休日は山にいます 981217

見晴らし大岩で、のんびりうたた寝 東広島市志和町 虚空蔵山(666m)

QJY120

国造(くにのみやつこ)

放射冷却現象である。 西条近辺の田畑には今

年初めて見た霜が一面に。しかしあちこちから湯気が立ち上るような暖かい一日の始まりだ。

西条盆地にはため池がとても多い。そんな場所にカモ類がたくさんやってきているので、時々寄り道しながらドライブするのもこの季節の楽しみ。

本日の山「虚空蔵山」は並滝寺のある池を手前にして写真を撮ると、その美しい姿が水面に映り心がとても落ち着く。

この山を地元では「こくうぞう山」ではなく、「こくぞう山」と呼んでいる。こくぞうは国造、つまり「くにのみやつこ」を指すのでは無かろうか。

西条には国分寺があったが、このあたりを治めていた権力者のために祭礼を行う場所として用意された場所が国造山であったのでは無いか。

南には三城古墳など遺跡もある。

少なくともこの山の山頂に虚空蔵菩薩を奉っている形跡は無い。昔は岩室山など別名がいくつかあった山だそうだ。

同様に隣町の福富町の久芳小学校北東部にも虚空蔵山があり「こくぞうやま」と呼ばれている。その北斜面には松崎古墳群など多くの遺跡がある。

なお麓にある並滝寺は天平の昔、僧「行基」が開いたと言われる真言宗のお寺である。

往時は僧兵が千人以上いて一大勢力を誇示していたと言われる。

むろん虚空蔵菩薩を奉っている寺では無い。

堰堤からの登山口

地元で「Aコース」と呼んでいる登山ルートを利用して登ろう。

並滝寺池の堰堤がその登山口だ。

堰堤は昔もっと上にあって、徐々に現在の位置に拡大されたそうだ。この池から黒瀬川となり、三永水源地を経て広大川として瀬戸内海に注ぐ。

堰堤の広場に車を置き、白い杭が立ててあるが入り口は何だかブッシュが繁っていて取っ付きにくい。

ヒヨドリジョウゴの赤い実が絡み付き、ヒサカキ、クヌギ、イヌツゲなど。クロキは小さな花をもう咲かせていた。ナワシログミはこの山のあちこちで見かける。

どうもこのルートは今だからすんなり歩けるが、夏場は通りにくいクモの巣だらけのヤブコギ道となるのではないか。

虚空蔵山map

足元には点々と赤い実が、ヤブコウジだ。

ノギランの枯れた穂、ツルリンドウの若い葉も多く見る。うすくピンクがかかったコウヤボウキは完璧なドライフラワーだ。アセビやアラカシ、ソヨゴは常緑、そして落葉樹のネジキ、タカノツメが丸裸で立つ。

おや、タチツボスミレが花をつけているぞ。

目を横に移すとシュンランの花芽も見つけられた。アカマツに枯れているものが多いのは、今の西条や志和の現実。

葉が一枚も無いが緑色の木肌と赤い落ち葉でこの木がウリカエデであることが分かる。

それにしても山道にタカノツメの葉がたくさん落ちている。もう少し前ならあの優しい黄葉が全山で見られただろう。良く似たコシアブラに比べて抜群に明るい黄葉だ。

稜線の山歩き

思ったより人の入らない山と言える。

様々な落ち葉がしっかり山道を埋め尽くし、うっかりしていると道を誤る可能性もある。地面が見えていないからだ。実際この山で道を間違えた,と言う人の話を聞いたこともある。その為かポイントには赤や青、黄のテープが巻いてある。

ここまでの山道はまさに直登。下りになると滑りやすいとても危ない道だ。やがて青空が見え始め、稜線に出る。ヒメヤシャブシが来年の雄花をつぼみとして付けていた。

しばらく行くと石標がひとつ、刻まれた文字の意味も分からないがこれから先では見ない。

素晴らしい自然林の山歩きはとても気持ちいい。常緑樹が多くなった、と言うよりそれ以外は落葉しているのだ。

ソヨゴ、ヒサカキ、アカマツ、ネズ、クロキ。

岩がごろごろとある。まるで築山を歩いているような落ち着いた雰囲気。

登山口から山頂までは35分となっているが、これだけのんびり観察をしながら上がると、もう50分経っていて、やっとBルートからの合流点に来た。

足元にまたスミレの花が、今度はシハイスミレだ。濃い赤紫が印象的。相変わらずアベマキの落ち葉の山道、シキミの幼木。大きな岩が現れた。

南に「見晴らし大岩」がある。本日の目的地とでも言おうか、絶景の休憩場所だ。この時期でもかろうじて黄葉を残したタカノツメが立っていた。

まぶしい陽光を正面に浴びながら、眠くなる。昼寝をしてみたい、気持いいなあ、と寝転んでいたら人の声が聞こえた。やってきたのは3人の女性グループ。地元の人たちだ。

下山ルート

この大岩から5分で三等三角点のある山頂だ。一番高い場所よりちょっと低いところにあるのが不思議だが。

紅葉のきれいな木が一本立っている、葉の様子をじっくり観察するとケカマツカらしい。全山枯れ色の中で濃い赤がとても良く目立つ。この先はうぐいすが丘団地への下山道。

今回はBルートのひとつ、並滝寺コースを下りようと思う。先程の合流点、下山では分岐点と言うべきだが、そこを右に曲がる。

ネジキ、カシワ、アカマツがある。意外にゆったりした階段まである下山路で、すぐに道がふたつに分かれる。これを直進すれば北側の変電所方面に出るはずだが、今回はガイドブックに無い左の「並滝寺方面」に下りる。

広く歩きやすい道だ。

リョウブ林。ユズリハの青々とした葉が新鮮だ。シュンランがたくさん花芽を付けている。イチヤクソウの枯れた花穂、ホタルブクロの若い葉、周囲はススキの原でヒメヤシャブシの木が多い。

鳥の声を聞きながら、暖かい陽射しの中をこんなにあっさりと下山できるとは思わなかった。AコースもBコースもどうでもいい、このコースが最高だ。少なくとも登山路のAコースはは急坂すぎて下山では危ない。

山頂から30分たらずで車の通る東広島向原線(県道80)に出合う。電源開発の鉄塔87番のコースと杭に書いてある。

並滝寺池

あまりに簡単に登下山してしまったので、昼食は結局下山後、並滝寺池でいただくこととしよう。

池の周辺は湿地が多く、暖かい時期なら様々な湿原植物が咲き乱れる。今でもマアザミが咲いているのには驚いた。池をめぐる道路沿いにはウツボグサの幼葉が地面にへばりついているぞ。アキノキリンソウなども花で残っている。センボンヤリの秋の閉鎖花の実、湿地帯に下りればタムラソウの咲きガラも見つかる。

松林の中にはウラジロノキの落ち葉が一面に広がっていた。なるほど白い葉裏を見せるように巻いて地面にばらまかれる。実は見つからず。

あらためて先程の虚空蔵山を水面に映す場所まで来て山の姿を写真に収める。

ここで食事をしていると、また眠くなってきた。


【山一証券】 大和証券のセールスウーマン I さんが会社にやって来た。 昨年の今ごろはうちのユーザーだった山一証券にいた人だ。

「あの頃、夜遅くまで部屋の電気を消してコンピュータの画面の明かりの中で、お客さんに電話していました。 涙をぼろぼろこぼしながら…。」

悪いのは経営幹部、従業員は悪くない。

新聞で初めて自分の会社の崩壊を知らされるなんて、かんべんして欲しい。