QJYつうしん 休日は山にいます

6月24日

カンコさんとカンザブロウくんが お出迎え  クルーザーで行く

宮島の浜辺にて 2001・06・24

 

アンペライ

初めてお目にかかる植物は毎年毎年増える一方だ。植物好きの友人が多いから、そのおぜん立てまでしてくれる。

 

昨日は西城クロカンパークに勤務するMさんが休暇なのにわざわざ住居地の庄原市から出てきてくれて、クロカンパークや周辺を案内してくれた。感謝感謝、持つべきものは友人である。

 

西城町の貴重な植物は彼が守ってくれている。

こんな花がありました、と教えてくれる植物名はとにかく本来広島には無いものばかり。

普通の図鑑では分からないので、頭が混乱してしまう。そんな名前の植物あったっけ?というわけだ。彼が頑張っていてくれる間は一安心。見落としそうな小さなランなどもけっして見逃さない、いい目をしている人だ。

 

 

で、本日声を掛けてくださったのは、府中町のYさん。クルーザーを持っているから宮島まで植物を見に行こうと言う。

中国新聞社の「広島県の薬草」(神田博史著)という本の写真は全部この人が撮っている。私にとっては植物の話で盛り上がるこの上ない相棒でもある。

朝から雨のこの日は天気予報では午後から晴れるはず。

 

10時過ぎに停泊地を出て、まずは無人島・峠島に向かうこととした。

海は無風状態、鏡のような水面であるが、船はバンバンと波を蹴って威勢良く飛んで行く。天井の窓から首を出し、実に気持ちの良いクルージングだ。ちょっと大きな声でしゃべらなければならないのが大変だが。

 

峠島での目的はアンペライの確認である。

アンペラとはポルトガル語を語源とする言葉で「敷物・むしろ」の類のようである。恥ずかしながら私はさっぱり知らなかった。

このアンペラを編んだイというわけでアンペライ。別名をネビキグサと言うらしい。Yさんが引っこ抜いていたが、特に根は変わっていない。

温帯〜アジアの熱帯の湿地に生えるカヤツリグサの仲間だ。

アンペライ 

 

特に美しい花を付けるわけでもない。アンペラは麻袋のような雑穀などを入れるための袋に利用されたようだ。

峠島の桟橋に船を停めるとハマナデシコがたくさん出迎えてくれた。小動物の骨はこの島に多いウサギらしい。

ジャングルのような樹林をかき分けて、湿地の中で見たその植物は人の背丈ほどもある、太いきれいな緑のイだった。

名前がその用途を示す植物だから、覚えやすくしばらくは忘れることが無いであろう。先日から私のほうがYさんを案内していたのだが、この植物で完璧に受身になってしまう。

 

「恐れいりやした。これは知らなかった。」

今日はYさんにすべてお任せだ。

 

 

宮島一周の船旅

さらに船は宮島の大鳥居の前を横切り、適当な浜に乗り上げて探索をすることになった。

宮島は観光地でもあるが、島の半分以上は手付かずの自然溢れるジャングルでもある。神様の島として原始林がそのまま残り、これだけの低海抜域でモミノキやツガが育っている不思議な植物相を示している。

  Yさんとクルーザー

出発から1時間、寄り道をしたのに随分早く着くものだ。時間がとても有効に使える気がする。

ズボンを捲り上げて海水に浸かって下船しよう。浜に乗り上げるとこれから潮がどんどん引くので、船を海に戻せなくなるのが怖いからだ。

浜を覆っている鮮やかな緑は?

  ハマゴウ

なるほど、見事にハマゴウが生い茂っている。これが咲いたらさぞきれいなことだろう。小さな谷川もあるジャングルの中に入ってみよう。

ナンゴクウラシマソウやアオテンナンショウ、シロダモ、イヌビワ、クスノキなどにハマニンドウが金銀の花をつけて絡んでいる。

浜辺にはハマエンドウやレモンエゴマ、ハスノハカズラも花を見た。

どの植物も元気がいい。

 

  ハスノハカズラ

カンコさんとカンザブロウくん

ふと気がつくと暑い夏の陽射しが。

さっきまでの雨のおかげでまるで今、西表島のジャングルにいる感覚だ。

高い樹冠から鳥の声がして、足元からシマヘビが這い出す。こいつが頭の上からどさっと落ちてきても不思議はないぞ。

 

