休日は山にいます 平成8年10月20日

紅葉の隠れた名所 その1 山県郡・芸北町/鷹ノ巣山 943m

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紅葉の名所は大変多い。温暖でスキー場の多い広島県の特徴を表わしている。

なにしろ県の花も木もモミジだから。

特に海岸に近い宮島、三原の仏通寺にモミジの名所があることは意外である。山間部では西の三段峡、東の帝釈峡。

しかしこれらは観光地でもあり、日曜日の混雑は相当なもの、山歩きの仲間はやはり隠れた名所を歩いてみたいと思う。

米子にコハクチョウの初飛来した今日は紅葉のシーズン到来の日でもある。衆議院選挙を早めに済ませ、芸北方面に出掛けた。

今日も元気なオッパイ山

戸河内町の役場を過ぎるといつも気になる山がある。超ボインのオッパイ山、標高も山名も分からないけどふっくらした姿と中央の押しボタン的、いや乳首的な盛り上がりが素晴らしい。誰か登山口を教えて。

  おっぱい山

この辺りから見る山々の紅葉は今始まったばかり、という感じ。車の窓からは点々と紅色の秋が見て感じ取られる。

紅葉は終り頃より始まりの頃の、緑との調和が美しい。

林道のある山に歩いて登る

夏に登った高岳で今日の目的地、鷹ノ巣

山に残念だが林道がついているのを確認している。車で登ることが出来るのだ。

そんな山はあまり登りたくない、が、ものは考えよう、その分、山道は自然が残っている度合いが高い。特に今日は落葉樹の紅葉ぐあいを見ながらの山歩き、人の来ない山道の方が楽しいはず。

ところで鷹ノ巣山は県内にもう一箇所ある、向原町の同名の山(922m)はここより有名、昔は鷹が巣を作るくらい人の近づかない険しい山だったのかも知れない。

そこでこの山を八幡鷹ノ巣山、と山仲間は呼ぶ。で、登り口は車である程度登ることもできる長さと広さがあるが、なるべく下に車を置き楽しい山歩きは花を見ながら上がることとする。

ちなみに先程の林道はこの山の持ち主が独力で切り開いた私道である。私たちは山を歩くとき意外にもそこが私有地であるなんて気づかないが、この様なケースはそう珍しくも無いので心得ておかなければならない。

たばこを吸いながら歩くなどもってのほか。

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 大佐山とのT字路

リンドウ、オミナエシ、ホクチアザミやヤマラッキョウはこの時期の定番。左に沢の流れの音を聞きながら登ると気が休まる。

T字路に向けては谷間の歩きやすい道。

日当たりの良い場所ではマツムシソウが咲いている。それでも虫の声がしないのはここではもう秋も終りなのだろう。

北風がやや冷たい。イカリソウやアケボノソウが時期には多いことを示すように葉や実を見せている。

クマザサは膝下あたりに繁って、道はしっかり確認できる。振り返ると掛頭山のゆったりとした山容、ウリハダカエデが赤く色づく。

T字路は即ち県境である、南面はヒノキ・スギの植林、北面は雑木林。ワレモコウやキクバヤマボクチは今が盛り。

陸軍石標

尾根伝いに歩いて来て「右鷹ノ巣山、左掛頭山」の別れがあった、掛頭山は遠すぎるし一度県道に出なければ行けないはず、もちろん右に向かう。ところで表示板の下には「陸軍(二〇)」と書かれた石標が立っている、戦時中のものだろうが山のガイドブックには何ら説明は無い。

今までの明るい植林の道から、林の中に入って行く。ブナ林だ、所々の赤いテープが頼りになる、クヌギやコシアブラ、ミズナラの森林。夏なら涼しくて足元のチゴユリが楽しめるだろう。鳥の声もすぐ近く。

登りはじめて1時間だ。

それにしても、歩きやすいのはいいがずっと下っていることに気づくと何やら不安。間違えてはいないが山頂を目指すのに下りっぱなし。赤いテープは絶え間無く続く、これは安心の糧。

「山頂?と思います。」

ツリバナが実を開いている。

どんどん下って広い場所に出てしまった。湿地がありオタカラコウやハンノキの幼木が目につく。

ここを県境広場と呼ぶ。

奥の山道に「ミズメ、ミズナラ有用広葉樹母樹林」と看板があり、何かの調査だろう径1.2メートルの網が22個、並べて置いてあった。入っていたのは落ち葉ばかり、量からして昨日から置いていたのか?

さっぱり分からない。何をしているのか表示しておいて欲しいな。

山頂へも林間の道を進む。チゴユリの葉が黄色い。ぱっと目の前が開け、眼下に八幡湿原の尾崎沼が見える。ここにも「陸軍(一九)」の石標が建っていた。山頂らしいが表示の案内は何処にも無い。三等三角点を示す石の柱が唯一の山頂を示す証。

ここで昼食とする。

ゆっくり休んで元の道を引き返すつもりでいたら一組の夫婦が登ってきた。「ここが山頂ですか?」「山頂・・と思います。」

この人達がやってきたのはもっと前方からなので、ここが山頂に違いないが。

先に行けば大変見晴らしのいい場所があることを聞き、こちらは県境広場への近道を教え、二人とは別れた。

バスで来て林道を歩いて来たとのこと、山が好きな人達だ。

絶景、西中国山地

教えてもらった場所は山頂からすぐ下の林道終点のこと。なるほどここまで出れば掛頭、刈尾(臥龍のこと)、恐羅漢と素晴らしい景色。正面にそびえるのは島根の弥畝山になるのか、青空と白い雲が気持ちいい。

おや、道には動物の足跡が。

シカかも知れないが恐らくイノシシか、タヌキらしき跡も。夏に高岳から見えた林道に今立っている。逆にこちらから見る景色の素晴らしいこと、聖湖までは見えないが芸北の里を見下ろし、ちょっと下って尾崎沼にも行ってみたくなった。時間の関係上そうも行かないが。

帰りは林道を5分歩いて県境広場に出る、先ほど降りてきたからこそ分かる帰り道を赤テープを見落とさないよう、帰ることとする。


{編集後記}

本日の登山のみの歩数は約9千歩、山歩きは意外に歩数は伸びない。しかし運動量は多いので心配することは無い。

道を捜して頭も使い、感動し、興奮し、温泉にでも入るのだから「健康」にはいいのだ。