おもしろ植物園芸クイズ
第2回目:植物名に関する基礎的な知識(注:この原稿はH13.夏用のものです)
昨年から始まりました「緑・花文化の知識認定試験」について、プロローグでその概要をお知らせしました。今年は、11月18日(日)に第3回目の試験が実施されます。過去の試験を受験された方、初めての方、今年の試験にチャレンジしてみませんか。
昨年秋に実施された第2回目の試験では
受験者数 11,810人
平均点 56点(80点満点による)
最高得点(2人)80点(80点満点による)
最多得点 62点(80点満点による)
級位 |
人数 |
点数 |
特級 |
138 |
74点〜80点 |
1級 |
1,470 |
67点〜73点 |
2級 |
4,775 |
57点〜66点 |
3級 |
3,520 |
47点〜56点 |
4級 |
1,418 |
37点〜46点 |
5級 |
421 |
27点〜36点 |
参加証 |
68 |
0点〜26点 |
年齢を問わず受験できるこの試験は、あなたの植物に対する知識のレベルを測ることができ、今後の目標にもなります。「受験」という壁を乗り越えることのよろこび、チャレンジ精神を持つことは、あなたにとって決してマイナスでは無いでしょう。
せっかくなら「受験」に備えて、頭を慣れさせてみましょうね。
試験,試験と硬く考えないで、植物クイズを解いてみるつもりで知識を高めて行きたいと思います。
第1回目の今回は樹木や草花の名前や特徴など、植物名に関する基礎的な知識について模擬問題を参考に勉強して見ましょう。
今後の予定
第2回目:樹木や草花の人間生活との関わり
第3回目:都市緑化やガーデニングに関する問題
第4回目:芸術・文化に表わされた植物について
とにかく、昨年の第二回目試験の問1はこんな問題でした。
【問1】 写真の植物の和名は、果実(種子)の中身が白い粉状のものであることからつけられました。一本の株に異なった色の花が咲くものもあるので、イギリスでは「ペルーの不思議 marvel-of-Peru」と呼ばれたり、通常夕方から咲くので「午後4時 four-o’clock」と呼ばれたりします。
この植物名を下記の中から選び番号で答えてください。
<写真 q1>
1. ユウガオ
2. オシロイバナ
3. シロタエギク
4. ベニバナ
5. ニチニチソウ
正解は 2.オシロイバナ です。
この出題は緑花試験の典型的なパターンです。
写真があって、植物の特徴(果実の中身が白い粉状)を記述してあり、外国での呼び名など参考になるヒントが並べてあります。
問題を読むまでも無く、写真で答えがわかった方が大半では無いかと思われます。このように知っている草花ならば、受験対策も特に必要ではありません。では、写真を見て分からない場合はどうやって解いていくか。
五捨択一問題を解くひとつの方法に「消去法」があります。
1〜5の名前の中に知っているものがいくつかありますね。例えばベニバナはベニバナ油でおなじみのキク科の植物で、台所にある植物性のてんぷら油の缶に赤っぽいキクの絵が画いてあったっけ、と思い出す人があるでしょう。花弁に含まれる色素を染料に使用したりサフラワーオイルを抽出して食用にします。シロタエギクとベニバナはどうもキク科のようなので、この写真の花とは違うのでは・・・。と判断します。これが「消去法」による答えの導き方です。ふたつ消えれば残り三つのうちのひとつが正解。見当のつかない問題でも正当率はアップします。
資格をたくさん持っている人はこうやって正解の確立を上げているのですね。
余談ですが筆者はその日、受験会場に出かける道すがら、娘とよその庭先に咲くオシロイバナを見かけて「子供の頃に近所の女の子は、この実をつぶして『おしろい』の粉を取り出していたよ。」と話したのですが、まさか第1問に出題されるとは・・・。
