QJYつうしん 16号 H8 1/13
休日は山にいます

日本のブルーベリー シャシャンボ 安佐南区 武田山 411m

皆様あけましておめでとう、昨年の山歩きは樹木にたくさんの花が咲き、果実が実り、覚えた木の名前も随分増えた事でしょう。見事な実りの秋を体験し、ますます山が好きになったという方のお話も間きました。皆様もQJYの記事を参考に、又有効に活用し山歩きを楽しんで下さい。

今年も蟹さんとじやんけんして負けてしまうような頭(パーとも言う)をフル回転させて頑張ります。

平成8年トップを飾るのは、わが家から太田川を挟んで向かいに鎮座するハイキングの名所「武田山」。
昨年本誌第10号で紹介し、また自然観察会を1月7日に行った牛田山からは正面に見える山である。

(人は石垣、人は城、情けは味方、仇は敵)、そう、武田節の武田である。

先日亡くなった三橋美智也の美声を思い出す。

頂上の銀山城は毛利元就に攻め落とされる(天文10年)まで300年間、城としての役目を果たした。
安芸の守として最初に赴任したのが承久の乱(承久3年、1221)で手柄をたてた甲斐の武田信光である。
ちなみに武田信玄が川中島の戦いで歴史に登場するのは天文24年、1555年のこと。

快晴の青空に誘われて出かけた武田山はJR可部線の下祇園駅横の踏切を渡り油谷重工の前を通って西の山手へ向かう、ほぼ一本道で「憩の森」に着く。最終部に駐車スペースもありトイレも完備している。

MAP

登山口はセリの畑、クレソンやタネツケバナの花が咲き春の様相。
意外に山道は狭く険しい山なので、登山用の杖などあると下り坂で膝を衝撃から守る事が出来る。

山道は木の実の多かった昨秋の名残が今も見られる。
ナナミノキの赤い実、ヒサカキの黒紫の実。どれもすぱらしく、いつもの冬なら主役のヤブコウジやフユイチゴが見てもらえない。

山の中にカキが実り、メジロ、ヤマガラ、シジュウカラが楽しそうについばんでいる。

団体で山登りをすると鳥も逃げてしまうが、ひとりふたりだと双眼鏡で見ている間に次々と飛んでくる。

シナアブラギリ又はオオアブラギリか(トウダイグサ科)のゴルフボール大の実が枯れ枝にぶらさかっていて、油紙を作る桐油を採ったという戦前までの習慣が偲ばれる。

ゆっくり登って行かないとこの山はすぐ頂上だから、と思っていたが、道はかなり厳しい。

枯れ葉のまま枝を飾るヤマコウバシやコナラの間に、この山が海岸に近いことを示すナワシログミやイヌビワが出てきた。

ネズミモチもそう言えぱ暖地性で島では良くみる。

銀山城の御門跡に立つと市内がきれいに眺められる。もちろん頂上は瀬戸内海まで。

ヒサカキが多いな、と思っていたら、シャシャンボがたくさん実っていた。ひとつ摘んで口に入れる、おいしい。
枝にたくさん付いている。ナツハゼより甘さで勝つ。正月過ぎて木の実が採れるのは一種の「シアワセ」。

シャシャンボは漢字で書くと小々坊。どちらにしても訳の分からぬ名前だが、日本産のブルーベリーと言っても言い過ぎではない。

味は良い、大きさで少々小さいから小々坊?

少し持ち帰って酒に漬けよう。ただし、今回は注意しなければならない事があった。

シャシャンボと交互してヒサカキの大豊作なのだ。
枝が交錯しているところでは帽子に受けていると混ぜ合わさってしまう。

ヒサカキはテンなどは好物にしているが私にはにがい。

そこで、単独に実っている木だけを選んで実を摘む、というやっかいな作業になった。

酒は半年後のオタノシミ。

昼食時間は頂上だ。

東の牛田山(261m)が随分低く見える。双眼鏡でわが家が確認できる。

火山(488m)も隣にあり、中国新聞「ふるさとの山歩き」では併せて紹介してある。

ここの部分は広島県山岳連盟副理事長の加賀谷健一氏が書いている。

氏は現在、市立美鈴が丘高校の校長先生で5年前は娘の担任であった。
広大山岳部時代の山歩きならぬ山走りの活躍ぶりは今でも語り草。

頂上には県史跡としての銀山城の由来が看板に書かれている。頂上の巨石群は古城の歴史を語る。
中でも「御守岩』は御神体とも言うべき様相の巨岩だ。

{松風さわぐ丘の上・・・}やはり、ミッチーの歌が。

今日は特別天気が良いので、遠く呉娑々宇山までがはっきり見えて気持ちがよい。

3グループが先着だ、車座になって1グループが酒宴を開いている。

その脇をすり抜けて今一度周囲の植生に目を向けよう。

登山道にも見られたが、岩に絡み付くようにシダの仲間のヒトツバ(ウラボシ科)が名前どおりの葉を1枚ずつ立てて存在感を示す。近くには葉柄のあるカシワ、ナラガシワが1本だけあった。桜の木が大きい、春は知る人ぞ知るお花見名所だ。
ヒメヤシャブシ、ハゼノキなどが春を待つ。

この時期に紫色の美しい羽を見せてとまっている蝶がいた。冬の日溜りにひなたぼっこの為にいつもは閉じてしまう羽を開いて体を暖めている。閉じると蛾のような地味な茶灰色、しかし開くと鮮やかな青紫。

ムラサキツバメだ。この辺りでは常縁であるシリブカガシを幼虫が食餌することで有名。

暖地の瀬戸内海沿岸とは言え、この個体はおそらくふ化した時期が遅すぎたのではないかと恩われる。

問題は成虫の訪れる花が殆ど無いこと、そして鳥が多いため狙われる。

なにより寒い日はどうしているのだろう。