QJYつうしん  休日は山にいます QJY173

水晶山は花盛り

市街地の中の山歩き2003年4月12日

呉市広町 白岳山(358m)

懐かしい町

呉市広町、ここに住んでいたのはもう35年前、思い出深い学生時代を過ごした町だ。東洋パルプ(現、王子製紙)の工場の白い煙と強烈な匂いも思い出す。

呉の市街電車が廃止された頃だったか、免許を取って下宿のおじさんに車を借りて夜になると長浜・小坪方面をドライブしたものだ。

久しぶりの小坪地区。あの頃は沖を泳ぐスナメリも見ることが出来た。

その小坪から広に山越えの道がある。「おおしおスルメ」の工場に抜ける道だ。ザイフリボクがいっぱいの花をつけ、咲き始めたコバノミツバツツジが崖をピンクに染める。あらためて山を見るとピンクと白が点々としている、これらの花だったんだ。

本日登る予定の白岳山は地元では水晶山として知られている山で、周辺にある採掘場で方解石の結晶を採取できることは周知の事実。子供達は「黒水晶」などを見つけることが自慢の種だったと聞いている。最近の子供達でもこんな遊びをするのだろうか、いや簡単に危険な場所には入れないようになっているはずだね。

白岳山の登山口はどこにも看板などが出ていない。ちなみに登り始めようとした時に地元の人に登山口を確認したら、別の場所を教えられ分からなくなり、ちょっと時間をロスしてしまった。

峠の部分に車を置き、危なっかしいのり面に沿って上がって行く。20メートルほど進み右に折れてからは道なりの登山道となる。

それでも途中に案内札があるわけではない。

竹林を抜けて

  朝から雨がパラパラと降っている。昼にはあがる予定だが、こんな天気でこの山に来る人はいない。山道はヤブツバキの花が点々と落ちて、腐葉土のふかふかの道だ。

  尾根道まで上がると竹林となる、このタケがちょっと細めのハチクであることに気がついた。タケノコのシーズンにはイノシシが掘り返すことだろう。

  ウラシマソウが立ちあがり、右手には瀬戸の海が広がる。おや、これはヤダケのトンネルだ、傘をさす必要が無いのだが、タケに触れると上からしずくがパラパラと落ちてくるのでやっかいだ。
ヤダケのトンネル

  竹林が終わると落葉樹の雑木林が待っている。見事なコバノミツバツツジの群落、全山をピンクに染めている。足元にはヤブレガサが傘を開き始めた。ナルコユリだろうか、多いぞ。ヤマザクラもザイフリボクもあるのだが空の色にとけ込んでしまって良く見えない。はらはらと白い花びらが落ちて来る。
ヤマザクラ

  サルトリイバラが咲き始めているぞ、可愛い花だが、トゲが多くて夏場はやっかいなことだろう。
ザイフリボク

第1ピークは アカマツ の木

コバノミツバツツジのジグザグ道にはヤマツツジも見られる、ヒメヤマツツジも足元に咲いているのを見る。ヤブコウジやテイカカズラの山道、急勾配でしんどいはずなのだが、これだけ花が多いと苦にならないから不思議だね。

ヒメヤマツツジ

ホタルカズラの若い芽も見られた。

ヤブレガサ
ウラシマソウ

それより、ここの山道はアベマキの枯葉で覆いつくされているぞ、ふかふかのクッション道。ウグイスカグラも赤い花を見せてくれる、常緑樹はトベラ、ヒサカキ、カクレミノ。

ちょっと歩いては雨しずくを花びらに乗せたコバノミツバツツジを振り返って見る、これだからちっとも進まない。勾配がゆるくなったらヒノキ林になった。道には赤いテープが巻いてあるのだが、帰りにもちゃんと確認できるのだろうか?

コバノミツバツツジ

今日のように太陽が出ていない日は直感的に道を誤りやすいから気をつけなければ。特にケモノ道もありこの赤テープが頼りだ。

アカマツがたくさん見られるようになった。足元の落ち葉が周囲の樹木によってどんどん変化する。やっと落ち着いた尾根筋道になった、と思ったら、最初のピーク地点に着いたようだ。

石標が2本立ててある。土が乾いているのでここでお茶にしよう。市街地が近いのと選挙があるのでちょっとうるさい。

第2ピークは ヤマモモ の木

このあとはアップダウンはあるものの、尾根筋の気楽な山道となる。しかし赤テープを見落とすことは出来ない。

この緊張感が山歩きの良いところだろう。
シュンラン

再び落葉樹の山道が嬉しい。野鳥の声、ウソ(野鳥の名前)が鳴いている、本当だよ。

コウヤボウキの若葉、先端に昨年の咲きガラをつけている。イタドリが何故か山道に。花芽をつけたコバノガマズミ、まだ咲いていないコバノミツバツツジが見られるようになった。ちょっと標高が上がっただけなのに。

サルトリイバラ

サルトリイバラは相変わらず多い、でも花が可愛いのでこの時期はいやにならないよ。ヒサカキは雄花も雌花も確認できた、その隣にはヒサカキ嬢と仲の良いシャシャンボ君、ネズミモチのすべすべした葉もある。

そして第2ピークは10分でやってくる。

ヤマモモの木が印象的、ザイフリボクの幼木が見つかった。

この第2ピークではいきなり左折する、そのように赤テープが案内してくれる。植物観察をしながら山歩きをすると、つい下ばかり見て歩き、テープの指示に従うことがおろそかになってしまうから危ない。

クロキにも花が咲いていた。

クロキ

おや、まだら模様の樹皮がある、カゴノキだ。ヤブニッケイの葉を一枚戴いて匂いをかぐ、さわやかな香りだ。すぐそばにはクロモジが、これは枝を一本口にくわえさせて戴こう。すーっと爽やかなミントの香り。

そしてアカマツの並ぶ第3ピークは5分でやってきた。

頂上とその先の植物

ここからも赤テープを頼りに進むと先程よりは視界の開けた歩きやすい山道だ。足元にはシハイスミレがちらほらと。

イヌツゲやつる性植物が目立ち始める。スイカズラのようだ、テイカカズラはずっとある。木立の中をさ迷うように歩く山歩き、帰りに迷いそうなポイントでは自分もテープを貼って進むのが良いようだ。

シハイスミレ

ナルコユリだろうか、線の細いユリの幼葉が多く見られる。ツリガネニンジンも生えるようだ。ナガバモミジイチゴは点々と咲き、ビロードイチゴもある。

程なく山頂の三角点、見晴らしがいいわけでは無い。ホタルカズラかな?という葉も見られた。

スイカズラのつるを確認し、もっと先に行ってみよう、この山頂ではあまり面白くないから。
ワラビ

かなり開けた場所まで来ると、太くておいしそうなワラビが生えている。オオバヤシャブシの大木の下で昼食としよう。

大きな木が立ち並び、見とおしも良い場所、鳥の声も聞こえる、エナガらしき尾の長い鳥が何羽か通り過ぎていく。

もっと良く晴れていたら海がきれいなことだろう。工業地帯の呉市広町にあって、これだけ静かな山歩きが楽しめるなんて驚いた。
山頂の三角点

ただ、あまり人が来ないようで、最後まで案内看板がまったく見当たらない。コンパスと赤テープに頼る山歩きはたまには好いものかもしれない。たとえ道に迷っても周囲は町だから安心だ。

山歩きはこうしてある程度神経を尖らせる必要があることで頭の中を柔軟にしてくれるのかも知れないね。


【編集後記】

  場所ははっきり言えないが、吉備SPタイプのヒトリシズカも見つかった。

  小豆島などにあるオシベがちょっと長い種類。