QJYつうしん 37号
休日は山にいます
マネキグサからの招待状 東城町/帝釈峡(比婆郡)
渓流めぐりの最終版
QJYつうしん第32号で始めた渓流・滝特集、会社の連続休暇もそろそろ終りなので今日は東の横綱「帝釈峡」に出掛けることとした。
瀬戸の滝から始まっていずれも涼しさは満足点を与えられるが、花は時節柄少なかったようだ。しかし、今日は珍しい花のオンパレード。
我が家は息子が受験生、両親が家でごろごろしているのはマズイ、と言うより夏休み返上で勉強している受験校の3年生はさすがにお盆休みは学校もクローズ状態である。
不本意ながら今日も涼みに出掛けることとした。
シデシャジン(キキョウ科)
帝釈峡はスケールの大きさで群を抜く。観光地でもあり、豊かな植生、それも遊歩道沿いで見られる貴重な植物群。
春から秋までいつでもOKの景勝地だ。
上帝釈から入るのはいつものコース、但し今回いつもと違うのは駐車場に係員がいて駐車料¥300を取られたこと。
ウィークデーでもさすがにお盆だ。車もいっぱい。すぐに貸し自転車を利用しませんか、と人がやってくる。馬車まであるがここは歩いてこそ価値がある。
歩きはじめるといきなり滅多に見られない花が目に付いた。シデシャジンだ。紫の細い花びらがとてもキキョウの仲間とは思えない。
写真を撮っていたら突然馬車がそばで停止した。馬を操っていたおじさんが「道路にいつもと違うものがあると怖くて動けないんです。」と説明してくれた、気の小さい馬なのか道端に置いていた私のリュックを怖がって前に進まなくなっ
たらしい。急いで取り除くと何も無かったように歩きはじめた。
マネキグサ(シソ科)
ハエドクソウがイノコヅチそっくりの実をつけている。白雲洞の前はかなりの人だかり。それもそのはず、洞内は11℃だそうだ。寒いくらいだ。その隣は殆どの人が通り過ぎる鬼の唐門と呼ばれる天然橋のひとつ。実はいつもここ唐門で一時間くらい費やす。
春一番のミスミソウ、連休の頃のヤマブキソウ、今はイワタバコ、秋はジンジソウとなる。
賽の河原があって石が積み上げてある、「ひとつ積んでは親のため…」、そこへ鬼がやって来て崩して行く。
気味の悪さが幸いして誰もここには来ない。
岩の間を吹く風が涼しい。時折ツクツクボウシの声も聞こえるようだ。秋が忍び寄る。
花をつけているミヤマイラクサの鋭いトゲに気を付けながら奥へ進むと、本日招待状を送ってくれたマネキグサがあった。
赤紫の小さな花がオドリコソウみたいに並びラインダンスを踊っている。紫やピンクの多いシソ科にしては、鮮やかな赤紫、身近な図鑑には載っていない希少な花だ。
花を猫の手招きと見て付けられたしゃれた名前。
ギンバイソウ(ユキノシタ科)
やはり今日も一時間ここにいた。ほとんど人のいない帝釈峡しか記憶に無いので、これだけ混雑するとむしろ嬉しくなる。
馬車も大忙しで働いている。
水戸黄門の「これが目に入らぬか」でお馴染みの葵の御紋、このモデルになったフタバアオイがたくさんある。花の時期は連休の頃。葵の御紋は三つ葉なのだがフタバアオイとはこれいかに。春先これを考えて悩んでいたらフタバアオイの赤い花のそばでユウシュンランがあったのを覚えている。
植物学者工藤祐舜の名を残す純日本産の野生ラン。中国新聞社の花のアルバムでユウシュウランとしているのは何かの間違いだ。
三段峡のヒナランと並んで私の恋人。
私には港港に逢いたい娘達がいる。開花の時期を待つじれったさ、雨に降られるやるせなさ、つかの間の逢瀬を春の風に邪魔されながらシャッターをきる。
そう、演歌のノリで花を撮る。
さてタイトルのギンバイソウは渓谷の道に沿って全般で見られたが、花のついていたのはわずか。ほとんど実になっていた。
ギンバイソウはあじさいの仲間、大きな葉が二股に分かれ、アジサイみたいに装飾花がちゃんとついている。花は梅のよう、そう漢字では銀梅草と書く。装飾花は不要の美しさ。
ハグロソウ(キツネノマゴ科)
山道全般で見られた花のひとつにハグロソウがある。葉が黒いと言う意味だがそれは少々オーバーな話。遠めに見る花はマネキグサと似た感じだが、花が一個か二個ずつしかついていない。写真家泣かせの花、忘れた頃にまた現れるが決して群生しない。
馬車のユーターン場所、雄橋まで来た。長さ90m高さ40m巾19m、帝釈峡のスーパースターだ。石灰岩洞が流れに削られてくり貫かれたものであることは容易に想像つく。
世界の三大天然橋、と立て札にあるが残りは?と言うと、スイスのプレビシュ、北米のロックブリッジ、何にせよ、知らんわい。
雄橋を過ぎて小さい橋を渡るとクサギが花満開で待っていてくれた。
招待状を寄こしたのはマネキグサだったが随分多様多種な花の散歩道だ。
秋にはアザミの目立つ開けた場所に来ると、クズ、ゲンノショウコ、ヤブカンゾウが咲いている。そして資採禁止という意味不明の立て札。
いや、意味は分かるがちゃんと書いてよ。
オオキツネノカミソリ(ヒガンバナ科)
断魚渓付近からキツネノカミソリが多くなった。ものすごい群落もある。ここで良く観察すると普通のカミソリでは無いぞ。電気カミソリか?いやそうじゃなくてオオキツネノカミソリなのだ。
花弁が長さ70ミリ位、おしべが80ミリと長く飛び出している。全体に大きいが色もやや薄く、観察はじっくりとを実践して良かった。
モミジガサが蕾をつけている。そうめん流しの小屋では多くの人、ここもじっと観察すると、そうめんの流れてくるのを待つ人の多いこと。シーズンだから仕方ないね。(食べ放題、¥600)。
シギンカラマツ(キンポウゲ科)
そうめん流しを過ぎると人と自転車が極端に減った。道路のでこぼこがひどくなる。
オオギツネやモミジガサに混じってちょっと気づきにくいがフシグロセンノウも見られる。朱色が鮮やかだ。オオバショウマの蕾がすっくと立って元気が良い。
ここで多くなったのがカラマツソウ。ここのものはシギンカラマツだ。葉の形状で分けられる。他であまり見かけない貴重な種だ。
シギンは紫銀、花の白さをさす。アキカラマツ、ミヤマカラマツ、カラマツソウなど違いをチェックすると面白い。
あたりにはミンミンゼミの声がうるさいが白いヤマシロギクの出現に秋の気配も感じられる。