植物の基礎的な知識と言えば、第一に写真や絵でその名前がわかることでしょう。それ以外と言えばどうしても専門的になってきます。科名や生育環境、地方名・別名などが語る特徴、生活でどのように利用されたか、今タイムリーに話題になっていることなど勉強することは山ほどあります。いえ、花の数ほどありますと言ったほうが正しいかも。
今回は植物名に関する基礎的知識について説明していますので、ともかく例題をいくつか解いてみましょう。
【例題1】 春先の山道で見かける赤い花、足元には花がまるごとどさっと落ちている。本州,四国,九州の主に海岸に近い地域の照葉樹林を構成する常緑高木。日本ではこの花のように潔く散る姿がサムライの精神に通じるとして、武家の庭に植えられることがあった。園芸種も非常に多い。この植物の名前は。
<写真1>
1. ヤマシャクヤク
2. サザンカ
3. タチバナ
4. ヤブツバキ
5. ユスラウメ
【例題2】 新緑の山を飾る木々も花をつけています。漢字で「椈」と書くこの木は森林の保水力を高め、自然に生きる動植物ともおおきな関わりを持っています。山林の開発でこの木が減ってきたことが自然災害を増長する原因になっているとも言われています。
<写真2>
1. シラカシ
2. タイサンボク
3. シラビソ
4. ハイマツ
5. ブナ
例題1の写真を見てツバキだとすぐに分かる人は多いと思います。間違えやすいサザンカは散るときに花びらが一枚ずつ落ちます。
さて、伊豆大島の名産「椿油」はツバキの実からとれます。花がどさっと落ちるツバキですが、それではどうして実が出来るのでしょう? こうした小さな疑問が植物観察をしながら沸いてきたら、あなたの探求心も相当なものです。
それは花が落ちても中心のめしべの部分は残っているからなのです。受粉したら黄色いおしべはもう用が無くなり花びらと一緒に落ちたのですね。今度山でツバキを見かけたら良く観察して見てください。だから花を長持ちさせるひとつの方法は受粉させないことだと言うこともわかるのです。
この試験では試験終了後に解答の解説書が配布されますので、試験が終わってからでも植物の勉強を続ける意欲を失わないことですね。
正解:4.ヤブツバキ
例題2では、漢字を知っていれば正解は分かるのですが、植物名を表す漢字はほとんどふだん私達にお馴染みで無いものばかり、そこで写真や出題内容からヒントを探らねばなりません。
森林を構成する樹木で保水力という言葉が出てきたらそれはブナをおいて他には無いでしょう。ブナ林に蓄えられた森林の水は川の流れを一定にする働きがあります。写真は毛に覆われたブナの雄花です。山歩きなどで実物を見ることが重要です。「登山」ではなく「山歩き」程度でいいのです。山に親しみ、視点を植物のわずかな変化にも興味をもつようになれば、自然に関わる出題に対しては強くなることでしょう。
なお、五つの答えの中で、ブナ以外は常緑樹であることに気づいたらおのずから答えは出てきますね。
正解:5.ブナ
植物名とその写真を頭に入れるには、ずばり、図鑑を読むことをお奨めします。図鑑というとちょっと苦手と考える人も多いでしょう。しかし家庭に詳しい図鑑を1冊、山歩きでは小さなポケット図鑑を1冊持ち歩くクセをつけると植物名は覚えられます。
最近の図鑑は写真が豊富に載せてあり、樹木でも葉や花の詳細を見られるようにしています。そして見つけた植物は図鑑に直接「日付」「場所」などを書きこむ習慣を身につけてください。これは「消しこみ法」という「名前」の覚え方です。ポケット図鑑などでは日本で普通に見られる代表的な植物が掲載されていますから、ひとつひとつ実際に見た植物をチェックして消しこんで行きます。
今月は受験テクニックで「消去法」、覚え方のテクニックで図鑑の「消しこみ法」を説明しました。
もう少し例題を解いてみましょう。
【例題3】 第二次世界大戦の戦中戦後の食料不足を補うため、いろいろな救荒食物が見直された。塊茎に多糖類のイヌリンを含み、煮ると特有の甘味が出ることから間食としても喜ばれ、葉も食材に使われた写真の植物は。
