QJYつうしん164休日は山にいます
2002年1月20日

花の季節が待ち遠しい展望の山歩き

    大岩テラスのオープンカフェ

呉市観音山(428m)〜三石山(449m)

くぬき観音入口

自宅から市内に出るためには牛田山から流れ出る二又川に沿って車を走らせる。ふとこの川土手に目をやると白いスイセンがもう咲いていた。

暦の上では今日は「大寒」、駅伝シーズン真っ盛りだ。広島では都道府県対抗男子駅伝が開かれる日だ。しかし、午後から天気が悪くなるという予報なので近場で気分の良い山歩きが出来ないものか、と考えてみた。

出来るだけ展望の良い山にしよう。

熊野町の呉地ダム入り口を通過し、県道174号を南下すると程なく呉市に入る。そして1キロ行くとマツダの関連工場「潟^キグチ」だ。

入口

振り返ると大きな看板で「くぬき観音入口」としてある。とても車は通れそうもない細い道が100メートルくらい続き観音堂の広場へ導いてくれるそうだ。軽自動車なら入っても大丈夫かな。

しかしここは歩いてみるほうがいいようだ。

アカマツ林に白いビニールテープが張ってあり、松茸山であることは明解。

ヒサカキ、アセビ、ウツギ、コバノミツバツツジ(以下コバミツ)の林、林床には驚くほどの数のシュンランの株。

 花芽を抱いたシュンラン

ネズ、ヤマザクラ、クロキ、リョウブ、どれもこのあたりでは普通の樹木だ。

足元のシダ類はシシガシラ。

5分も歩けばツガ、ヒノキに囲まれた観音堂が鎮座する広場に着く。シュロまで植えてある。

 くぬき観音堂

なるほどここまで車を入れてくださいと言わんばかりだ。それにしても狭い道だったぞ。途中にマツが通せんぼしているし、やはり歩いて正解だった。

登山道〜観音山へ

登山道入口にはミズゴケが茂っている。これからコシダとウラジロの山道。

1メートル幅だが歩きやすいようにブロック段の積まれた道にイヌツゲ、イヌザンショウなどが覆いかぶさるように茂っている。

タカノツメ、リョウブ、確かにアカマツが多い松茸山だ。左側に白いビニールテープ、これがあれば道に迷うことも無いか。

山道を登るにつれて、明るくなってきた。天気は大寒とは思えない暖かい日差しのうす曇り。

コシダに囲まれた岩場に出た。ネズが多い。どれも形が良くてクリスマスツリーのようだ。気がつくとずいぶん見通しが良くなった。松枯れのアカマツが多い。

更にコシダ道。

道幅は人がひとり通れるだけのものだが、歩きやすくて良く整備されている。

イヌツゲ、コバミツ、オオバヤシャブシそう言えばソヨゴが目に付き始めた。赤い実はサルトリイバラかソヨゴ。足元には相変わらずシュンランが続く。春の花芽をしっかり抱いている。

谷を越えて右手に大岩、コバミツとシュンランは春にはたくさん咲いて山歩きを楽しませてくれることだろう。

出発から30分で「くぬき観音」のある山頂広場に到着する。巨大な岩が点在する山頂、からだもすっかり暖まり、気持ちの良い山歩きだ。

展望テラスの山頂尾根

当然「くぬき観音」に御参りをしなければ、で、「くぬき」って何だ?

 くぬき観音・祠

それは祠のそばに立ててある看板から推察するに「苦抜き」と言う意味であることが分かる。今から800年前というから、鎌倉幕府の時代に最初に奉られた観音様は江戸時代になってたくさんの人が訪れ、「ここで丸い握り飯を食べると苦を逃れ福運に導かれる」と信じられたと言う。

 くぬき観音・ご本尊

おお、丸い握り飯は無いが丸いお饅頭ならあるぞ。適当な時間で登られて、大岩が寄り添うように重なった隙間に祠があって、信仰の対象になった。何か当然の成り行きだったのだろうね。

