QJYつうしん27号

     休日は山にいます 平成8年4月29日

天下を取る眺望、修験の霊峰 忠海町/黒滝山(竹原市)272m〜小泉町/白滝山(三原市)342m

忠海という町

 JRの忠海駅を降り立つと正面に奇岩の聳え立つ名峰黒滝山を見上げる。

 新緑の中に未練桜とせっかちツツジの混ざり合った何とも言えない光景を目にした。

 春と夏の境目と言えばそれまで、今年の遅い春が嬉しい誤算となって見事な光景を見せてくれている。

 旧家の多い忠海の町は狭いことで有名、大きなスーパーも無く、昔からの商店が専門店として存在する。なにやら子供の頃あたりまえに目にした光景だった。

 黒滝山は町のシンボル。ここ出身の会社の同僚はくろたきやま、と呼ばずにくろたきさんと呼ぶ。

地蔵院から登山口へ



 最初のポイントは地蔵院、門をくぐって左手に大日如来を中心に六地蔵が並ぶ何の変哲も無い庵のようだが、実はこれから登る黒滝山の観音堂はここの奥の院である。

 門前のカラタチの花、はや咲き出したフジの花、雑草にしては可愛いマツバウンラン。

 家々の庭先まで覗きながら歩いていると、「好きな花があれば持って行きなさいな。」と、何とまあ親切な声までかかる。

 登山口に行くには大きな墓場を通り抜ける。大きなネコノメソウが、と思ったら、ノウルシが咲いていた。雑草とはいえ珍しい。

ご安心処から山道が

 20分も歩けば登山口だ。

 新しい休憩所「さくら堂」があり水を補給できる。そして「ご安心処」、つまりトイレのことをこんな風に書いてある。粋な表現。

 親切な石仏案内図のパンフレットに従って


登山を開始しよう、そしてこれは何だろう。

 「体力評価カード」、全長1、500メートル、15ポイントの案内板に従って種目別に運動を行い得点を付けるというもの。おいおい、こんな事まで。それも竹原市観光協会の名のもとにカードが用意してある。黒滝山森林サーキット健康の森だそうだ。

新緑の山道を登る

 山道は新緑の樹木が両側に、駅前からあれほど威風堂々たる黒滝山が見えていたのが、今は近すぎて良く分からない。

 ナワシログミの実が食べ頃に熟していた。   木々の間から見える風景にコバノミツバツツジの紫色が美しい。蕾をつけたウバメガシが山道をずっと付き合ってくれる。

 乃木将軍腰掛け岩なんてのがある。そして霊水池という水場に着いた、きれいなひんやりとした水、が、ちょっとこれは飲みづらい。なにしろ水の中にトンボのヤゴ、イモリ数匹。


幸福の鳥居くぐり

 黒滝山の石仏は33体。山腹の岩肌に観音像が彫られている。和歌山の那智山青岸渡寺をはじめ西国三十三ケ所霊場を表わし、昔から信仰の山として、又、瀬戸内海国立公園の一部として忠海の観光のシンボルでもある。

 山道はコナラ、フサアカシア、ハゼ、ザイフリボクが早くも花をつけている。

 そしてあちこちに残るサクラが花びらを落とし、山道は足元のスミレやニガナと一緒になって賑やかな事。

 石仏以外に観音像もあり所々に設置された先程の「体力評価」のための運動用の木製遊具もあって、飽きる事のない山歩きだ。

 小さな石で作られた鳥居をくぐると幸せが…という鳥居くぐり、後続の女性グループが挑戦していた。結果は知らない。いや知らない方がいいと思う。たぶん、お尻が…。


クサリ場のある石鎚神社

 途中の休憩舎からの海を見ながらの休憩は気持ちが穏やかに落ち着く。

 そして観音堂のある山頂下の絶景の展望台。望遠鏡も設置してあるので島々を見てみたいものだが、あいにく今日は春霞で遠くが見えない。その分、暖かいが直射の日差しを受ける事も無く山登りしやすい天候だ。

 ここから右の道をとればパノラマステージと名付けられた展望園地を通り山頂へも行ける。しかし今回はクサリを伝って上がってみた。頂上は運が良ければ四国の石鎚山も見える。

白滝山へ

 黒滝山の北側に白滝山がある。

 先程からゼンマイを採る人達もいる。歩きやすい道を進むとカサカサとカナヘビ(茶色のトカゲ)の逃げる音。これこそ春の山歩きの音でもある。

 ガマズミが早くも花をつけている。

 白滝山は山頂に竜泉寺という寺、三原市に属す。歩いて1時間の距離だ。

 黒滝山と白滝山の間に駐車場があり、車での登山のポイントとして便利だ。(尚、表題の山の高さはここの駐車場にあった案内板の数字を採用した。パンフレットとも中国新聞「ふるさとの山歩き」とも微妙に違うぞ。)

 「ゴーン」と、山頂から鐘の音が聞こえてきた、途中に展望台もある。

 白滝山へは700メートルだから、あっけなく着いてしまう。ベンチのそばにスミレ(スミレという名のスミレ)やヒメハギが咲いていた。

 短い登山道はボケが植えられ、赤、白の花を咲かせている。白滝山の見どころは山頂の磨崖仏、その屋上八畳岩の上で無礼ながら昼食をいただく事とする。

 先程登った黒滝山をやや下に見て、瀬戸内海を望む。北側には本郷町、エヒメアヤメで名高い沼田西町。帰りには寄りたい場所。


平木輝夫氏のノートより

 桃栗3年柿8年、琵琶は9年でなりかねる

     梅は酸い酸い13年

 山でうまいはオケラにトトキ、里でうまいは

     ウリナスビ、嫁に食わすはおしゅうござる

   トトキ:ツリガネニンジンのこと

   平木氏が親御さんなどから実際に聞かされてきた植物に係る格言集、19号から連載しました「植物のことわざ」は今回でひとまず終了します。平木氏は地質・岩石などが専門の方で観察会にも時々出席戴いているのでご存知の方も多いはず。

その3 島根県の巻

県木クロマツ(マツ科)

宍道湖に浮かぶ嫁ガ島にあるのもクロマツ。  俗に雄松と呼ばれアカマツに比べ力強い。

県花ボタン(キンポウゲ科)

大根島の特産は朝鮮ニンジンとこのボタン。  全国に広めたのは行商のおばちゃん達。

県鳥オオハクチョウ(ガンカモ科)

実際にはコハクチョウの方が飛来数は多い。  白鳥海岸として名を馳せた東出雲町は今では  極端に数が減少した。斐川平野や安来市の冬の 田んぼに群れを見かける。