オタカラコウとマツムシソウが群れて咲く 一日遊べる 岡山県立森林公園
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上斎原の国民宿舎「いつき」
会社の健保組合の利用補助が受けられるので、泊まりに国民宿舎や休暇村を利用することが多い。それにしても一週間前の予約で確保できたのでラッキーだった。以前は確か「かみさい白雲閣」という名前だったと思うが、リフレッシュして国民宿舎「いつき」になった。
食堂では昨日は泉山に登ったという人、明日の山までの道順を話している人、岡山県北の山歩きにはちょうど良い宿泊基地である。
さて本日ここから岡山県立森林公園までは8キロ程度なのだが、残念なのは弁当の注文を受けてもらえなかったこと。夏季はそういうところが多い。周囲にはコンビニなど無いので、車に積んだカップラーメンが役に立ちそうだ。
人気スポットの森林公園だが、朝早いので一番近い場所に駐車できた。
すぐに管理事務所に寄って、地図をもらう。壁には今咲いている花としてたくさんの写真が飾ってあった。今日のイチオシはマツムシソウ、ここに来るハイカーの殆どは千軒平の丘に咲くマツムシソウがお目当てだ。
ただ公園内全般にはこの時期の花としてオタカラコウを無視するわけにはいかない。湿原を多く有するこの場所で、遠くからでも目に入る黄色い花の集まりは、優雅でさわやかな秋の始まりを感じさせるからだ。
たたら跡〜根曲がり杉
入園してすぐに道端で見られる花は、アケボノソウだ。朝一番にこの花を見るのも嬉しい。清楚な色合いと、どこにでも無い貴重な植物で主に湿地帯でしか育たない。
それが道端で雑草になって生えているのだから、期待に胸が膨らむというもの。
最初のポイントは「まゆみ園地」と名づけられているだけあってマユミがたくさん実をぶら下げる。まだとても独特の赤い風鈴にはなっていないが、あと一ヶ月もすれば美しく園内を彩ることだろう。園内には200本以上のマユミが自生しているそうだから壮観だ。
幹にトゲのあるウコギが見つかった。葉の毛が多いことからケヤマウコギと判断できるようだ。ヤツデに良く似た地味な花と実をつけている。
中央園路を北に進むと右に「からまつ園地」が見える。この近辺には湿原が多く、さっそくオタカラコウ、ゴマナ、マアザミ、アブラガヤなど水の大好きな植物が並んでいた。
春にはザゼンソウやリュウキンカが咲く場所だ。
左に見える大きなトチノキに実がたくさんなっている。ダイコンソウやアキノウナギツカミ、サワヒヨドリも咲いている。イソノキの赤い実は良く目立つ。
標識を「六本杉」にとり、森の中に入っていこう。
大木のオオヤマザクラがどーんと鎮座して、その迫力には圧倒される。春には背景のヒノキの緑とマッチしてうすいピンクの花の色が素晴らしいと言われる。その頃、一度見に来たいものだ。
崩壊して良く分からなくなった「たたら跡」には、カナクソと呼ばれる溶けた鉄のかたまりが無造作に置いてあった。
気がつけば、周囲の樹木はブナにかわっている。じわじわと坂が急になって来た。でも過密に生えているわけでは無いので明るいのが嬉しい。
同じような樹肌でもアオハダは爪で樹皮がはがれるが、ブナはそうはいかない。そうやって自然観察を楽しみながら山道を登る。ブナの樹形が妙に曲がっているのは冬季の積雪によるものだろう。それもそのはず、この公園は鳥取県と県境をなしている。
足元にどこかで見たような葉が目についた。実はもう無いが、イワナシのようだ。今年は5月の連休に大山の鏡が成で見た花だ。
そして登りきったところを左に折れると、「根曲がり杉」、スギにしては珍しく曲がっている。これもこのあたりの雪によるものだろう。
ぶなの平園地〜熊押しの滝
公園なので、あちこちに標識が立ててあり、次のポイントまでの距離などがわかるようになっている。地図も持っているので安心だ。
相変わらず明るいブナの林の中を広い山道に沿って歩く。今度は下り坂だ。ここは山に来たようにアップダウンがあり、それなりに登山の支度をしておく必要がある。先ほど言ったように、公園と言えど売店や販売機は入り口しかないので、リュックの中はそれなりに準備がいる。
数年前はクマが出没して、注意書きが貼られていたことさえある。
「ボーズ原園地」は谷になっていて、テンニンソウがたくさんあった。これからたくさん咲くのだろう。咲いている花穂には、たくさんの虫、葉もぼろぼろに食われている。
テンニンソウ
新聞にも書いたことがあるが、もともと天人の着る羽衣はボロボロなのだそうだ。だからテンニンソウ。ミカエリソウとともに虫の大好きな葉だ。
熊押し滝まで、汗びっしょりになりながら進む。
ここまで水筒の水が空っぽになるほど今日は暑い日だ。日が差しているものの林の中は日陰で歩きやすい、が風が無いのでちょっとつらい。
滝の水は県境の人形仙あたりからの涌き水らしい。きれいなのだが一時話題になった、人形峠の残留ウランが気になる。
滝の周囲はツリフネソウ、アケボノシュスラン、テンニンソウ、ヨメナなどが咲く。もちろんここまで相当数のオタカラコウを見てきた。
県境三叉路〜千軒平
再び中央園路の最終点に下りてきた。普通の靴でハイキングの人がたくさんいる。
私達はここから本日のメインイベント、マツムシソウの丘までまた山歩きだ。
同じようなブナの林の道を20分くらい登ったあたりだろうか、足元に意外なものが群生していた。イワカガミに良く似た丸いつやのある葉、葉脈の模様が美しい、イワウチワだ。4月に来ればきっと咲いているだろう。鳥取県の山中では群生が時々見つかるそうだが、あまり簡単には見られない花だ。ツルリンドウが「私で我慢して。」と申し訳無さそうに咲いていた。
避難小屋を過ぎ、尾根筋を「もみじ平」までの道はアキノキリンソウやサンインヒキオコシの咲く日当たりのよい散策路だ。
このあたりですれ違う人達は、山歩きの格好をしているからやはりここは公園と言うより「山」なのだろう。
もみじ平では食事中の我が観察会の人に声を掛けられる。15人のパーティーだ、「やあ、広島には山が無いけえネ。」、おなかもすいてきた。
実をつけたウドやアキノキリンソウの黄色い花。
アップダウンを繰り返し、千軒平が見えてきた。アカモノの葉が目立つ。サワフタギは青い実をつけ、リンドウの花芽も目立つ。
オミナエシやクロバナヒキオコシに混じって、おお、マツムシソウが現われた。
丘に登るにつれ、その数は増す。
マツムシソウ咲く千軒平
涼しい風も吹いている。眺望の良い丘の上では見事な数のマツムシソウが咲き乱れていた。これほどたくさんの花を見るのは久しぶり。
森林公園MAP
下山していると、すれ違う女性達が「マツムシソウは咲いていますか?」と聞いてきた。いつも時期をはずしていたのだそうだ。天気といい、風といい、この人達にとって今日は素晴らしい思い出に残る日となることだろう。
下りたところに「おたからこう湿原」と言う場所まであるくらいだから、一番見ごたえのあるのがオタカラコウ。
岡山県下最大級のマツムシソウの群落も含めて、この森林公園で見られる。