QJY90 980310休日は山にいます

南の島は公園の樹木もユニーク 25℃、春のやんばる地方 沖縄県

ホエールウオッチングは実現せず

この時期の沖縄は一番良い頃ではないか。一足早い春を味わい、他の季節に無い爽やかさを経験できる。

何度も来ているが、3年前の2月に沖縄マラソンで5時間近く走り続けたのが最近で、その時の暖かさと「東南植物楽園」の樹木の楽しさが忘れられず、徹底して植物観察をしてみたくなった。その時は沿道でもらったチビバナナと黒砂糖、カデナ基地の映画の世界みたいなグラマーな女性兵の印象のほうが強いが。

もっとも天気が良ければ離島に渡り、ホエールウオッチングも楽しみにしていた。結果として、申し込んでみたものの、朝一の電話で「今日は海が荒れ、かなり確率が悪い。」そうで、船酔いも面白くないので鯨は又の機会とした。

那覇市内

着いた日は那覇の「希望が丘公園」で少々植物観察をしてみた。沖縄のアメヨコ、平和通りの公設市場でグルクンなどカラフルな魚を売っているのを見たり、肉屋ではブタの頭が並んでいたりするのを見るのもひとつの観光。

ここは沖縄らしい活気のある通りだ。

公園はそのすぐそば。

ガジュマル、デイゴは沖縄では覚えて欲しい樹木だ。樹形や根の上り具合で少なくとも本土では見たことの無い樹木は多い。リュウキュウマツ、ナンヨウスギはいたるところにある。

大きな豆をつけたギンネム。カリンも青い実をつけていた。

咲いているのはヒカンザクラ、ちいさな青いサクランボを付けて。そう、もうこちらのサクラのシーズンは終わりなのだ。

散歩道に沿って白いキクが目につく。ここだけでなく沖縄全土に一年中咲くタチアワユキセンダングサだ。本土のセンダングサもこれくらい奇麗だといいのに。

ただ、花が終わるとアメリカセンダングサと同じく衣服にくっつくトゲトゲが鬱陶しいが。

公園全体に多いのが大きな葉を紅葉させて落としているモモタマナ。シクンシ科と言うちょっと耳慣れない部類の樹木だが、とにかく良く見る。(シクンシはツル性で赤い花をつけ、良く植栽にされる)また、国際通りにはイスノキが植えてある。虫えいで有名な木だ。その根元にはたいていムラサキカタバミが満開。まったく春なのだ。

ハイビスカスは年中咲く、ここではアカバナーと呼ばれている。ちなみに殆どの植物が正式和名では通じないのだが、この誌上では誌面に限りもあり地方名の表記をやめた。

空港に着いただけでコチョウランが並べてあり、この日の気温は特別高く25℃。

まるで温室にいるような暖かい所だから様々な熱帯、温帯植物に出合えるわけだ。

高速道の植栽

朝からちょっと雨模様、今年の山歩きで雪に降られたことがあったが雨ははじめて。でも、レンタカーなので晴れている方向目指して走ることとしよう。山が低く遠くが見える沖縄ならではの計画だ。

那覇から北へ沖縄道を通り名護へ向かう。植物なら北部と言われる、いわゆる「やんばる地方」がおすすめ。

首里城の北にあるのに西原という地名のICから北へ向かう。東は東風平(こちんだ)、南は南風原(はえばる)と沖縄独特の地名。実は北をニシと発音する琉球の言葉は理解するのを諦めなければ先へ進めない。西原の語源は北原だったのだ。復帰前、18歳の真鍋青年が宮古島で古老の話をまったく理解できなかったのを思い出す。

