QJYつうしん 17号 平成8年1月21日
休日は山にいます

青梨はリンゴの香り 安佐北区/牛頭山(広島市)689m

天気の良い冬の休日は山に限る。
積雪でもあれば最高の思い出になるからだ。

特に青空の雪景色は山陰地方では貴重な1日だった。
山陰の人には悪いけれど、この時期の出雲地方は毎日どんより曇り、山の陰の様相を深くする。
山陰と名付けた人は正解であったのか。
54号線の赤名峠を越え広島側に入ると、空が青いことに今更ながら感心するのである。

そんな責空の今日は全国から駅伝ランナーが広島に集まり、都道府県対抗男子駅伝が広島で開かれた。
天気が悪ければTVを見ながらゴロゴロしていたかも知れない、が、気温も上がり、絶好のハイキング日和となり、じっとしていられなくなった。

そして出かけたのは「青少年野外活動センター」のある牛頭山。

ここに登るのは2年ぶりだ。その時は秋だった、ツルニンジンの意外と大きい可愛い花が多かったのを覚えている。

飯室トンネルを抜けて500メートル行くと「野外活動センター」「こども村」の標識に従い左折する。
目的地までのほぼ半ばに、いつも立ち寄る野菜市がある。スーパーの半額で野菜が買える、と家内が喜ぶ。

周囲はたんぼで、もうオオイヌノフグリの青い花が咲いていた。

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センター手前で「農園入り口」の標識に従い左折する。
この終点が登山口で駐車可。
トイレもあり、牧場、その他施設が有る。小牧場のひつじが「メエ”〜エ”」とワープロに無い声で歓迎してくれた。

いつ降ったのだろうか、あちこちに雪が積もり、日陰の側溝は冷えて凍っていた。

これは山頂が楽しみだぞ。

スギ林に混じって、コルクの樹皮のアベマキの大木が多い。
春が楽しみなタラノキ、冬芽のコシアブラ、足元にはフユイチゴの赤い実、シロダモ、ヤブコウジと赤い木の実が付いている。

10分も歩くとちょっときつめの直登が始まる。
ただしここはロープが張ってあって、随分、楽が出来るようになっている。

鳥の声を聞きながらの登山は晴天の無風状態ということもあって楽しいものだ。

黄色い皮の中から赤い木の実、ツルウメモドキが落ちている。
ヤシャブシの高い木に巻き付いているのか。

木の実や落ち葉を見ながら登るのはそれほど苦しいものでは無い。
三角点のある東峰が左に、頂上が右というポイント(1)にさしかかった。

ここから頂上に向かう間は昔の山城の城郭跡である。
東第一堀切跡@、東第三郭跡A、東第二郭跡Bを経て頂上は二の丸跡だ。
ジャノヒゲの青い宝石みたいな実を見ていると、赤いソヨゴの実も落ちている。

城郭跡と言うことで薬研跡、出丸跡など山城の史跡が点在している。

いつもながら感心するが、ちやんと12時過ぎには頂上にたどりつく。
わき見をしながらのいつものペースで1時間だ。

頂上は展望が良い事で人気のある山だ。
西の方向に左から宮島、広島の山からはポイントとなる吉和冠山、十方山、深入山、臥龍山と続く。
芸北は皆雪山となっっている。

結局、雪はふもとだけで、登るに従い無くなってしまった。

明るい陽射しの中、赤い実のソヨゴの木にかこまれて昼食をいただく。

先着のグループの一人が木の実の多さについて、「実の多い年の冬は雪が多い」と言う格言を教えてくれた。
「百舌(モズ)がニエを高くつけると、雪が多い」とも。

それを碓認済みなのだそうだ。

結論は「2月は雪が多いぞ」。

ポイント(1)

また、ボイント(1)でキツツキのつついたらしい木屑が落ちていた、と言う。
我々はそこでは三角点に行こうかどうか悩んでいて、まったく気づかなかった。下山時は注意してみる。

なるほど、枯れ木にたくさん穴をあけていた。姿は見えないが、木屑の新しさからみると最近の「仕事」らしい。
ビンポン玉大の穴でこれは巣のようだ。と、下草のまわりも観察していたら、家内がおおきなイヌビワが落ちている、と言う。
有っても不思議は無いが、イヌビワはその繁殖形態からして孤独に生えるはずはない。

10円玉大の青みのある茶褐色の実をナイフで開くと、リンゴの甘い香り、青梨(ヤマナシ)だ。
見上げると枝にたくざん実っている。

目が慣れると他にも木があり、地面に落ちたたくさんの実。

酸味があってとびきり旨い訳ではないが、食用になることは有名。
さっそく拾ってホワイトリカー漬けとすることにする。経験は無いのだが、たぶん巣実酒になるだろう。

ロープを伝っての下山は子供の頃の冒険心を思い起こさせる。
軍手は必須だ。

車を置いたひつじの牧場に戻ると、ラジオのスイッチを入れた。12時半にスタートした駅伝のクライマックスが近い。
広島県が3位と健闘している。そのうちトップに並ぼうという勢いだそうだ。

バーナーで湯を沸かし、インスタントの「しょうが湯」が体を暖めてくれる。

野外活動センターは運動広場や散策用の山林、湿地植物の池もあり1年を通じて楽しめる。主に小中学校の生徒が団体で訪れる。
イチヤクソウも見られるよ(これ、読者のみの内緒)

センターの駐車場に着いた頃、ラジオで残り1キロぐらいと言っていた。待てよ、ここのロビーにはTVがあったはずだ。
中に入るとあったあった。さっそくつける。と国近選手がスパートをかけた。
あとはご存知のとおり、トップでゴールイン。

よかったね。