熱帯夜の幻の花 サガリバナの咲く 沖縄本島「やんばる」の夏休み 沖縄県

沖縄フリーク

またまた沖縄である。沖縄にとりつかれた人を特に沖縄フリークと呼ぶ、私もその一人だ。究極はそのまま移住してしまう人も。

この2月には西表島に幻の花、聖紫花(セイシカ)を見に出かけ、カンムリワシやフトモモの花に感激したことはQJYつうしん123号で紹介した。

今回はどうしてもサガリバナ(サガリバナ科)を見たくて梅雨の明けた沖縄本島に出かけてみた。

2月のセイシカと並んで、一度は見たかった花だ。樹木の花なのに、大きさや色、香りなど一級品の品格を持つのだが、何しろ夜にならないと咲かない、水気の多い場所つまりハブが出そうな場所にしか無い、とにかく個体数が少ないのがその魅力を一層引き立てる。

例によって、それほど高価なツアーでは無いのに、夏休みシーズン前なので高級なリゾートホテルに泊まれるなんてラッキーなこと。ガキ、失礼、子供たちも少ない時期だ。

今回は夜間の外出が多いので、レンタカーの予約は必須。また出発前に、度入りのサングラスを新調して強い日差し対策も万全だぞ。

残波岬灯台

オリオンビアフェスト

7月11日(日)の昼過ぎに着いた那覇空港は、ついこの前と違ってきれいな新しい空港ビルに移転していた。そしてタクシーを近くの奥武山公園に走らせる。この日は地元オリオンビールのビール祭りの日でもあるのだ。

本土は梅雨でも、ここは強烈な太陽がギラギラと照りつける南国沖縄。さっそくビールをグビグビ。お目当ては本日出演のリンケンバンド。しかし残念ながらステージは夕方からということだった。リハーサル中の「ニュー紫」や人気の「カッチャンバンド」などが聞けて、とても豪華な顔ぶれに大満足。

そしてバスでホテルに向かう。R58に沿ってトックリヤシモドキが植えられている。南国だねえ。到着した「RIZZAN」ホテルの浜辺にはグンバイヒルガオ、オオムラサキシキブ、クサトベラ、モンパノキと南国特有の花が並ぶ。オオハマボウ(ユウナ)の大木が多いが、黄色い大型の花は目を見張る美しさだ。当然アリアケカズラやハイビスカス、ハマユウも満開。本土では室内観葉植物のカポックもここでは生垣として国道沿いに植えられている。

新車のレンタカー

700キロしか走行していないカローラを借りて、翌朝向かったのは観光地「万座毛」、キキョウランやヤナギバルイラソウ、クサトベラが花盛り。

触るとかぶれる有毒のミフクラギの葉を採って押し葉にしようとすると、白い汁が出て来た。これが目に入ると目が腫れるのでミフクラギと言う。オキナワキョウチクトウというのが別名。

そしてサガリバナのある名護市真喜屋地区でまず場所の下見だけでもしておこう。サトウキビ畑で働いている人に聞いて、やっと場所が分かった。

ここは樹齢150年と言われ樹木は3本ある。

地面に昨晩のサガリバナがたくさん落ちていた。水の多い場所で、ライトアップの設備も置いてあった。車を置く場所など確認して夕方もう一度来ることとしよう。

この名護から北方面のジャングルを「山原(やんばる)」と呼ぶ。ヤンバルクイナやノグチゲラが生息していることで名高いが、実際はもっともっと多種多様な生物の生息地域なのだ。

このやんばるの山の中に「比地大滝」と言う、ハイキングコースがあるので入って見ることにした。

ヤンバルのジャングル

森の中に入って行くと、「ハブに注意」と書いた立て札。平日でも多くの人とすれ違う。特に米軍関係らしき外人の多いこと。

さっそく目に付いたのが、ノボタンの花だ。広島県内では自然のものは見たことが無いのだが、沖縄では名前どおり野山に咲く。

ヤブミョウガの白い花、クワズイモの赤い実がある。ヒカゲヘゴやハスノハギリはいかにもジャングルらしい。つり橋に差し掛かると、これも驚きの植物モダマに遭遇した。小さいほうだろう、50センチ以上の長さのマメがたくさんぶら下がっている。

