つうしん

休日は山にいます98−10−29

秋空と、展望と、日溜まりの山 チゴユリの黄葉の 山県郡芸北町 中野冠山(1003m)〜ノベリ山(940m)

急登の登山道

戸河内ICを出ると時刻は9時丁度くらい、すると

あのパン屋さんはまだ開いていない。だから店の名前が「安気」なんだ。ちょっと呆れるが、日曜月曜と休むくらいだから仕方ないか。

朝の芸北町は樹木にかかったクモの巣が光を浴びてとても美しい。これが帰りに同じ道を通ると全然見えないのだから、見えていたのは朝露のせいだと言うことが分かる。ま、見えていたら獲物はかからないか。

山々の紅葉は一週間でいくらか進んでいるようだ。本日車を置かせてもらうのは「ロッジサイオト」の前。ここにはゲートボール場があり簡易トイレが設置してある。

これから登るのは中野冠山、地元の人がカブリヤマと呼んでいたのを聞いている。登山口は車を置いた場所から100m上のコカコーラの看板の所だ。ログハウスがあり黒いイヌが尻尾を振ってくれた。看板には山頂まで990mとある。

登山開始は10時30分。

ススキやチカラシバの山道がいきなり始まる。

ヨシノアザミが風に実を飛ばそうと、ふわふわして準備していた。

ヒノキの植林だが、すぐにそれも終わり、自然林の魅力あふれる山歩きが始まる。

コナラ、ミズナラ、ブナの落ち葉がぎっしり山道を敷き詰めている。登りはじめて5分、下ばかり見ているとすぐに左折しなければならないのに気がつかないぞ。赤テープが付けてある方向に曲がり、しばらくは勾配のある坂をもくもくと登る。

コシアブラ、リョウブ、タムシバ、ダンコウバイなど落葉樹のすばらしい道だが、この勾配は休み場所が無い。足元には黄葉したチゴユリ、まだ春まで遠いのにシュンランは花芽を見せている。

上を見ると落ち葉がハラハラと舞っている。下には、おちょぼ口のクチベニタケの三人娘。ほっぺを押さえるとプーッと怒って吹き出した。

それにしてもコシアブラは多いぞ。5枚の葉がいっぺんに落ちることで、これ全体が一枚の葉であることの証明になる。

再び左折の場所がある。すべて赤テープが頼りだ。道幅はある程度あるので歩きやすい道だが、何しろこの坂、うっすらと汗ばんでくるのが分かる。クリの実がころころと道沿いに落ちている。ショウジョウバカマのロゼット、オオカメノキは独特の冬芽(バルタン星人)までまだまだの様子。

振り返ると樹間に高杉山の山頂だ。

青空が美しいなあ。気持のいい山歩きだ。

尾根筋のリンドウ

ツルアリドオシが赤い実をつけていた。すると良く見なれたツツジ科の葉、アカモノだ。アカモノは晩夏の山歩きで甘酸っぱい思い出を作ってくれる。 ミヤマガマズミは紅葉している、黄葉しているのはクロモジ。おや、ダイセンミツバだろうか、狂い咲きの花が三輪。そして秋の代表、紫色のリンドウが一輪、いい色で咲いている。

コアジサイの木も多い山だ。

と、足元にコタチツボスミレが咲いていた。

これなら急坂も苦にならない。何とたくさんの花。この時期に見られるとは。

青空が近づいて来た。また、リンドウの花。

リョウブが一度葉を落としたあと、新しい葉を出している。冬が来ると辛いぞ。

尾根筋に出ると右手のノベリ山からの道と合流する。山頂は左(南)方向に5分だ。

青空が自分のもの。

春に来ればアカモノ、イワカガミ、イカリソウ、チゴユリなど小さな妖精たちが登山者をなぐさめてくれる素晴らしい山。それが分かっただけでも収穫だ。春にまた来る気になる山。

