QJYつうしんQJY18 休日は山にいます 960205

植物の不思議 イヌビワを究JYする

何故これがビワ? イヌイチジクと名付けて欲しかったなあ。

 ビワはバラ科、イチジクはクワ科。

 実は食用になる、と図鑑にあるが、この話を聞くと食べたく無くなるぞ。

 イヌビワは雌雄異株、つまりオスの木とメスの木がある。漢字で無花果と書くくらいイチジクは花が表に出ない。雌雄異株なら自家受粉出来ない、ではどうやって受粉できるのか。

 虫媒花であるイヌビワは受粉を託している昆虫がいる。「契約社員」の名はイヌビワコバチ。コバチは体長2ミリの寄生バチの仲間で、イヌビワから与えられた生活スペースと引き替えに受粉活動の労働契約を結ぶ。ここで注目すべきはオスは羽根が無く一生をイヌビワの中で過ごす事。また、羽を持つメスは産卵のためにやはり別のイヌビワの中に入っていく。こうして受粉が行われる訳だが、イヌビワはこれにより寄生バチの巣となっていることで、食用上の危険性を承知の上としなければならないのだ。(食用が危険かどうかは未調査)  では、イチジクもそうなの? 

 その答はあとで・・・

 植物は不思議

 植物は繁殖しその生命を後生に残すため、様々な手段を講じていることが分かっている。

 例えば、種蒔き。

 カエデは「楓」と書くくらい、風を利用しようとした。翼果と言ってプロペラのついた実を高い木の枝から落とす。風に乗ればくるくると回りながら遠くのもっと生きるのに都合の良い場所を見つけられるかも知れない。

ヤシは南の島から島崎藤村が詠った様に海水の流れを利用する。

 ゲンノショウコやツリフネソウ、マンサクの実は自力ではじけるし、身近にはひっつきむしのオナモミやセンダングサ、ヌスビトハギもある。

 何より端的には鳥や動物に食べて貰って、遠くの場所に蒔いて貰う手段を選ぶ。もちろんこの時、噛み砕かれては意味が無い。従って木ノ実は種が固いのが普通。

 ちょっと、考えてもいろんな方法で植物が種蒔きをしているのが想像できる。

 だから、植物は不思議。

 種蒔きを考えなくても、受粉に昆虫が利用されているのを誰でも知っている事だろう。昆虫は利用されているだけではない、ギブアンドテイク、つまり昆虫も花の蜜を吸って、恩恵にあずかっている。しかし観点を植物側から、とすれば「虫媒花」と呼ばれる普通の花を訪れた昆虫は植物の撒き餌作戦にまんまと引っかかったのである。

 受粉に関する花と虫の関係がもっと密となるケースもある。

 特定の植物に特定の昆虫が関わる場合は両者にとって相手の存在が配偶者以上の重要性を帯びてくる。相手の滅亡は自分の種の滅亡と等しくなるのだ。

 イヌビワ と イヌビワコバチ

イヌビワ

 瀬戸内海に近い辺りで冬の市内の山歩きをしていると葉の落ちた枝にビー玉大のイチジクの実を付けた木を見かける。イヌビワの果嚢(かのう)である。

 さて、このイヌビワが確実に受粉するにはこの木に寄生するイヌビワコバチの働き無くしては有り得ない。コバチはその名のとおり小さな蜂で、アリより小さい。寄生バチを小学館の百科事典で調べると、「膜翅目、細腰亜目に属し、有錘類のすべてと有剣類の一部に属する寄生性のハチ類を総称し寄生バチと呼ぶ。」と書いてあって、うーん、調べるんじゃ無かった、と無駄な調査に自分で怒る。さらにイヌビワコバチはイチジクコバチ科で・・・・、よけい分からなくなる。

コバチはイヌビワの雄株(花粉株と呼んだ方がわかりやすい)の雄花に産卵する。つまり孵化したコバチは体に花粉を付けている。コバチの雌は雄と違って羽根を持っているため成虫となって他のイヌビワに移る。つまりこの移動に依ってイヌビワの受粉活動を請け負っている訳だ。雄のコバチは羽根を持たないため一生をイヌビワの花嚢の中で過ごす。ここでイヌビワの実と言わない事に気づいて欲しい。種を作らない雄花だから外見が実でも本当の実では無い。ちなみにイチジクは図鑑で調べるとどこにも実は食用になるなどとは書いていない。果嚢が食用になる、と書いて有るはずだ。

 ちょっと話が難しいので、以下簡略した話。

雌株の雌花の果嚢の中は花柱が長くコバチには産卵不可。だから侵入と同時に羽根をボロボロにしてしまった雌コバチはもう出ても行けないはずだ。しかし、ここでイヌビワは自分の目的である受粉をコバチにしてもらった。花柱が長くてコバチは果嚢の中をうろうろと産卵場所を求めて歩き回るからだ。雌花は実を付け、食用になる。ただしコバチの死骸は残っている。

時期によりコバチが入らず結実しないまま果嚢は食用にされる。

雄株は話をややこしくする一因でもあるが、若い頃、雌花が多い。コバチが出る頃、雄花が多く咲く。咲く、といっても花嚢の中で、普通の虫には気づかれない。花柱は短いためコバチの産卵は問題なく行われる。あとは花粉を付けた雌コバチが成虫となって出て行ってくれるのを待つだけだ。

イチジクも虫入りなの?

最近カリフォルニア産のイチジク(FIG)が輸入されているのをご存知だろうか。これは米国でも欧州から移植したもの、そのとき専用のコバチもともに輸入した。地玉子で言うところの有精卵と同じでイチジクも受粉の済んだ果嚢の方がおいしいのだそうだ。 でも心配なかれ、日本のイチジクはそうではない。専用のコバチがいないのだ。雌雄異株で雌株しかないのだからどうしようもないが、受粉させてもっとおいしいイチジクを食べてみたい気もする。

ただし、虫入りは日本で受け入れられるだろうか。


 QJYつうしん デザインを一新

 発刊当初に比べて、幾分読みやすくなったでしょう? 限られたスペースにいっぱい詰め込みたくて、ご迷惑をおかけしました。 今後もがんばります。