QJYつうしん 144号 休日は山にいます   2000年3月20〜22日

トントンミー

ハマジンチョウの咲く頃に  葉っぱ集めの旅 沖縄本島

ビオスの丘(1日目)

  今年はすでに2回目の沖縄である。1月には日本で一番早いサクラを見に来た。

本当はこんなことをしていられないくらい多忙なのだが、休日出勤が多く、その振替休日も溜まってしまって、年度内の消化が求められている。

快晴の沖縄は着いたとたん夏のような暖かさだ。午後3時ということで「ひとつだけ行くならここ」という場所「ビオスの丘」にやって来た。

到着が4時半なのにたくさんの見物客がやって来る。ここの売り物は園内のランの多さ。それも着生ランを船で廻って見る。

オンシジュウム、カトレア、デンドロビウムの類。
ヒノデフラミンゴ(着生ラン)

リュウキュウアセビやサガリバナのつぼみもある。サガリバナ(サガリバナ科)と言えば昨年、夜に咲くこの花を見るために沖縄に来た。カヌーでしか見られない西表島のセイシカ(ツツジ科)も。

苦労して見る花はいいものだ、しかし今度は何とか楽をして希望の花を見たい。今回の表向きの花は「つつじ」。

裏の本命は「ハマジンチョウ」(後述)である。

この日はゆったりと自然の植物園の散策。キダチチョウセンアサガオ、キキョウラン、シャリンバイ。

中城(なかぐすく)城跡(2日目・朝)

中城城跡のような場所こそ植物観察には最適である。樹木はていねいに名前札がかけてあり、沖縄らしい野花も見られる。

中城城跡

今回は樹木の葉を採集するのが目的だ。

近くにある旧家「中村家」の見学を済ませ、駐車場のある中城の裏門側から入る。広大な敷地に一面咲いているのがセイヨウタンポポ。見事な美しさだ。平地で邪魔者がいないので背が低い。が、綿毛を出しているものは風を受けやすいように上に伸びている。
リュウキュウコスミレ

カンヒザクラはもうサクランボをぶら下げている。

花をつけたシマグワの周囲にはリュウキュウコスミレ、ニガナ、ウマゴヤシなどの雑草が繁る。

ショウベンノキ、ガジュマル、タブノキ、ヤブニッケイ、モクタチバナ。

散策路を掃除している人たちがいた。沖縄の城は火山岩を利用して石垣を組む。その歩道をエンジンカッターで草刈をするのだから危険極まりない。で、不思議に思って器具を見せてもらった。良く見ると金属の刃の代わりにナイロン製のヒゲが出ていて、それが勢い良く回り、草を刈るようになっている。これなら石が刃に当たって危険と言うことも無い。なあんだ、でもアイデアだね。
ナイロンのヒゲのついたエンジンカッター

広くて半日たっぷり遊べそうな場所だ。

フクギ、クスノハカエデ、リュウキュウクロウメモドキ、クスノハガシワ、ゴモジュ、ゲッキツ、アカギ・・・。数え上げればキリが無い。ん?キリの木は見なかった・・・。

普通の図鑑に載っていなくとも、地方出版の沖縄植物図鑑なら必ず載っている普通の植物だ。最後にモクマオウの下に咲いているルリハコベの写真を撮って、昼食の沖縄ソバを食べることとしよう。¥400−は安い。
ヒンプンガジュマル(名護市)
ヒンプンとは戸口や門に立てる「ついたて」、魔よけの意味を持つ。

東村のつつじ祭り(2日目・午後)

沖縄ではつつじはあまり植栽でポピュラーな花では無い。ここ東村だけは植栽のつつじ公園があって、もう満開時期はすぎているものの2日前につつじ祭りを終えたところだ。

本土の各地で見られるヒラドツツジの公園の規模に比べるとちょっとお粗末だが。

ただ、このつつじ祭りが目的では無く、これを機会に周囲の植物を観察しようと言うわけだ。

祭りはもう終わっているのに、平日の今日もたくさん店が出ていた。ヒラドツツジ系ではケラマツツジがきれいだ。これとキシツツジを併せてヒラドツツジが出来たと言う。
東村つつじ公園

周囲はこの村特産のパイン畑が広がる。

沖縄本島の東沿岸をドライブしながら帰ろう。

道路沿いに立つ看板はここ辺野古地区住民の「普天間代替基地」反対の声。

途中、大浦地区でマングローブ林(県の天然記念物)の見学。オヒルギの花、メヒルギの胎生根を間近で見られる。

一日遊んだので夕食は北谷(ちゃたん)の街に寄ってみよう。北谷は若者のプレイスポットとして人気のある場所。

ちょうど大きな夕日が海に沈んで行った。

ライブハウス「島唄」(2日目・夜)

