QJYつうしん23号 平成8年4月8日

     春の海で美術館とお花見と       蒲刈町・下蒲刈町(安芸郡)

 


 瀬戸内海の島々はそれぞれの歴史と特色を持っていて、1日かけてまわってもその島のすべてを知ることなど出来る訳が無い。

 狂乱の花見が嫌いで、どちらかというと桜まであまり好きになれなかったものだが、春の風物詩であり季節のタイムスタンプの役目を古来から担って来たサクラに最近は風情を感じるようになって来た。

 豊臣秀吉が始めたことが起源と言われる「お花見」。なにもサクラだけに絞る必要は無い。

 「花」と言えばウメをさす時代もあったそうだ。例えサクラを見るにしても、人の大勢集まる公園ばかりが花見の場所では無い。神社に一本だけ植えて有るカンヒザクラ、遠い山の雑木林に点々とピンクのアクセントを付けるヤマザクラ、山登りの分かれ道で心を打たれるほど優しいウワミズザクラ。

 挙げればきりの無いほど多くのサクラが思い出される。

フェリーの旅

 JRの呉線・仁方を下りると、桟橋まではちょっと歩かされる。到着時刻より20分は見ておかないと船に乗りそこなうことも有るので注意が必要だ。

 船旅はゆっくり味わう間も無く寄港地「三之瀬」にあっけなく着いてしまう。

 蘭島閣美術館

 田舎の島だからといって馬鹿にしてはいけない。これだけの美術館は滅多に無いぞ。

 蘭島というのはこの島がシュンランを多く産したから。えー、知らなかったよネ。なるほど総ヒノキ造りの美術館の門前の植え込みにはシュンランが今を盛りに咲いていた。

 今回2回目の来場だが、むちゃくちゃ多くない展示物は適度にじっくり鑑賞できることで満足感を得ることができる。

 今回は木版画を重点的に展示してあった。歌川豊国の役者絵から深水、魁夷、もちろん棟方志功、平山郁夫に至るまで。ここで説明を続けるとページ数が…。

 蘭島閣美術館 開館9時 無休 入館料 \500-

 御馳走一番館

美術館から広い石畳の道を少し歩くとこの奇妙な建物に行き着く。名前が奇妙なだけで建物はすばらしい。

  富山県砺波地方の代表的な商家の造りだそうだ。

  この島は徳川幕府の全期間12回にわたって、朝鮮からの特使を接待した、と言う歴史を持つ。

 その「食」を含む接待全体を指す「御馳走」。

 ここ蒲刈の瀬戸内海航路の要衝としての役割、外国の事情を得るための国を挙げての歓迎ぶりがこの朝鮮通信使資料館の命名につながった。

 接待に使われた饗応料理の献立や関連する絵画資料の数々、通信使船や行列の模型など多数。

 隣接してあかりの館が建つ。

 山口県上関町にあった吉田邸を移したもの。古今東西のランプに代表される「あかり」をコレクションし展示している。紀元前のギリシャや明治の日本の灯火器まで。

 そして目の前の海を見渡す庭園。

 島に来て、何やら異質の文化に触れたような気がする。

 駐車場は美術館を含めてここを利用することになる。

 朝鮮通信使資料館 開館9時 無休 \500-

 島の花見

 この素晴らしい庭から海を挟んで向こう側に白い花が満開の果樹園が見えた。みかん畑の中にあちこちかたまって見える。

 白い梅のような果樹。雰囲気は山陰では特産の梨の木に似ているが、ここでは何だろう。

 どうしても分からないので地元の人に聞いてみた。答えは「はらんきょうですよ。」とのこと。なーんだ。いわゆる「李」、すもものこと、もちろん果樹の品種まで分からないが、あんず、ネクタリン、ソルダム、サンタローザやスタンレイなど。ま、とにかくスモモもモモもモモのうちじゃね。

 島全体がこの白い花でお花見が出来るのだ。

 やっぱり、ここ、県民の浜

 本当は七国が見渡せると言う「七国見山」に登ってみたかったが、春の海岸の植物をじっくり観察してみたくて、ここ、県民の浜に来てみた。お弁当の時間でもある。

 ハマエンドウ、ツルナ、ハマダイコンはやはりどこより早いようだ。天文台のある方の丘に上ってみる。イヌビワやヤマモモが見事。

 足元にはクサイチゴが満開。振返ると周囲の山にはオオシマザクラやヤマザクラが植えて有る。

 緑のトゲトゲの木が目についた。ミカンの仲間のカラタチだ。まだ蕾だけれど野生の物の様だ。花の時期に来て香りをかいでみたいものだ。そして、当然、島倉千代子のこの歌が出て来る。

カラタチ カラタチ  からたあちの   は あああなー

 ヒヨドリの大群

 昼食はぽかぽか春の陽を浴びてこの丘の上で食べる。ウグイスの声が心地よい。

 すると、ピーピーとすごい鳥の群れ、ヒヨドリの「渡り」に出くわした。この時期のヒヨは九州方面から瀬戸内海を縦断して中部、東北地方へ渡る。大群を作るのはタカ類の攻撃を避けるためだ。猛禽類のレーダーをはずすため海面近くを飛ぶ。

 渡りが見られるのは音戸の瀬戸あたりが代表的で、タカ類は待ち伏せをしていることもある。そして県内で留鳥化している意気地の無いグループもいると言う事だ。

 花ではナガバノタチツボスミレが多い。瀬戸内海には多いツクシキケマンも花盛り、日当たりの良い山道に群生している。

 春のお花見はサクラだけではないですぞ。

 オススメ 船・バス 時刻表

広島06:51→JR呉線→仁方07:49

広島07:03→JR呉線→仁方08:08

桟橋まで徒歩15分、タクシー5分、急いでね

仁方08:25→フェリー→三之瀬08:55

  美術館・資料館見学

三之瀬→徒歩で橋を渡る(20分)→向学校前

向学校前10:42→バス→県民の浜11:16

県民の浜で「のーんびり」もいいよ

輝きの館(昼食・温泉入浴可)

            0823-66-1177

県民の浜15:10→バス→向浦桟橋15:43

向浦桟橋16:00→フェリー→仁方16:30

仁方16:53→JR呉線→広島18:02

 バスの時刻は蒲刈町役場 0823-66-1111

 で調べたものです、変更の場合はごめん。


  植物のことわざ 平木輝夫氏のノートより

 ワラビやウドの出る頃はヒラメがうまくなる

 藤の花が咲くとウグイが子を持つ 

 山椒の芽の出始める頃タニシがうまい