QJYつうしん20号休日は山にいます 960302
QJY20
ガイドブックに無い秘境 熊野町/石岳山(安芸郡)559m
呉地ダム
喧騒の広島市内を抜け出し、「山歩き」をしたくなったら、周辺では様々な山歩きを体験することができる。
植物の多さも誇りにできる。広島県は暖地性の植生と高山の植生が混ざり合う、楽しい地域だ。
春は名のみの3月の冷たい風が吹く。
山はまだまだ春のかけらもないだろう。 QJYでは1年を通じて特定の場所になるべく出かけることを心掛けている。その場所を「フィールド」と呼ぶ。フィールドは春夏秋冬の装いを理解して初めて自分のフィールドと呼べる。
熊野町にある呉地ダムもそのひとつだ。 広島市近郊と言っても距離にして約30キロ、近いと言う人あり、遠いと思う人あり。夏はキャンプで賑わう。キャンプ場にたくさんの人が来ても荒らされることのない貴重な場所がある。熊野町の指定天然記念物となっている自然あふれる湿原があるくらいだから、失望させられることはない。
もちろん芸北町辺りはもっと広範囲に貴重な植物がたくさんあるが。
枯れたアカマツが少々気になるが、水は青く清々しい。
石岳山登山道
ダム、と言うより大きな池のほぼ反対側にその登山口はある。湿原に枯れた実を付けたミズギボウシがのように立っていた。赤い実はノイバラ。辺りはまだまだ冬の装い。
登山口には簡単な地図がメモのように記載してある。この様な案内ではこれから先、ろくな道が有りそうも無いのが分かる。
約15分はアセビやヤマツツジの山道。大きな鉄塔のある場所に出ると、ほっとする。視界が開けるからだ。
振返ると呉地ダムの青い湖水。正面の眼下に見えるは郷原カントリークラブ、遠くは黒瀬町。野呂山が右端に隠れている、そして左端に隠れているのが目指す石岳山だ。
行く手を阻むジャンダルム
さてここから、表題の秘境に入っていく。
しばらくはテープを頼りにヤブコギ道を進む。この時期だから何とか足元が見えるのかもしれない。夏の草が覆い茂ると道が分からなくなるだろう。アセビ、ソヨゴ、ヤブツバキの林の中を鳥の声を聞きながら進む。
連続していたテープが無くなり後は時折見かける赤いテープが木に巻きつけてあるのを見つけては安心する行程となる。
鉄塔から30分、右折場所に辿り着く。ここは良く頭に入れておかないと、帰路の間違えやすいポイントとなる。
そして前途はいやになりそうな高い山とあきれるくらい深い谷。耳を澄ませば下から水の音が聞こえてくる。普通なら1度沢に下りてもう一度頑張れば頂上になるはずだが、先ほどの右折場所にあと1hと書いたカマボコ板が貼ってあった。
そう、向こうに見える山は頂上ではなく、山にはつき物の「護衛兵」。こういう山塊をジャンダルムと呼ぶ。意味は主峰を護衛する岩峰のこと、奥穂高のジャンダルムはつとに有名だ。岩峰ではないがこの山塊が主峰まで行かせないぞ、という気配、なんとなく今日はこの護衛兵に負けそうな気はしていたが…
石岳山
秘境ルートのヒイラギ
水の音に誘われて、道らしくないヤブコギ道を滑るように下りてゆく。ヒサカキ、ネズはこの辺りでは当たり前な樹木なのだろう。
恐らく引き返す時は相当苦労しそうな道を滑るように下りる。最も下まで来ると信じられないくらいのきれいな沢。
澄んだ流れが気持ちよい。このまま沢を下れば郷原地区へ出る、冒険旅行ができるだろう。
さあ、登るぞ。
その辺の木を掴むのにちょっと注意が必要だ。葉に鋭い刺のあるヒイラギ(モクセイ科)の幼木がたくさんあるのだ。ヒイラギを漢字で書くと「柊」。
冬でも生き生きとした緑の常緑樹だ。
他にはヤブツバキ、シキミ。
下りるときはいったいどうなるのか、という坂道をふうふう言いながら登る。そして登り切ると、やはり向こうに山頂が。
石岳山は石だけの山ではなかった。登ろうという意志を砕くとんでもない秘境の山だった。ジャンダルムの頂点で山頂を眺めながらここで引き下がる勇気も尊い、と自分だけで納得し、またの来訪を約束しお弁当の時間にする。
こうやって人の気配を感じない山歩きもたまには良いものだ。気分が引き締まる。
だから今日は十分楽しんだ。
筆の里熊野町 くまのこども資料館
ここ熊野町の名物は何といっても筆。一昨年の9月にオープンした筆の里工房は熊野町の文化の集大成だ。
今回はそこではなく、隠れた名所、くまのこども資料館を尋ねてみた。
橋本操さんが私財を投じて開館した私設の博物館だ。場所は呉地ダム近くで案内板を探してほしいが、近づくとそれはすぐ分かる。
大きなこけし人形が門前に立っているから。
民家をそのまま資料館としてある。明治、大正、昭和の教科書からアトムの漫画、おもちゃ、飾り物、土産物なども。
おりしも二人の子供がやってきて館内にある楽器を触りたいと受け付けの人に申し出ていた。答えは「いいよ」。館内の展示物は来館の子供たちに自由に触らせてくれるようだ。
富山の置き薬が私にはとても懐かしかった。
ここにいると子供時代の駄菓子屋の前で遊んでいた自分の姿を思い出す。
ぱっちん、ぺっちん、ろくむし。わからない人はわからなくていいよ。
雑誌のふろくやプラモデル、そういう事なら捨てるんじゃなかった、という物がいろいろあったような気がする。
くまのこども資料館 入館料¥150
やっと20号、もう20号
ちょっとずつ読みやすくなったでしょ。
ワープロソフトはマイクロソフトのWordVer7。イラストだけは手書きでがんばります。
皆様のご意見ご感想をお待ちしています。 ♪もちろんプレゼントなどありません。
平木輝夫氏のノートより
ケヤキの芽がいっせいに出ると霜が来ない
ケヤキの芽がふぞろいだと晩霜がある