QJYつうしん 第12号
箕面の紅葉
平成7年11月18日
箕面国定公園/箕面市(大阪府)

APEC (アジア太平洋経済協力会議・大阪)で騒がしい大阪にたまたま長期出張で来ている。こんな時こそゆっくり都会の山歩きを、と地図をながめ、阪急沿線の箕面(みのお)に行くことにした。箕面は関西の紅葉の代表地だ。その他有名な所は京都に集中している、清水寺の東山、洛北は大原三千院、洛西つまり西山の粟生光明寺、嵐山は観光地としてミーチャンとハーチャンがぞろぞろ。それ以外は六甲/有馬あたりか。その中で箕面は交通の便の良さで群を抜いている。阪急宝塚線の急行が止まる「石橋」から箕面線に乗り換え15分で終点だ。


宮島の紅葉や山での紅葉を見てきた者にとって、関西の紅葉の名所はいったいどんなだろう、と興味も沸く。良くニュースの映像で関東では日光、関西では嵐山、と観光客でごった返す風景を見てきた。箕面はそこまで有名では無いはずだが…
電車に乗って驚いた。みんなリュックを背負ったりグループやカップル、大勢がもみじ狩りだ。カメラをかついだ人も多い。そんな大団体が駅を下りてからぞろぞろと歩く。はじめてでもこれについて行けば間違えることはない。駅から目的地の箕面滝まで2.8キロ、流れに沿った歩き易い道だ。


道に沿って並ぶみやげ物店ではどこもてんぷらを揚げている。もみじのてんぷら、ゴマ入りと書いてある。これを食べながら歩く人もいる。そして有名と言えば箕面の猿、だから猿のせんべいがある。ついでにどこかで見たようなもみじ饅頭も。


山道は緩やかな登りで切れ目無く人、人、人。イヌを連れた人も。ジョギングの人も。
モミジとカエデが約600本ずつ、と案内にある、さあこれは正確には何のことだろう、ヒノキ、スギも多い。モミジはイロハモミジのようだがカエデに関しては良く分からない。
広島ではウリハダカエデを山で良くみるが、ここには無いぞ。どれも高木で、上ばかり見ていると首が痛くなるので、みやげ物店でビールを買った(関係ないぞ!)。


滝安寺(りゅうあんじ)のオガタマノキ
全行程3分の2まで来るとちょうどひと休みしたくなる頃だ。瑞雲橋という橋が架かっていて滝安寺側と庫裏のある川向こうをつないでいる。寺は弁財天を奉り、とは言え参道の真ん中に鳥居がある、百度石の裏に庄司歌江3姉妹の名前がある、大黒天を奉った祠もある。
この境内にいかにもそれらしい樹木があった。オガタマノキ(モクレン科)だ。


漢字で書くと招霊の木、宮島にあるのを知っておられるだろうか。あれは木を見るには大きすぎる。全体の形すら良く分からない。
そもそも私達はどうやって木を覚えるのか。
「この木はナニ?」と観察会で質問が多いのは、誰もがその木の名前を覚えてみたいし、どこを目安にすれば楽に覚えられるのか知りたいからだ。
自然観察をはじめた人にとって、樹木はどうしても草花に比べて分かりにくい。その訳は「咲いていない」から、と「大きいから」。もちろん草花も花が咲いていないと分からないのだが、花の咲いていない季節は関心も薄れて注目しないからで、樹木の場合はそのまさに「見上げるような存在感」に、注目だけはしてしまう。


しかし注目したところで判別するための花がいつも咲いている訳では無いし、咲いていても高い所にあったりする。低い所に咲くのはもともと大きくならない木である。
私たち山歩きの愛好者が知りたがっているのは何だろう。植物の「分類」では無いはずだ。これで学間を極めようとしているのではない。知りたがっているのは「この木は何か」一言で言えば「識別」である。


識別はある意味では無意味で、ある意味では重要だ。一般論を言うなら、識別できれば山歩きがもっと楽しくなる筈だ。草花を識別するには季節をはずすと影も形も無くなるからやはり花を見ることが多い、が樹木はむしろ花の時期をはずして、一番特徴的で無い頃に識別しなければならないことが多い。そこで、出来ることは「葉」を拾うこと。葉に特徴がいろいろ隠されている、特に裏。つまり花が咲いていたり実がなっている時に葉を観察する心掛けを持って欲しい。
先日の南原の観察会でガマズミの赤い実を持って帰っていた人、出来れば葉の一枚を添えて欲しかった。県内のガマズミにはコバノガマズミ、ミヤマガマズミと計3種あるんですよ。


さてここ滝安寺の境内にあったのは、ゲッケイジュ(クスノキ科)、ボダイジュ(シナノキ科)、サザンカ(ツバキ科)どれも社寺御用達の代表樹。これらの木が選ばれる理由、歴史、故事などは知っていて損は無い。またの機会に。


箕面の猿
瑞雲橋の方で人が騒いでいる。どうやら木の上にいる猿を見つけたらしい。10頭前後の小グループだ。中には逃げる様子もなく人に近づく勇気のある猿もいる。橋の欄干に座って客の手からスナック菓子を奪うように取る。菓子を与えていた人がやおら手を猿の頭にかざそうとした。おいおいそれは無いでしょ、案の定、猿はびっくりして身構え、その場をサル。犬や猫では無いのだから当たり前だ、そこまで人間を信用してはいない。看板にはオヤツを与えないで、と書いてある。この意味をもう少し理解しないといけない。かわいいからといってオヤツを与えていては普段山の中で木ノ実を採って食べている猿は、人間の与えてくれる物を生活の拠り所としてしまう、お互いに良い筈がない。


もっとも、このサル軍団は完全野生ではなく、人間社会に近づこうという特別意識の強い集団である。もっとひらたく言えば、「箕面公園観光課嘱託職員猿」。


箕面滝
ここを訪れる人は最終地点のこの滝に来る。高さは大したことは無いが、適当な距離に適当な広さで滝を眺める場所があることで人気を保つのだろう。時刻も丁度12時、雲一つ無い青空をバックに赤く染まったモミジを見ながらの昼食だが、なんと大勢の人、外人さんも多い。周辺の山道まで座り込む人で埋まる。「銀寄せの一筋栗」という訳の分からをい大きな栗を焼いて売っている店が多い。ともかくビールに合う。
ゲップ


東海自然道
滝を過ぎてさらに2〜3キロ登るとやはり紅葉の名所「勝尾寺」がある。駅で入手した案内ではニシキギ、ナナカマドなど約1000本とあり、興味をそそるが、それよりここが東海自然歩道の西の起点であることに注目したい。
今回は早く飲み過ぎ、いや遅く出かけたため時間の関係で省略
ウィー


QJYつうしん第3号で、幻のヒオウギを求めてなどと、読者の関心を集めておいて、最後まで登場させない、この様な手法をスポーツ新聞タイトル、と言って、サギとも言える客寄せである。一応反省はしているが、その効果の程も少しはあったかなと我ながら悦に入っている。
いまだに、「あれはどうなったの?」と言われると、気の小さい私は良心が・…。サイナラ