QJYつうしん 86号

平成10年1月26日

休日は山にいます

時間が止まった島で春を待つ 広島県蒲刈町 七国見山(457m)

大雪の翌日

このところ、土日がずっと仕事である。昨日などは大雪の鳥取市。道路は人がつるつる滑る状態で、よくまあ車は走れるものだ、と思う。が、さすがにきゅっきゅっと良く締まった雪質の良さに感心もする。

帰りのバスから見る白兎海岸の猛々しい海の様相、時折さす陽光に白く光る蒜山の山々。湯原湖も凍りつき、とんがり帽子の杉の植林が雪を被り美しい。

広島での降雪もかなりあった様で、土曜日に安芸津までドライブした娘も沿岸部で雪が降ったと驚き、チェーンの掛けかたを聞いていた。

明るい陽射しの今朝も牛田の山は雪を被り、呉線沿線もずっと雪だらけ。ひょっとして本日のターゲット「蒲刈の山」も雪が積もったのだろうか。車の温度計が外気温「0度」を示し、R31では天応の岩山も震えているよう。

上蒲刈島へは川尻からのフェリーを利用した。野呂山の大きな山容を背にし20分程度で田戸港に着く。海上右手、女猫の瀬戸に建設中の安芸灘大橋が見えた。平成11年度には川尻町と結ばれる。便利になるなあ。

ここから海沿いに走るとツバキやイヌビワの木にキカラスウリの大きな実がぶらさがる。そう、島の植生はツル植物で代表される。

西泊(にしどまり)観音

そもそも七国見山とはどういう意味だろう。それは頂上から七つの国が見えるというスケールの大きさを示す名前なのだ。それらは周防、安芸、備後、備中、讃岐、伊予、豊後をさす。

登山口は県民の浜の手前、恋ヶ浜の入り口「西泊観音参道口」だ。車で5分も登れば「西泊公園」と呼ばれる展望台に着く。小さなロータリ ーがあり、さらに奥には「西泊ロマンの道」と名 付けられ西方向を見渡す展望台もある。

これ以上登れない人のために寺の鐘がここにも掛けてあり、観音様の優しさが嬉しい。

トイレもここで済ますことが出来る。

このロータリーに車を停め県民の浜方向の展望、遠く四国は石鎚方面の雪景色を楽しんだあと、登山開始だ。平成4年に建立された「平成みちびき観音」に安全を祈願し、山歩きとしてはちょっと期待外れの石段を登る。

15分は辛い階段歩きを続けるが、振り返る瀬戸の景色は柔らかな陽射しと海の反射でまるで時間が止まったよう。

ヒサカキ、シャシャンボ、カクレミノが明るい道の両側に、ツツジ類も多い。アカマツについたヒノキバヤドリギが珍しい。

着いた所が「西楽寺」、弘法大師によって開かれたと言う。安置されるは「十一面観音菩薩立像」。軒先に吊るされた鐘をひとつ撞いてみよう。この音色がとてもいい。

すぐ上からは赤い「物見橋」方面が開ける。水軍の見張り台があった場所だ。そこから、目指す七国見山までの素晴らしい岩山の風景に圧倒されること請け合い。

石段は終わり、ここから丸木段の山道となる。木に打ち付けたプレートに「蒲刈ふるさと自然の道」と書いてあった。

バクチノキ

島とは思えない樹林の中の山道が現われ、木々の背が高い。夏でも日陰になりそうだ。

ノグルミの茶色の実があちこちに。テイカカズラやナワシログミ、花をつけたクロキも多い。

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年中春の島なのに昨日の残雪があちこちに見 られとても不思議な光景。でも登り道で身体は暖まり、実際気温も急上昇して冬の山歩きとは思えない。

イタビカズラやキヅタが優勢を誇っている。おや、ちょっと珍しい木肌の大木があるぞ。

リョウブやナツツバキみたいにまだら模様があるが表面の皮がはがれて裸になっている。ばくち打ちが負けて身ぐるみはがされた様子からついた名前「バクチノキ」だ。蒲刈島には多い。

山頂はもっと先

「丸木の階段道」と「山道」が交互に現われ、林の中にベンチが二つ、やっとピークに辿り着いたかな?山頂の風物詩「カマボコ板」が掛けてあって「七国見山」と示し、「伯山会」と8人の名前。あれあれ、ここが頂上だって?いくら何でも少しは展望がきかないと山の名が泣くよ。

この先一旦下るが、また山道を登りはじめる。丸木の階段に付けられた番号はAからBへ変わり、何の意味かまったく不明。そう言えばここまで山の名を示した案内板がひとつも無い。

で、初めて横道と案内板が現われ「右・桂の滝」とある。試しに北斜面の残雪風景を見に、右折してみた。日陰なので雪が多く残る。道端にシュンランが春の芽を出していたのが救い。

もとの道に返し、倉橋方面から富士山のように見えるという七国見山の山頂はほどなく現れた。きれいな木造展望台があり、二等三角点も確認できる。

樹木の背が高いのであまり眺望はきかない、が、南に遠く四国の山々や北に川尻の造船所も確かに見える。箱の中にスタンプが置いてあり「蒲刈ふるさと自然のみち・七国見山456.97m」とあった。緯度経度の表示も入っていて町の自慢の山であることは良く分かるのだが、ひとつ手前のピークを山頂と間違えた人達がいるのだから、案内は不親切と言わざるを得ない。

周囲はカクレミノ、クロキ、アカマツ、ヤブニッケイで囲まれている。鳥達の声もうるさいくらい。

県民の浜

下山は西側のトンネル方面までの道も続いているが、今日は往路を引き返し、日本の渚百選に選定されている「恋ヶ浜」から県民の浜まで行ってみよう。春の花を早く見たい。

天体観測館の周囲を歩いてみる。誰も収穫しないみかんがたくさん実り、アメリカイヌホオズキやセイタカアワダチソウがはびこる荒れ地。

草刈りなどしてないから衣服にセンダングサの実がくっついて大変。

こんな冬の期間、訪れる人はいないのだ。県民の浜の温泉施設「やすらぎの館」は人気の高い場所のようだが。

美しいジョウビタキやホオジロの群れが近くまで寄っても逃げようとしない。

真冬に咲いていた花も結構ある。ツルナ、ハマダイコン、クサイチゴ、ハコベ。咲いていなくともハマエンドウやハマナデシコも確認できた。

トベラやイヌビワはもちろん多い。

西泊公園から先程見下ろした海岸線に出ると波も静か、打ち上げられた貝殻も多い。遠く沖合いではアビ漁の水鳥オオハムも来ているだろうか。

もっと時間に余裕を持ってここ黒鼻岬を回ってみたいものだ。

QJYつうしん第23号でここを訪れ、登ってみたいと言った七国見山にやっと登った。大きな島の森は山歩きにも十分応えてくれる。

{頭の良くなる花}

これ、花屋さんで見つけた気になる名前の花の鉢植え。カランコエなのだが、「職場や子供の机の上でいつでも花を咲かせる」というのが名の由来。

確かにベンケイソウ科だから乾燥に強いし、花は疲れた頭を慰めてくれるわけだ。

登録商標までしてあるアイデアが気に入って買ってしまった。

その後、物忘れは進行し、別に頭は良くなっていない。