはレンタルしてるのかな?とにかく,持っててもいいかな的作 品.しかし,DVDは安くていいのう.

で,今日は「少年たちは花火を横から見たかった」.「打ち上げ花火,横からみ るか?下から見るか?」の撮影から6年後.主人公を演じた奥菜恵と山崎裕太が ロケ地を訪れ当時の撮影を振り返る.

この作品は「打ち上げ花火,横からみるか?下から見るか?」を見ていないと 話にならない.「打ち上げ花火,横からみるか?下から見るか?」は1993年, フジテレビ系のドラマ「if もしも」の一作としてオンエアされました. この「if もしも」が放送された枠というのは木曜夜8時.「世にも奇妙な物語」 「大人は判ってくれない」などの一話完結あるいはオムニバスのドラマの枠で, オンエアでは「世にも奇妙な物語」と同様,タモリがストーリーテラーをつとめ ています.

この「if もしも」にはひとつのパターンがあって,主人公がもしあの時別の選 択をしていたら・・・というのに対して2つの結末を示すというものです. 映画でいえば「スライディング・ドア」とか「ラン・ローラ・ラン」などと同じ 趣向.いわゆる運命の選択というのをメインに持って来たシリーズなのです.

この作品,リアルタイムでオンエアを見てたのですが,この話はもの凄く印象に 残ったのです.「スタンド・バイ・ミー」などに通じる,少年・少女のころの淡 く切ない想い出というか,映像も凄く綺麗で. その後,映画館で上映された時も見に行きました. 当時は岩井俊二という人も知らず,主人公の奥菜恵もこの作品で知ったような気 がします.

岩井監督はこの作品がテレビドラマにもかかわらず「日本映画監督協会新人賞」 を受賞し,一気にメジャーになり,「Love Letters」「スワロウテイル」などの ヒット作を生み出していきます.

この「少年たちは花火を横から見たかった」は,監督自身を含めた関係者のインタ ビューと,出演者がロケ地を再訪して当時を振り返る内容.撮影時のタイトルはこ の「少年たちは花火を横から見たかった」なのだそうだ.しかし,それでは 「if もしも」シリーズの約束に反する.どちらの結末が良いというのを示すの がこのドラマのポイントでは無かったからだ.

そういうことも含め「打ち上げ花火,横からみるか?下から見るか?」は「if もし も」の中では異色作だったらしい.少なくとも製作側では.確かに,他の作品は 主人公の選択により話が分岐する.いわゆる運命の選択だ.しかし,この作品で はだれも選択はしない.そして,主人公が誰なのかも曖昧.でも,当時見ている 側としては,それほど浮いた話には感じなかった.多少,他のと比べると映像が 違うな,と思ったくらいで.

そうか,これはビデオ撮影したものにフィルタをかけたものだったのか.ずっと フィルム撮影したのだと思っていた.

6年の間に舞台となった場所は様変りしているようだ.大作の映画の舞台にでも なったのであれば,そのまま保存とかいう話もでるのだろうが・・・.さすがに それは難しいか.ただ,あの印象的なシーンであった駅のトイレがなくなってい るのは残念.

この話のプロットに「銀河鉄道の夜」が重ねられていたらしい.言われ て見れば確かに.全然気づいていなかった.この話が私に強い印象を与えたのにはこの ことも原因しているのかも・・・しれない.

触れられている通り,「銀河鉄道の夜」には複数のバージョンが存在する.何度 も加筆修正と推敲が重ねられ,現在主流のものと,最後の部分が最初に来ている もの,さらにはブルカニロ博士版なんてのまである.そして,一時期その今の版 ではないものが流布していたのだ.私が初めて読んだ時のは既に今の版になって いた.しかし,先に別の版に触れた人にとって,現在のものには違和感を覚える らしい.長野まゆみの「カンパネルラ」の後書きにもそうあったような記憶があ る.とにかく,今現在流通している版は「そのこと」が分かりにくくなっている のだ.

岩井監督は最初に自分が触れた版をベースにしている.そして,かなり核心の部 分までなぞっている.

このDVDにはオリジナルアニメ「銀河鉄道の夜」も収録されています. アニメっていうか,人形劇みたいな.いや,でも人形じゃない,紙芝居?

さらに,「打ち上げ花火,横からみるか?下から見るか?」の原点となった脚本 「檸檬哀歌」も収録されてます.基次郎と千恵子の物語.

いわゆるメイキングみたいなのも含まれていて,当時の撮影の様子や使われなかっ たシーンなどもある.しかし,この作品の中で一番重要なのはクライマックスシー ンの撮影に関する部分だ.重要なシーンの脚本がどんどん変わっていく.最終的 にはベストの撮影ができたことに対し,監督は満足でもあり反省もしているよう だが,やはり,そこでベストな状態を生み出せる,発見できるというのは天性の 何かが備わっているからであろう.

かくして,いろいろな要因があったにせよ,オンエアは好視聴率を得ることがで き,伝説が生まれたのであった.

繰り返すが,この作品は「打ち上げ花火,横からみるか?下から見るか?」を見 た人にしか意味がない.というか,分からない.そして,見れば新たな発見がで きるに違いない.それを踏まえて,作品を見直してみることにしよう.

というわけで,次回は「打ち上げ花火,横からみるか?下から見るか?」です.


監督・岩井俊二
出演・奥菜恵,山崎裕太,小橋賢児,麻木久仁子,深浦加奈子,他
ロックウェルアイズ,1999年作品,本編90分,DOLBY DIGITAL

ロックウェルアイズ,NND-0005,4800円


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