渓流を忙しく飛び回るのはアカヒゲと言う鳥だ。

滝を見るまでに、身体から汗が滝のように流れ落ちる。ハスノハカズラが樹木に巻きつく。

ツマベニチョウ、ナガサキアゲハ、リュウキュウアサギマダラなど蝶もたくさんいる。

ゆっくり1時間かけて着いた、最終地点の大滝では思わず飛び込みたくなる。

名護市真喜屋のサガリバナ

沖縄本島最北端の辺戸岬から東側の太平洋の見えるルートを走ると「カメさんを踏まないで」と看板が目立つ。モモタマナも花穂を出している。

夕方になったので、初めに寄った真喜屋地区のサガリバナがある場所に戻ってみた。咲いている、咲いている。朝は全然無かったのに、ピンクの大きなかたまりがじゅず繋ぎになって垂れ下がる。

あたりには甘ったるい香り。

まだ薄暮状態でも、たくさん咲いている。

今年は希望の花をちゃんと見ることが出来た。

冬のセイシカと夏のサガリバナ。お金をかけなければ見られないが、とても価値のある旅行になった。空き地の石垣に咲くモミジバヒルガオの紫色が美しい。

昔から愛されてきたサガリバナだけに別名が多い。沢に多いので通称はサワフジ、香りがいいので舞香花(モーカバナ)、木藤(キーフジ)やジンカギーキなどだんだん分からなくなる。

それほど高木ではなく、目の高さで30センチくらいのたくさんの花穂をぶら下げる。四つのがくが開くと100本以上のおしべが毛玉になってとても素晴らしい。なにより強烈な香りに誘われてハチが集まるのがやっかいだが。

突然、バタバタバタと大きな羽音。オオコウモリだ。カラスくらいの大きな個体が近くのガジュマルの大木にぶら下がっていた。10頭以上はいるだろうか、いわゆるフルーツバットなので怖さは無いが、度肝を抜かれてしまう。キーキーと騒がしい。

花を見ているあいだは地元の人は誰も来なかった。もっと遅くなると集まってくるのかな?

西原町内間御殿のサガリバナ

翌日は「ビオスの丘」に寄ってみた。ここでも覚えたサガリバナの大きな葉とつぼみが池の端にある。昨年開園した出来立ての植物公園だ。のんびり出来て木陰でくつろぐ。園内の池にはヤンバルクイナの仲間のバンが泳いでいるぞ。その後は定番の東南植物楽園にも寄ってみた。

そして夕方になって西原町に向かう。

「沖縄情報」のインターネットで教えてもらった、樹齢450年の大木のある場所。17時半ではまだ全然咲いていないが、食後戻って見ると、びっくり、次々と開いているではないか。

大木の周囲にまるでクリスマスの飾り付けをしたように毛玉がぶら下がる。甘い香り、通り掛かりの地元の人がいろいろ説明してくれた。

毎年なら「さわふじまつり」を開いていたが、今年は地元の人の反発が強くてテントは張らなかったこと。花見の騒ぎが深夜にわたるのでとても迷惑なのだ。それくらいここは住宅地でもある。

ヒヨドリの仲間のシロガシラがフクギの中に営巣しているらしくとても騒がしい。その鳴き声が異常なのであたりを見ると、ヒナが一羽落ちていた。可哀そうだが巣に戻すことができない。

那覇の渋滞

今回ホテルを本島中部にしたのは、那覇の渋滞がいやだったから。最後に空港まで戻るのに、どうしても那覇を通過しなければならない。

首里の県立博物館に寄って、空港までの帰路では国際通りを避けたのに、案の定、渋滞にはまってしまった。それでもレンタカーのリミットの15時にジャスト到着、5分おきに出るレンタカー会社の送迎マイクロバスはお客さんでいっぱいだ。

新車のメーターは1200キロまで進んでいた。