宜野湾に泊まるということで、夜は当然「島唄」に予約を入れる。ライブは9時からだ。ここは知名定夫さんのプロデュースする店で、沖縄のグループ「ネーネーズ」の本拠地でもある。ただネーネーズは昨年解散し、今は若い娘さんのNEWネーネーズに代わっている。

今夜はご本家ネーネーズの吉田康子さん、通称「やっこねーねー」が出演してくれる日だ。知名さんがバックで琴を弾き、3人が沖縄の三味線、一人が太鼓と抜群のテクニックの女性たちの唄が40分3ステージ見られる。3ステージとも曲を換えてくれる。ずっといてもいなくてもテーブルチャージはたったの1500円。
島唄にて

私のリクエスト「谷茶前」もにぎやかに歌ってくれた。安い値段で本物の唄と演奏を聞かれるのだから最高である。もちろん予約客で満席だから、一番前の席で聞けるのは幸せ。

佐敷町のハマジンチョウ(3日目・朝)

ホテルはラグナガーデン、こんな高級な所に泊まる気はさらさら無いのだが、片道2万円を超える沖縄が二泊三日で3万円、レンタカー付きで二人で7万3千6百円は笑いが止まらないくらい安いよね。

朝のバイキングをしっかりとって(1月の時は風邪気味でおかゆを食べていた。)、隣接の海浜公園を散歩する。上空には米軍のジェット機が勢い良く飛んでいる。そう、ここは沖縄、それも嘉手納が近い。

デイゴ、モンパノキ、クサトベラ、ノアサガオなどが歓迎してくれる。

そして今回の目玉ハマジンチョウ(ハマジンチョウ科)の咲く佐敷町へ。結局三日間快晴で、クーラーなしでは走れない。

ハマジンチョウの場所はすぐに分かった。沖縄の道路は分かりやすいし、標識も確か。

マングローブ林の一角に案内の地図なども掲げてある。オオハマボウやガジュマル、モクマオウに混じって緑の葉がきれいなハマジンチョウがツツジを小さくしたような花をつけていた。

ハマジンチョウ

初めて見る植物だ。

満開時期は過ぎていて、実になっているものも多い。

セイシカやサガリバナの時のような苦労はしなくて、車を停めた場所からすぐに見られる。

自生のクサトベラやメヒルギの林の泥面にはミナミトビハゼ(沖縄名トントンミー)がトントンと跳び歩いている。
佐敷町の保護区

斎場御嶽の神聖な森ではソウシジュ、ホルトノキ、ゲッキツ、ヤマヒハツなどを確認した。サダソウと言う珍しい植物も写真に収め、葉っぱの採取はほぼ完了。

キツツキの音を聞きながら、遠く久高島を眺める。10代の頃に来たとき、やはりここから眺めたっけ。極楽浄土(ニライカナイ)はその彼方にあると信じられている。

浜辺の茶屋(3日目・昼)

一度寄って見たかった所がある。

岩戸佐智夫著 旅の雑学ノート 「沖縄」はこの店の話から始まる。稲福米子さんの経営する「浜辺の茶屋」だ。「潮風香る喫茶店」と彼女の名刺に書いてある、そのとおり。店は豪華とは言えない素朴な造りだが、眼前の海の光景の素晴らしさ。

沖縄独特のリーフと青い海。

丁度運良く、今は大潮の干潮とあって、アーサー(海苔)採りの人たちが浜辺でしゃがんでいる。

中には近所の奥武島からやってきて、昼食もとらずに働いているおじさんもいた。女性が自分の採ったアーサーを少し食べさせてくれた。海の香が口の中に広がる。

それよりこの喫茶店から見る、落ち着いた風景は何なのだろう。客は皆窓に向かって並んで座っている。私たちも同じようにコーヒーとホットサンドの昼食を頼んで、ぼけーっとここに座る。

こんな柔らかな空気は初めてだ。

ヒーリングスポットと言えば今風だが、「癒しの空間」がそこにはあった。

テーブルの上のメニューには毎週のようにあるライブの予定が書き入れてある。「やちむん」(岩戸さんの本にも良く出てくるグループ)、「吉田康子姉」の名前まであった。なんだかとても身近に感じられるものだ。昨晩のステージで歌ってくれたオリジナルの曲なんかを聞かせてくれるのだろう。

明日からはまた会社に戻って仕事の毎日。それは仕方ないが、そうだ、またここにやって来よう。