QJYつうしん 22

     休日は山にいます 平成8年3月31日

渓流の舞姫 アブラチャン       豊平町/龍頭山(山県郡) 928m

 

時計のリューズ、といえばその形が想像出来る? 豊平町のシンボル竜頭山は人気の有る山でいつも登山の人達で溢れている。

春の1日、広島市内から車で1時間のここ豊平町に出掛けてみた。ポイントになる場所は「ふれあい公園とよひら」むさしドングリ村がある所、と言った方がわかり易いかもしれない。

昨年は未完成だった施設が次々に完成した。どんぐりスタジアム、体育館はもう完成間近。温泉に入れるどんぐり荘は研修施設でもある。

ここから北を見ると、否が応でも目に入る山、竜頭山がそびえている。釣り鐘を伏せたような形の良い山。

 瀧ケ馬場

 車は相当上まで上がれる、ここまで便利にしなくても良いのに、と思うくらい。舗装は無くなるが高度計で650mくらいの場所まで車を置ける。瀧ケ馬場と言い、竜頭山の起点といえば、今はこの広場である。

 10台くらいの車が既に置いてあった。登頂を開始すると春の暖かさがじんわりと汗になって体感してしまう。足元は歩きやすい枯れ葉の山道。落ち葉をひとつひとつ調べているだけで楽しくなってしまう。

 コアジサイの枯れ木がたくさん目に付く。

前竜頭(810m)

 大勢の子供たちが下りて来た。春休みのハイキング、といったところか。あたりにはヤマコウバシの花芽、クロモジやナワシログミが目に付く。すれ違いに「こんにちは」と、明るい声。こちらまで元気がでるから「挨拶」は不思議、そして大切。

 黒滝という水の流れる大岩が現れる。糸を引くように流れるやさしい水の音。周囲はまだ雪が残っている所も有る。今日1日だけでも解けてしまうのではないか、と言うくらい暖かい日曜日だ。

 ここから山道が急峻になる。

 足元にはツルシキミ(ミカン科)がつぼみをつけて数多く見られる。常緑樹の世界だ。イヌツゲ、アセビ、ソヨゴ。落葉樹のカシワの枯れ葉の哀れなこと。

 そしていきなり豊平の町が箱庭の様に現れた。一服するのにちょうど良いタイミングではないか。先程の運動公園が一望できる。春の陽を浴びての休憩は「しあわせ」。

 なだらかな尾根筋を「頂上へ0.6K」の看板を見ながら歩く。せめてスミレでも、の思いは天に通じず、ウグイスの声を聞きながら次のポイント「中竜頭」へ向かう。

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 中竜頭(878m)

 ここは前竜頭と山頂の中間にあり道の両側にソヨゴやアセビの雑木林が続く。

 残雪が1個所あって、赤い実のツルシキミはアクセントとなって印象深かった。

 花が下に垂れるのに実は天を指すネジキの枯れた姿が一層寂しさを感じさせるが、気温は正に春の休日である。

 と、ここで思いがけない木に出合った。 ブナだ。足元には間違いなくブナの枯れ葉が散乱している。点在しているぞ。

 蝶のアカタテハであろう、歩く先を道標の様に先行する。二頭(蝶の数え方)が追いかけっこしている。これは意外でもあるが、タテハやアゲハの仲間のどう猛な一面でもある。遊んでいるように見える「追いかけっこ」も実はテリトリー争いなのだ。

 全周囲パノラマ山頂(928m)

 案外簡単に頂上が現れて来た。1グループが昼食中だ。昭和53年豊平町の建てた方位盤が周囲の案内をしてくれる。親切な設備だ。

 春の日差しを受けての昼食は、今年はじめて登山で汗を流したことの嬉しさも手伝って、実に気持ちがいい。シジュウカラやホオジロが周りを飛び交う。

 春霞で遠くまでは無理だったが、芸北から瀬戸内海まで見渡せる山頂はこのあと次々とやてくるハイカーでいっぱいになった。

 頂上に来て分かることだが、あと2ルート登頂ルートがあるようだ。

 下山はゆっくり下りても非常に楽に出発点「瀧ケ馬場」まで戻ることが出来た。

 屏風滝と目洗水

 このまま帰っても良いが、何か物足りない。春の花を何も見つけられないのだから。

 そこで案内板に従って駒ケ滝まで下りることにする。なにしろ看板に徒歩5分と書いてあるのだから行かない訳には…。と、だまされて2年ぐらい前にも相当歩いたっけ。

 目指すは駒ケ滝。途中屏風滝に寄り、「健康への道100選」の折り返し点でもある目洗水のある駒ケ滝へ向かう。

 流れに沿って薄黄色のぼんやりと花がついた小枝が見えて来た。良く見るとあちこちに、咲いている、うん、咲いている。はっきりと黄色い花が。

 アブラチャンだ。渓流沿いに春を告げるクスノキ科の「舞姫」。クロモジより早めに咲く「春告げ花」。滑稽な名前は実から灯油を採ったから。足元にはイカリソウやイチヤクソウの葉が初夏への準備に忙しい。もう春だ。シュンランは花芽をつけている。クロモジも芽がふくらみはじめている。

 雪解けの水はさほど冷たくも無く、まさに水ぬるむ頃の春の装いであった。

 竜頭温泉

 もう一度出発点の運動公園に戻る。目的は「温泉」。地下約600mより揚水するラドン温泉だ。タオル付きでひとり300円は格安。「むさし」を過ぎて「カモの横断に注意」の看板を横目に奥まで行くと宿泊研修センター「どんぐり荘」は有る。

 サウナと薬草湯までついていて、薬草の袋の中身は「ヒノキの葉」だった。ここで登山の汗を流し、しばし休憩。

 家内は地元のネギやホウレンソウを買い込み、私は行事予定表を参考に次回訪れるタイミングを算段する。

 5月中旬頃         丁川のシャクナゲ

 5月下旬頃         原東の田楽

 6月中旬頃         とよひらほたるまつり

                    上阿坂花しょうぶ園

 9月第2土曜日     豊平町神楽競演大会

 10月中旬〜11月上旬 秋祭り(各地)

 11月下旬           そばまつり・とよひら


植物のことわざ  平木輝夫氏のノートより

 サクラの花盛りはマスがうまい

 サクラの花の散る頃ブリが多くとれる

 八重ザクラの蕾ができかけたらマグロが来る

 ヤマザクラが咲くとアサを蒔かねばならぬ