自分はここに登って来た、いったい何人目の人間なのだろう・・・などと思いながら。


 石仏

南側の岩のテラスの上に上がってみよう。

これを直進すると押込峠への下山路にもなる。周囲の岩肌にはイワタケの赤ちゃんがびっしりと生えている。そこらじゅうに石仏、いや人形か?彩色された小さな石像が置かれていて、周囲の雰囲気も何か神聖なものを感じる。


更に戻って東のテラスからは野呂山、灰が峰を展望。ネズ、アカマツ、コバミツ、クロキ、ヒノキ、アベマキ、ヒサカキ。正面の山の向こうは呉地ダムのはず。暖かい日差しと無風の春のような一日。

観音様の大岩についたイワタケはいったい何十年経ったものなのだろう。


 イワタケ

昼食の用意をしていないので、ここのテラスでお茶にしよう。まるでオープンカフェの独占状態。

中央のテラス、北のテラスからは西側の展望、本庄貯水池や絵下山方面が良く見える。大岩をよじ登ると360度の展望だ。

こんな素晴らしい山が無名だなんて。





三石山を経由して下山

ここで折り返そうとも思ったが、せっかくなら人が余り通らないだろう三石山まで行き、縦走路を北にとりそのまま下山してみよう。

くぬき観音登山道はいかにも万人向けの石段参道であったが、これから先の尾根筋ルートは普通の山道と考えたほうがいい。

 向こうに絵下山と本庄貯水池

ヒサカキ、アカマツの林は変わらないし、シュンラン、コバミツは当然多い。アキノキリンソウの咲きがらやヤマモモの木など新しい植物も増え、尾根道は快適に続く。

何より明るく暖かいのがいいや。

ネズが群生している。足元にツルリンドウ、イヌツゲ、シラカシ、ソヨゴ、クロキ・・・、落ち葉の山道はふわふわしていて気持ちいい。あまり登ってくる人が多くない証拠だ。

夏から秋にかけては見通しも良くないし、クモの巣を払いながらの山歩きは辛いかも知れない。しかし春には素晴らしい尾根歩きが出来る山だ。

四つの大岩を通りすぎ、くぬき観音広場から20分で三等三角点のある三石山(449.2m)まで来た。さらに2〜3分でここにも展望テラスが用意してある。呉地ダムの水面がかすかに見えるぞ。

 三等三角点


倒木も多くてちょっと歩きにくい場所もあるが、全般的にはこちらのルートのほうが山歩きらしい。熊野高校が眼下に見え、運動部の声も聞こえ始めた。岩に登ってサルトリイバラの赤い実、ネズやウラジロノキを確認。

左右に道が分かれるが、これは右にとり、更に進むと中国電力の鉄塔を通り過ぎる。

ここまでにも途中で展望のきく岩場があった。そしてコシダの山道、タチツボスミレの葉を確認し、ネズミモチのくすんだ黒い実、ヒイラギの幼木、カクレミノなど。

 三石山を見る


三石山と名乗るだけあって、大きな岩が特徴の山だ。

滑りそうな急坂を下ると、堰堤に出る。

車の走る音が聞こえてきた。

水の流れ。ハンノキだろうかヤシャブシ風の実が落ちている。

アケボノソウのロゼット。トウゲシバの緑。結局この山歩きで出会う登山者は一人もいなかった。

車が往来する県道を見下ろせるのが「姫白観音堂」、ここは熊野町になる。残念ながら特に由来を書いたものが無く、歴史や「姫白」という名前のいわれがまったく分からない。

 姫白観音堂

コンクリートの階段を50メートル下れば先ほど通った県道174号に出る。

あとはこの県道を1キロメートル、先ほどのタキグチの工場まで歩こう。歩道の無い道路を歩くのはちょっと疲れるが、15分の我慢くらべ。都会地のように車がひっきりなしに通るという交通量でも無い。

ぐるっと一周2時間ちょっとの楽しい山歩きだった。広島に戻った午後3時過ぎには雨が降り始めていた。先程までは夢でも見ていたのだろうか?

夢で無い証拠にコバミツとシュンランの時期に来なければ。

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