QJYつうしん 88号 平成10年2月11日

公園のハイキング・海の見える丘 広島県大竹市 行者山(314m)

錦竜の滝

前日の夕食は餃子の山が大皿に並んでいた。「よし、明日は行者の山に行こう。」

ま、山を決定するのはそんなもの。

行者山はJR玖波駅の裏山、R2から否が応でも目に入る、展望抜群の手軽にハイキング出来る岩山だ。

広島方面からは大竹ICの出入り口すぐの「右・錦竜の滝」の標識に従う。昨年も写真撮影のために訪れ、お世話になっている場所。谷川に沿って錦竜公園いこいの森があり大竹市民の憩いの場となっている。

清流「大膳川」の砂防堰堤手前で車を置き、赤い橋を渡りハイキングを始める。ちなみに橋を渡らず左の林道を行けば忠四郎山(604m)へのルートとなる。

今日は祭日だからかなりの数の車。

川に沿ってタブノキと並んでホソバタブが見つかった。暖地性でこのあたりから山口県内に多い。タラヨウ、アラカシ、シリブカガシ、クロキ、シキミなどはそれ程珍しくは無いが、シロモジはやはり気になる木。

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 春の花芽を付けているからだ。シロモジ、アブラチャン、ダンコウバイはクロモジ属の中でも花の時期に葉が出ていない仲間、だから良く特徴を掴まなければ分からない。

左に清流の音を聞き、右手の圧倒するような岩壁に青い空を見る。

錦竜の滝を過ぎて右の「展望台」へ寄ってみよう。大竹の工場群を展望台から見るのは少々興ざめだが宮島周辺の海と青空の組み合わせはとてもきれいだ。

そして北側の展望を見る。ここでつい間違えてしまうのが本日の「行者山」。いかにも正面の頂上に岩があるピークと思いがちだが、これは地元大竹山の会が「玖波槍」と呼んでいる岩峰のこと。今日はここに3人の人影。「行者山」は右手の頂上に神社の祠のある山だ。

尾根伝いの山歩き

山歩き派は尾根伝いが好きなようだ。展望と道を間違えることの無い安心感による。

花好きなら絶対沢伝いがお奨め。何てことを言ってもこの時期は一年で一番花が期待できない。まだ秋の木の実を探した方がいいか。但し楽しい植物観察は「花」だけとは限らない、シロモジのように一ヶ月後を楽しみに、今を楽しめばいいのだ。

ランの仲間、カンアオイの仲間、動物のフンでさえ、普段見えないものが見えてくる。

さて歩きやすい山道は玖波槍と行者山の分岐点まで楽しい植物観察をさせてくれる。

実は見つからなかったがシャシャンボ、それに必ず寄り添うヒサカキ。種類が違うのに何故このふたつの樹木はいつも一緒にいるんだろう?為さぬ恋路のしがらみを誰か究明して。

でないとこの錦竜公園は、失楽園?

足元にはコシダやウラジロが。頭上に赤い実のソヨゴ、ヒメヤシャブシとオオバヤシャブシ。

それにしても暑い。先日、日曜日が降雪だったことを考えるととても不思議。

分岐ではとにかく石鎚神社のある山頂へ向かってみよう。海側への道。ヒサカキの木にヒノキバヤドリギが付いていた。足元にコシダの群落。

赤茶色の祠と物置が新しい、なるほど平成3年11月となっている。しめ縄もきれいだ。

4等三角点の石標なんて、むしろ珍しいぞ。

頂上は10人以上の人がいて瀬戸内海の景色を楽しんでいた。場所も無いので食事は次の場所へ移動して、とする。

プライベートピークのイワタケ

引き返す山道は迷うことは無いが、夏の暑い盛りはしんどいことだろう。

イワタケのこびり付いた岩の上は山頂らしくリラックスできる。振り返れば安芸の宮島をバックに先程の行者山がどーんと控える。

それにしても大竹山の会のアクリルプレートに書いてある「玖波槍」とはいい名前だ。いつからこう呼ばれるのかは知らないが、そのうち有名になるぞ。何人も同時に居られないからいかにもプライベートピークとでも呼びたくなる。

ヤマツツジの小木が岩の間をしっかり立ち上がる。

食事のあとの下山は決して往路を戻ることは無い。このまま前に聳える「傘山」の登山口に向かい「錦竜公園いこいの森」経由で帰ることとしよう。

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ここから見下ろす青い屋根の小屋はこれから通るのだろう。

道は尾根伝いで間違えようも無い。

ひとつピークをやりすごし、楽な下り道となる。ゆったり縦走をしている感じ。

林道のガードレールが見えて来た。傘山登山口は大きな林道のカーブにあって、今日も今日とて、たくさんのマイカーが停めてあった。

下山してくる人達も多い。

人気度から言えば、やはり傘山の方が上か。

スーパースター{タマミズキ}

今度は夏でも日陰の森の小道となる。

ハイノキの独特な葉があった。シロダモやアラカシは普通、ヤブツバキとシキミ、シロモジも。

今日はどこかでシキミの花を見られないかと思ったのだが、シキミそのものが少ない。看板に「しきびやさかきを採るな」と書いてはあるのだが。

道に沿ってイノシシのボランティア耕作係が働いた跡。隠れるようにツルリンドウが赤い実を残していた。

形のいい大木にびっしり赤い実がついている、タマミズキだ、車を置いた場所の向こう側にも確認できた。そう言えば我が観察会にはタマミズキのファンが多い。

この木は群生しないし、樹形が良い。真冬に赤い実をたくさん付ける。なかなか近くで姿を見せない。など、スーパースターの要素を持っているからか。

玖波槍から見下ろした青い屋根の小屋まで来た。周囲にゴンズイの大木。樹木の名前が表示してあって親切だ。

錦竜公園いこいの森は渓流の音を聞くやすらぎの場所、カナメモチの木に赤い実がついていた。サザンカも満開。

初めの展望台への道を清掃していたおじさんがここでも作業をしていた。

市民の公園はこんな人達で守られているのだ。

最後まで雲一つ無い青空は滝の水辺でも冷たさを感じない。

もう春真っ盛りのような暖かさだった。

{編集後記}

最近仕事で病院に行くことが多い。健康人でもあまり出入りしたくないのが病院だ。土日でも結構患者さんがいて診察室から苦しそうな声を聞くと、「ちょっとあとにします。」と、逃げ出す。

たった四階の仕事場へもエレベーターを使っていたら、入院患者は健康への意識か、階段を歩く人が多いのに気づいた。

見舞い客の若者はみんなエレベーター。これってコントのネタになりそう。