細い小枝はカンコノキ。そばにはカンザブロウノキがまるでデートしているかのように並んで立つ。どちらも暖地に生える、葉の形に特徴のある樹木だ。二人のカンちゃんにはあちこちで遭遇する。

 

宮島の浜には当然のように小さな神社が建ててある。この浜辺を歩くだけでもいろんな植物に出会えるから嬉しい。

ミミズバイはまるでキョウチクトウのような細い葉をしていて、青い実がたくさん。

 

  ハンゲショウ

おや、この赤い実は?

ヤマモモだ。枝を重たそうにたゆらせて、丁度食べごろのヤマモモが鈴なりになっていた。大木だ、隣にはまったく実をつけていないもっと大きな木、そうかオスとメスが並んで生えているのか。

 

きれいな砂浜のヤマモモは持ち帰ってみたい。さっそくビニール袋に取り入れを開始。その間にYさんは停泊中のクルーザーの様子見に。

はは、お客さんはのんきなもので、収穫の喜びに浸っていた。

 

 

丁度昼食時間なのでヤマモモの木の下でお弁当を広げよう。時々頭に熟したヤマモモが直撃してくる。こんな銃弾に撃たれるのは大歓迎。

クロキも実になったばかり。ウラジロガシも大木だ。その根元に大きなアカテガニがちょこちょこ顔を出す。

 

ハマニンドウ

 

海水浴の家族連れ

クルージングしながら小さな浜を見ると、シカの親子連れが歩いていた。のどかな一日だ。観光地とは思えないのんびりとした無人島の感覚、浜辺はどこもプライベートビーチだ。

 

次の浜では川が海に流れ込む。ミヤジマトンボの生息地として有名な場所だそうだ。ここではイワタイゲキを観察出来るはずとYさんが教えてくれる。

ここでも浜辺に神社が建っているのを見た。そばにはサカキが花をつけている。タイミンタチバナも見られた。

  イワタイゲキ

流れを渡って、あったあった、イワタイゲキ。私カンゲキ。良く似たノウルシとの違いを図鑑で確認しなければ。それにしてもきれいな流れだ。

ここにもハマゴウの群生がある、花も咲いているぞ。山の奥に入る道もあった。弥山を越えてここまで来るのはさぞ大変だろう。

クルーザーの便利なこと。もっとも燃料費がかさばるらしく、コインを撒いて走っているようなものだとさ。

 

 

カヤツリグサの仲間のヒトモトススキが固まって生えている。初めに見たアンペライのように丸い茎ではなく、手を切りそうなざらついた葉。

この浜にはやはりクルーザーで家族連れがやって来ていた。子供達とお母さんは水着姿、今朝の雨からは想像出来ない準備の良さではないか。

こっちも暑くてそのまま水の中に浸かりたい。船からの乗り降りと川まで渡って、靴はもう役に立たない状態。カメラを持っていなかったら、気持ち良くザブンと横に倒れるのだが。

 

今まだまだ午後2時を過ぎたところ、3時には帰る予定だ。何故なら3時過ぎがこの日の干潮で、入港が難しくなるのだそうだ。

がんねの海水浴場そばを通り、楽しかったクルージングは終了した。遅い出発と早いお帰り、船を使えばこんなに効率良く移動できる。

沖縄では良く見るモロコシソウがまだつぼみだったのがちょっと残念、でも宮島が北限だろうね。

モロコシソウ 

 

【編集後記】

芸北町のある家の屋根にジキタリスが植えてあった。もちろん今では珍しい草葺の屋根のこと。

東北地方では当たり前のようにある光景だった。「芝棟」と呼び、草葺屋根の上に芝土(クレ)を敷く。東北の冬の寒さに耐える、根の強い多年草が屋根を補強するわけだ。

ススキなど実用的なものからアヤメなど装飾的な意味合いに変化して、次第に屋根を満艦飾に彩るようになっていった。
屋根の上のジキタリ

芸北のジキタリスはどんな意味を持つものだったのだろう。咲いた花を下から見上げる、粋な家主のいたずらっぽい顔が想像される