QJYつうしん 139号

小春日和に桜のお花見 ヤブムラサキが実る 県緑化センター 広島市東区 平成11年11月20日

晩秋恒例のお花見

紅葉も一段落し、あとは冬の寒さがやってくる?

いえいえ、この時期にもちゃんと桜の花見が毎年出来る場所が広島にはある。

ポカポカと良く晴れたこの日、これならせっかくだから昼食はお弁当を持って、外で食べようと言うことになった。

「外」とは植物、特に樹木の名前を覚えるならオススメの場所、県の緑化センターだ。広島市内(東区福田町と安佐北区にかかる)にありながら、車でないと出かけられない不便さはあるが、その分いつも人が少なく、広大な敷地を一日たっぷり楽しめる。

この時期の「桜」というのは「十月桜」と「三波川桜」の二種類。もうニュースなどで秋の定番となってしまったらしく、多くのカメラマンが今日も撮影にやって来ている。

一昨年、藤が丸山に登るためここに来た時、その桜の存在を知ったものだ。これらの品種のサクラは春にも咲くもので、一年に二度咲くのでちょっと疲れ気味のサクラかもしれない。

それでも「三波川桜」は花の一輪一輪が大きく、春の豪華な咲き方に引けを取らない。やや小さめの「十月桜」は数多く咲くので撮影には向いている。

まるで4月のお花見

三波川桜(品種)

十月桜(品種)

レストハウスの前に車を置き、公園内の散歩に出る。暖かい陽射しが嬉しい。

県木の森方面〜長者山縦走路

初めてでも園内に「桜」の案内が貼ってあるので迷うことは無い。レストハウスから歩き始めると、路側に植えられたサザンカのピンクの花が満開で迎えてくれた。

サザンカとツバキの違いなど説明板を読みながら秋の桜の植えてある場所にはすぐ着く。小春日和の陽射しにミツバチやチョウが飛んでいるのを見ると、季節感が狂いそうだ。

ここ緑化センターには「サクラの森」があり、春は当然にぎわうのだが、秋咲きのサクラは知られていないため入場者も少ない。

この二種のサクラは並木を作って咲かせてあるので、今日のように満開状態だと季節を間違えそうだ。

そして更に進むと見事に紅葉したウリカエデの大木が、黄葉はタカノツメ、コシアブラ。

よしこのまま、藤が丸山方面の道に沿って進もう。ウバメガシが植栽してある。林道工事中の場所では右の藤が丸山には向かわず、左の長者山縦走路に入って見ることとした。瀬野川カントリーのゴルフ場が見える。

map1

これから日当たりの良い尾根筋を歩く。

風当たりも相当良かったらしく、尾根筋上の樹木がかなり倒れていた。

アカマツがほとんどを占める。根が浅いのだろうか。足元には狂い咲きのシハイスミレが一輪。ヤブコウジの赤い実。

展望の良い場所を見つけて昼食としよう。

おや、コバノガマズミに花が咲いている。春と間違えてるんだ。そんな樹木が他にも…。ネジキ、コシアブラ、リョウブなどは春の若葉を出している。

もちろん、ヤブムラサキの紫色の実がたくさん。サルトリイバラやシロダモ、カマツカが赤い実をつけている。

ヤブムラサキ

レストハウスまでの戻り道

尾根筋にだけジョロウグモとかコガネグモがいるのはどうしてだろう。他の場所は寒いからもういないのか。そう言えば、逃げ足も遅く、半分寝ているみたいな動きをする。カマキリものそのそと重たそうに身体を動かす。

テンの糞らしきものとかじられた食痕のあるムベの実があった。

バイカツツジの葉はまだ青いぞ。

オトコヨウゾメが実をぶら下げ、山道は松葉の敷き詰められたゴッパ道となる。(ゴッパとは松葉の枯葉のこと。)

そして驚くほどヤブムラサキが多い。ほぼ5m間隔で生えている。どの木にも実があり、山歩きにいろどりを添える。

しばらく行くと野鳥観察小屋が設置してあり、隙間から覗けるようになっているが、今歩いて来た方向なのでしばらくは鳥は来ないか。

ウリハダカエデの赤が強烈だ。

イノシシの掘った跡とタケニグサやベニバナボロギクなどの雑草が目に付くようになった。だいぶ下まで下りて来た証拠だ。

アカマツの林では、しつこく「キノコを採るな」、の看板が目につく。よけい探したくなるが。

カンアオイの仲間の葉はサンヨウアオイかミヤコアオイか、花が無いので判別不能。

タラヨウ

責任者は誰だ

下っていると、ヤマザクラの植栽150本と書いた看板がある。裏に「青年漁業者体験植栽」とある。

96年の植栽だそうで、瀬戸内海漁業・カキ養殖などは山間部の緑がその生育に役立っているとのこと。そこで漁業関係者が山に木を植える運動をしているのだそうだ。

しかし、どうも納得がいかないのはサクラの木だ。何でもかんでもサクラなのか?広島には広島らしい木があるはずだ。市内の公園を見ると外国産のアメリカハナミズキやアベリア、モミジバフウなどがずっとハバをきかせている。

そんな造園業者の差し出す樹木ではなく、広島県を代表する樹木を植えて、子供達に見せられないのか。

おそらくここは自然の樹木を伐採して、サクラを植えたのだろう。何をか言わんや、である。サクラなら比治山や黄金山にすでにたくさんあるではないか。

自然史博物館を持たない数少ない県として、もっと頭を使って欲しいものだ。

公園内の散策

ヤマシロギクがかたまって咲いている。ヤマコウバシやカナクギノキが黄葉している。遠くで子供の歓声がする。このあたりでも倒木が多く、近づかないよう注意書きが貼ってあった。

下に降りてくるほど樹木の標識なども多くなった。

モチノキ、クロガネモチなど見比べるのにいい場所だ。ヤマモミジ、イロハモミジも同様。

ここに来て、是非寄って欲しいのは「樹木探勝園」と名づけられた一帯で、名前を当てるようになっている場所。樹木に関するレベルアップ間違い無しの探勝ゾーンである。

今年の4月から、アスレチックコースが廃止され、不況の波がここまでも、と寂しいが、入場料無料の広い公園は、一度や二度の来訪では全部を見ることが出来ないだろう。

是非皆さんに訪れて欲しい場所だ。

広島県緑化センター・県立広島緑化植物公園 東区福田町166-2 (082)899-2811

12〜2月は日・祝が休園日、土曜日半ドン

3〜11月は火曜日が休園日

【編集後記】

11月14日「東区民まつり」が開かれた。

東区の自然マップを作成したメンバーでも何かをやろうと言うことになり、当日はドングリやササの葉を使った遊びなどを披露した。

スダジイやシリブカガシの試食コーナー、ビデオの上映、写真展示など。

ササの葉などは午前中で全部無くなってしまったくらい大人気だった。ここで披露したのはササの葉で作る「編みカゴ」、これに煎ったドングリを入れる趣向だ。

対応していた私の前に手話で作り方の教授を求めてきた女性がいた。もちろん手話は私には出来ないが、この人が作り方を学びたいと言おうとしているのはすぐに分かった。そして最後までがんばって完成されうれしそうに持って帰られたのは私もどれだけうれしかったことか。

メンバーの半分は自然観察会の会員だ。

みんな自然の中での遊びが好きで、結局自分達が一番楽しんでいたのかもしれない。