沖縄道の最初のパーキングエリア「中城PA」で草むらの植物を観察して見た。

満開のランタナの植え込みの上に大きなツツジ風の赤い花をつけたオオバナソシンカ。ハート型の葉は特徴的。

赤い樹肌のアカギ。タチアワユキセンダングサの生い茂る中に那覇市内の空き地に多く咲いていたノアサガオの紫色の大きな花がたくさん。足元には踏みつけそうなほどたくさんのナンゴクネジバナ、短く太い。またウスベニニガナやルリハコベ、シマキツネノボタンも可憐だ。

次の「伊芸SA」ではアレカヤシ。青い花のベンガルヤハズカズラが咲いている。それに絡み付くモミジバヒルガオは紫花の色合いが素晴らしいが嫌われる雑草なのかな。

アメリカハマグルマもタンポポの様な可愛い花を付け、一斉にユリノキ状の大花を咲かせたパンヤ科のキワタノキやフクギ、アコウ、ソテツ、オオバギと頭の中が大混乱しそうだ。とにかく広島では見ないものばかり。

ヤマモモや大木のソウシジュを見つけたらほっとした。これなら安浦にあるから。

大木と言えば「このー木、何の木、気になる木」のマメ科ホウオウボク(モンキーポッド)やホルトノキ、ブラシのような花満開のシマグワ。

本部半島

普通の植え込みや雑草でこれだから、このまま今日の目的地「やんばる亜熱帯園」へ行くと今度は着生ランのオンパレードでシアワセ気分。オオムラサキシキブの実、クマツヅラの花。

原始の世界に戻ったようなヒカゲヘゴは巨大なシダだが、はるか見上げる大木だ。イジュやフトモモが幹の途中にイリオモテランやコチョウランを抱く。

リュウキュウアセビも咲き、やんばるの野生ランのカクチョウラン(鶴頂蘭)は今が満開時期。

やんばる(山原)は東洋のガラパゴスと言った人があったが、まさにそのとおりだ。

熱帯の植物にちょっと食傷気味。で、寄ってみたのは今帰仁(なきじん)城跡。丁度小雨が降り出して、日本的な風情が漂う。沖縄版の万里の長城にはたくさんのリュウキュウコスミレが咲いていた。

オニノゲシ、カッコウアザミの葉。

何故か雑草化したインパチェンスの大群落。

那覇市内で見たアリアケカズラやフサナリツルナスビも咲いている。

おみやげ売店のそばには自生のホウライショウ(サトイモ科のモンステラ・観葉植物)があった。オオタニワタリなどは普通に見られる。

ドライブの道すがらクワズイモの大きな葉にも出くわす。

雨も上がり、帰りに寄った名護のネオパークオキナワではフラミンゴなどの大型鳥やサイチョウがそばに寄っても逃げないので驚くのはこちらのほう。ヒラドツツジも満開。

木からソーセージがぶら下がるソーセージノキに至っては開いた口がふさがらない。

ツツジ祭りも開催中の南の島の一日でした。

<観察に使用した本・那覇の本屋で入手可>

沖縄教材植物図鑑(仲真良英・沖縄時事出版)

沖縄の身近な植物図鑑(いじゅの会・沖縄出版)

沖縄のつる植物(沖縄都市環境研究会・同上)


<編集後記> 会社にチラシを持ってきた大手の旅行会社のキャンペーン(飛行機往復と2泊3日朝食付き)で出かけた。びっくりするほど安い。

エコノミー版のビジネスホテルクラス¥28,900で申し込んだら、向こうの手違いでデラックス版のシティホテルクラス¥35,000になってしまった。

旅行会社の責任だから「これで良いです」と言う。

「儲けた、儲けた。」、笑いがとまらん。

ホテルに着いて、チェックインしていると「ちょっと相談が…」、予約したツインをダブルに変更してくれないか、と言う。それで喜ぶ人がいるなら、と快く了解したら、フロントからお礼にホテルのレストランの夕食に招待する、と電話が入ってきた。

「真面目に生きてきて、えがったのお!」

「それは知らんけど、えがった、えがった。」

涙がとまらぬふたりであった。