<写真3>
1. ヒガンバナ
2. ハシリドコロ
3. ハチク
4. キクイモ
5. クルマユリ
【例題4】 深山の木陰で見つけた赤いウインナーソーセージみたいな実。これはある葉緑素を持たないランの仲間だと言う。別名として「狐の錫杖」「山の神の錫杖」など的を得た名前が付いている。どんな植物の実でしょうか。
<写真4>
1. ツチアケビ
2. カタクリ
3. オオバギボウシ
4. ニッコウキスゲ
5. ヤマトウバナ
【例題5】 千昌夫の「北国の春」に歌われているモクレン科の樹木で、花は春の代名詞となっている。この仲間は花だけを見ると、どれも良く似ているが、花の下に一枚葉がつくことで見分けられる。
<写真5>
1. タムシバ
2. コブシ
3. ハクモクレン
4. オガタマノキ
5. ホオノキ
例題3ではヒガンバナもハシリドコロも図鑑を見るとアルカロイド系の毒草と書いてあるはずです。それでもヒガンバナでは食用にもなりますし、どちらも薬用にも利用されます。毒も薬も紙一重なんですね。
例題4のような常識問題は覚えるしかないでしょう。
例題5のように歌を問題に使った出題もいくつかありました。モクレンの仲間は春先にどれも大きな花をつけるため日本人なら大好きな木のひとつでしょう。
例題3−4.キクイモ
例題4−1.ツチアケビ
例題5−2.コブシ
植物の観察会で参加者から良く「この花の学名はタンポポでいいのですか?」というような質問を受けます。タンポポは正確に言えばキク科タンポポ亜科の中のタンポポ属のことです。約20種あるタンポポの仲間にはカントウタンポポやセイヨウタンポポなどがありそれらは和名と言います。
学名はラテン語でイタリック文字で表記します。和名はカタカナで図鑑などに書いてあります。その他、植物には漢字名、地方名などいろんな名前があるのですが、それらは植物の特徴をとらえた重要なヒントにもなっていますから、私達は図鑑でそこに描かれた写真や名前が一致するように覚えて行かなければなりません。
植物名の由来についても知っていると緑花試験では有利になるでしょう。
例題をいくつかあげておきます。
【例題6】 植物名には和名が二つ三つあるものも多い。それらは正式和名と別名に分けられているが、別名も本来間違った名前というわけでは無いので、植物の特徴を表した別名は重要である。次の別名の組み合わせのうち間違っているものは。
1. アゼムシロとミゾカクシ
2. レンゲとタツナミソウ
3. イヌタデとアカマンマ
4. ヤブガラシとビンボウカズラ
5. センボンヤリとムラサキタンポポ
【例題7】 次の植物のうち、さわるとひどくかぶれると言われるものは。
1. ドクウツギ
2. センダン
3. ツタウルシ
4. ウワバミソウ
5.ヤブガラシ
【例題8】 春の七草を表す セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロのうち「ゴギョウ(またはオギョウ)」とは何のこと?
1. ハハコグサ
2. レンゲ
3. カブ
4. スミレ
5. ダイコン
【例題9】 イワシの頭も信心かな。これはイワシのようにつまらぬものでも信仰すれば有り難く思えることを言ったものですが、節分にこのイワシの頭をある植物の枝に刺して戸口に立てて鬼を追い払った風習が今でもあります。
この植物とは?
1. ユズリハ
2. モモ
3. ヒイラギ
4. センリョウ
5. ナンテン
【例題10】 秋の七草と言えば、ハギ、ススキ、ナデシコ、キキョウ、フジバカマ、オミナエシそしてあとひとつは?
1.クズ
2.カタクリ
3.リンドウ
4.アケビ
5.ヒガンバナ
解答 例題 6−2.レンゲとタツナミソウ.
例題 7−3.ツタウルシ
例題 8−1.ハハコグサ
例題 9−3.ヒイラギ
例題10−1.クズ