展望の山頂

12時前、山頂はあっけなくやって来る。広くて気分のいい山頂だ。直射の陽射しがあるが、10月も下旬になるとやわらかくて暖かい。今日は風も無く、遠望も出来てこの山にぴったりの日。

西には雲月山、北方向にこれから向かうノベリ山と奥に一兵山家山(いっぽんぎやま)。東にはもちろん高杉山のサイオトスキー場だ。天狗石やその向こうの丸瀬山も良く見える。大佐山、臥龍山。

昼食をここでとって、久しぶりに余り動きたくない気分に襲われた。昼寝をしてみたい気分。

でも今日の予定は次のノベリ山まで行ってみたい。そして下って、来尾峠からの県道をロッジサイオトまで戻る。

尾根筋のリンドウやアカモノの小さな葉に分かれを告げて戻ることとする。 

急坂の下りとヤマシロギク

先程の山道を戻り、一路ノベリ山へ。何と下り勾配のきつい坂だ。ブナが抜群に多くなり、リョウブ、クロモジ、カシワ、オトコヨウゾメの多い自然林だ。ウリハダカエデがきれいな赤に色付いている。

20分間必死で下りる。膝に負担のかかる急坂だ。ついた場所が「ヤオノ谷」。

ここの標識ではあと1.8キロでノベリ山とある。ヤオノ谷からはなだらかだが登り道の樹林の道。ヤマシロギクやヤクシソウが目立つ。

ヤブタバコ、センブリ、またコタチツボスミレが咲いていた。明るい草原もある。ヤマシロギクは切れ目無く続く。シラヤマギクは早く終わっている。

目的地のノベリ山までに中間ピークがあり、雑木林の楽しい山歩き。ミヤマシキミの赤い実が印象的だ。そこを右に下るとバス停「冠」までの近道になっている。が、今日は直進。随分歩きやすくなった山道をひたすら登ることとする。

ノベリ山まであと1.1キロ、いろんなキノコを見ながら時が滑るように過ぎ去って行く。だが1.1キロはどうも眉つばもの、それ程の距離は無い。

冠山(かぶりやま)から1時間20分で着いた山頂には、例によってたくさんのカマボコ板。最初はどうなることかと案じた急坂だったが、太陽を背にして歩いた山道は思ったより快適だった。

その冠山は少しばかり傾いた陽をバックに、形の良いシルエットを見せている。

MAP

帰り道もお花畑

四等三角点の山頂は樹木が遮って展望の魅力には欠ける。しかし山歩きの面白さは全般的に十分ある。そして今はもう余り期待出来ないが、花の種類も多そうだ。最後の楽しみは秋の花の名残を捜し出して見よう。

サイオトスキー場を展望すればまるで塩を盛ったように点々と白い三角山が積んである。人工降雪機が作り出した雪の山だ。

こうして何週間か前から準備しているんだ。

ツルリンドウ、ヤマシロギクがまだ咲いている。ヤマラッキョウ、ブタナの間に白いウメバチソウも咲いていた。リンドウも多い。おまけにオミナエシが黄色い花まで、今日はついているなあ。

未舗装の砂利道を下り、忘れていた植林の風景をもう一度見せられた。さらに舗装された道に変わり、県道まで下りて来る。

最初の登山口での高杉山の風景を覚えているだろうか。山頂のスキーリフトがかすかに見えたはず。そんな位置まで歩いて戻らなければならない。稲刈りのすっかり終わった田んぼの風景を見ながら、鼻歌を歌いながら歩いた。


【編集後記】いきつけのホテル

仕事で良く出かけるのが境港。うまい魚をたらふく食べさせてくれるのが「さかいみなと荘」。公共の宿だから安い事この上無い。船員保険の保養所だから魚の味にはお客さんがうるさいのだそうだ。

今日も夕食を食べながら、ある客が「こんなうまい魚は始めてだ。」と騒いでいた。近所の回転寿司でさえ京都の老舗の寿司屋よりうまかったと言う。

薦めてくれた市役所の職員は、朝まで魚だよ、それでもいいの?と言っていた。それでいいのだ。