QJYつうしん 36号

     休日は山にいます 平成8年8月15日

 

納涼・究極の滝めぐり     太鼓谷/寂地峡(山口県)

 

台風一過

西方面、つまり佐伯町方面に出掛けるときは太田川放水路に沿って南下し、己斐からバイパスに乗る。

朝はワリと空いているが夕方は廿日市で混むのが玉に傷。

ところでこの日の太田川の水量の多さと濁りにびっくり、前日の台風12号によるもの。この台風は結局鳥取に抜け秋田県に再々上陸した。

お陰で市内の交通はマヒし、お盆の帰省客は駅で相当足止めを食らったようだ。

バイトに出ていた娘は公共交通機関の停止していた間は働いていたので結局何があったのか分からなかったそうだ。脳天気そのもの、何しろこのQJYつうしんに出てくるイラストの子だから。

恒例宮島の花火は昨日予定を今日に延期、つまり2号線は帰りには混雑するはず。とにかく、昨日の雨でどこの滝も水量が多くてすごいぞ。

五竜の滝

名勝寂地峡には毎年この時期訪れる人達が多い。もちろんそれは避暑地としての寂地峡。子供たちは水遊び、大人は焼き肉。

考えてみれば山間部の子供たちは海に気軽に行けない訳で、冷たいけど川遊びが最高の水遊びとなる。

何度も来ている寂地峡だがいつもは寂地山への登山がほとんど、春のスミレのシーズンのみ右谷山へのルートで太鼓谷へ来ている。

このルートは名付ければ滝見コース、ゆるやかな山歩きと寂地山(1337m)、右谷山(1234m)への快適登山ルートでもある。


滝見コースと言うからにはずっと流れに沿って歩く事になる。夏の山歩きは山野草は期待できないが日陰の涼しいハイキングで心身ともにリフレッシュする事請け合い。

スタートは延齢水から。

五竜の滝とは竜の名の付いた五つの滝があることでそう呼ばれる。延齢水の汲み場所そばで轟々たる音を立てているのが竜尾の滝。

この後、登竜の滝、白竜の滝、竜門の滝、竜頭の滝と続く。いずれも豪快さで群を抜く。遊歩道が流れに沿って作ってあるので有り難い。

水量がいつもより多いので水飛沫も相当だ。岩にへばりつくダイモンジソウの葉を見る、花はまだまだ。五竜を登り切った所にあるのが木馬トンネル、岩を掘削した洞門で30メートルくらい暗闇の中を歩く。時々雫が滴り落ちてちょっと気味の悪いトンネルだが、涼しさも抜群。でも懐中電灯はあった方がいいよ。

トチノ実ころころ

暗闇を抜けると緑の中に飛び込む。

五竜の滝を作る流れは無数の沢から構成されている。分かれ道で右に行けば龍岳観音を経由して延齢水まで戻ることが出来る。

但しこの道はクサリあり、鉄の急な階段ありと高所が苦手な人には危険な道でもある。案内にもそう書いてある。

もっともここまで来る人は殆どいない。

我々は今の別れを左にとり太鼓谷に向かう。看板は寂地山・右谷山となっている。

流れを右に左に、しっかりした橋がたくさん懸かり、流れのそばにも下りれる。水を手で掬って顔を洗うと冷たさで汗が引くようだ。

水量があるので流れの音もすごい。山道はトチの実がころがっていた。春に歩くとエイザンスミレが咲き乱れていたあたりだ。エンレイソウやヒトリシズカはかけらも無い。

チドリノキやコバンノキは春先には確認できなかった。アサガラが昨日の台風でだろう若い実を落としている。オオバアサガラとの違いは実の付き方で分かる。オオバの方が縦長の房状になる。

クサアジサイとミズヒキ、キンミズヒキは花の盛り。ウマノミツバやセリは地味な花を咲かせる。トチバニンジンの赤い実が艶やかだ。



クールスカーフ

家内がそごうで面白い物を買ってきた。首や頭に巻く布で、中に脱脂ポリマーなるものが入っている。乾いている時は平べったい布だったが、水を含むと丁度保冷剤のような膨らみで頭を冷やしてくれる。クールスカーフという、水分は何日も持つと書いてある。

じわじわと水分が蒸発する効果で気化熱を奪い冷えるという。確かにいつまでもひんやりとしたスカーフを首に巻いているみたい。

ここでは水がふんだんにあるのでそう必要がなかったようだが暑い日の山歩きには効果がありそう。

太鼓谷

ふつう太鼓と言ってイメージするのは中太りの丸い形、しかしここの谷は太鼓腹的な形状ではなく中細り。

つまり太鼓はツヅミ(鼓)のことだと思われる。その鼓のくびれた腹の部分までやって来た。ふたつの沢が合流するところで橋があり休憩のためにベンチもある。

ウバユリが咲いていた。見上げると大きなクルミの木。トチノキも大きい。右谷山までの行程でいけば半分を過ぎたくらいか。今日は上まで登らないのでここで昼食、そして折り返すことにしよう。

セミが鳴いているのだが流れの音でかき消されて聞こえない。

5月の連休の頃にここに来れば、鼓の中央部 、みのこし峠でカタクリの大歓迎を受ける。左の右谷山から寂地山、果ては冠山までカタクリロードは延々と続く。ブナの林と渓流の樹木、その頃ここに来ればもっと山が好きになる。

私の様に既に山が好きな者は一気に中毒となる。ミソサザイの元気な声とワチガイソウの可愛い花を図鑑で調べた嬉しさを今も忘れない。

USAにようこそ

山道をくだり出発点の延齢水でペットボトルに水を汲み帰路につく。

ただ上(山頂)まで行かなかったせいで時間が余っている。この際、足がすくむ高さで有名な深谷大橋へ行ってみることとした。

寂地峡を出て広島側へ戻らずに山口側に向かう。あとは道路標識に従えば間違いない。道はちょっと狭いぞ。

この辺りは宇佐という。英語でUSA、そうアメリカなのだ。「Welcome To USA」と看板まであってここの人のユーモアに嬉しくなってくる。

宇佐八幡宮はここの名所でもあるがこの辺りで名所と言えば深谷大橋。小五郎山の西、金山谷を流れる川(最終的には錦川となる)は何と山口県と島根県を分けている。

橋の向こう側に駐車場もありいったん車を降りて橋を歩いて渡ることも出来る。ただし歩道は無いので気を付けて。

橋から下を見ればものすごい高さにくらくらとなる。まともに下が見られない。

ここを渡れば島根県だって?。六日市町の人は安来や松江の人達と同じ県民意識なのかなあ。

同僚の野鳥の会会員によるとここはブッポウソウの繁殖場所だそうな。