第1章 きっかけ

今年の2月14日に南の島「与論島」でフルマラソン・レースがあることを知ったのは、第1回のレースが行われた昨年の模様を伝える月刊誌「ランナーズ」の誌上でのこと。それまでは、この4年間ほど各地で行われるマラソン大会で時々5キロのレースに出ていた程度、10キロさえ走ったことはなかった。

会社では毎年行われる「広島国際平和マラソン」に大勢エントリーしてファミリー・デー的な催しにまでなっている。この5キロのレースで30分かけてふらふらになって帰って来るのが例年の私の姿だ。

もともとお祭り好きで、各地のイベントなどに出場し、ボランティアのお母さん達の出してくれる完走後の一杯のお汁粉のうまさに幸福を感じて一日を終わる、そんな程度の出場だったのが、最近では結構力を入れて走れるようになっていた。

春から秋にかけての私は山登りばかりしている。カメラ機材を担いで山野の植物を撮るためだ。冬はその体力作りの季節でもある。


ランニングシューズ

勤続20年のリフレッシュ休暇の期限が3月で切れることもあって、ちょうどこの時期に南の島「与論島」へ行ってみようと思い立ったのは昨年の秋のことだった。9月に夫婦で走った平和マラソンは5キロで30分くらい、このぺースではフルマラソンは6時間以上と思ったが、この"ヨロン.マラソン"のタイムリミットは8時間となっている。これなら私でも完走できるのでは、と思ったものだ。

与論町の実行委員会では、これを日本のホノルルマラソンにしたいと意気込んでいるそうだ。沖縄が本土に復帰する前から石垣島や宮古島へ来ていた私は本質的に南の島が大好きだ。与論島はまだ行ったことがないし、結婚20周年記念の旅行にしようと、妻には当然「応援」でというつもりで一緒に行こうと持ちかけた。

しかし、平和マラソンであまり私とタイムが変わらない妻は「2月14日はバレンタインデーだから、一緒に走ってあげましょう」と軽く答える。「ええっ」と、びっくりしたが平気な顔でその気になっている。「チョコレートで十分なんだけど…」まっ、そんな訳でリフレッシュ休暇は夫帰で初マラソン完走を目指すということになってしまった。

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