もうすぐセロ村というところで、突然後から何かに呑み込まれた。なにがなんだかわからない。真っ暗でぬるぬるしてなま暖かい感触と鼻をつく刺激臭に混乱する。このままでは消化されてしまうのでなんとか這い出ようとしたが無理だった。
……仕方がない。ここでカエルだかトカゲだかのウンコになるぐらいならレッサーファイターになってやる。わたしは腰に差したダガーに手をかけた。やりたくないけど、ホント仕方ないもんね。
と、いきなり目の前が急に明るくなった。コーラリックが腹を割いて助けてくれたらしい。ぬるぬるのべたべたが気持ちわるいが、まだクレリックのままで生きている。ああ、ありがとう。
かつて族長のお姉さんが村長と待ち合わせていた場所(らしい)に差し掛かったあたりで、見たくないものを見ることになった。村へ続く道の真ん中には、完全武装で戦闘態勢に入ったバーナード達――予想通りレイは知らなかったらしく、一人オロオロしていたが。
ジャロスは例の邂逅をしっかり覚えていたらしい。あんな遠目で、しかもほとんど一瞬の出会いだったのにね。恐るべし、女好きの記憶力。だから最初に会ったとき、妙にからんできたのか。
夢見石の迷宮に行ったことで、わたし達があの時の目撃者だったと確定して、ここで待っていたというわけ。こうなっては説得もきかないよなぁ。飲み仲間と戦うのは嫌なんだけど。別にユートピア教に敵対しているわけじゃないしさ(向こうはそう思っていないようだが)。
彼らはいつものユートピア教みたく、自己欺瞞に満ちた理想論を振りかざして来なかった。でもやっぱりムカつく。その透けて見える負け犬根性が。
てんでんばらばらに、説得だの呼びかけだの宣戦布告だのをした後で戦闘開始。レイは中立を宣言して、両陣営にヘイストをかけてくれた。思い切ったことする人だ。
やる気がおきないせいだろう、わたしはあっさりスコルのホールドに引っかかった。すぐさまラッキーが解いてくれたが。……やっぱりやる気でないんだよね。
ジャロスが倒れた。妙にあっけない。なんか死んだふりしているくさいが、今は先にすることがある。毎度お馴染みヘビをばらまいて、バーナードとスコルの動きを封じる。スコルはヘビの毒牙にかかって、ばったり倒れた。ヘビ万歳。ほぼ同時にバーナードも倒された。
ジャロスはやっぱり生きていた。近付いたら「降参、降参」と両手をあげた。ユートピア教ではなく、スカルシ村の回し者だったらしい。彼は他の連中に任せて、スコルのところへ急いだ。今すぐ解毒呪文をかければ彼は助かる。――わたしは、迷わず呪文を唱えた。
だって、頭にくるんだもの。自分ばっかりが辛くて苦しい、どうせお前達にはわからないだろう、って顔で。死んでもしょうがないとか思っていそうで。こんなつまんない宗教にはまっちゃって。
だから生かしておいてあげる。くやしかったら、またおいで。ユートピア教のためでなく、それが理由で来るのなら、ちゃんと相手してあげるから。
レイとは口裏合わせをしてバーナード達が殉死したことにする。村に入ってすぐブリジッタがいた。薄々何かを感じていたのだろう。我々が敵対したことに気づいていながら、黙って話を合わせてくれた。
バーナードを霊安所に安置しようとしたら、バルジに会った。なんだ、やっぱり無事だったじゃない。その場で我々がいなくなった後の顛末を聞き、思わずトールと顔を見合わせる。その時二人の心はひとつだった。
ダメダメじゃん。
神殿でマグロになっている駄目騎士には、生き返ったばかりだし人目もあるので一言だけにしてやった。
バルジから我が名付け子ヴァイオラちゃんのロッドを受け取る。しかしゴードンってば、直接渡しにくればいいのに。名付け親としては、彼女が幸せに暮らしたかどうか気になるところ。もう、会えないんだよねぇ。これが形見だと思うとよけい大切に思える。
身支度した後、トップ会議を招集。やれやれ、結局ブリジッタは村長候補を辞退した。これで振り出しに戻る、か。いまや村長候補はベルモートのみ。大丈夫なのかね。三年間は面倒見てやるけど、その後のことは知らんよわたしは。
コア殲滅の報告と遺品の受渡し、バーナードの葬儀について打ち合わせて閉会。
その後ベアード親父とグリニードに現状を聞く。
狩人たちは現状維持。しかし悪化していないなら上等だ。こういうのは時間かかるもんだしね。村の中に問題はないようなので、安心してフィルシムへ行けそう。
夜、トールと一緒にツェット爺さんのところへ顔を出す。入れてくれないのはわかっていたけど、念のため。……ほんと言うと、アドバイザーとしての権限で聞くという手もあったのだけれど。今回は大人しく引いておいた。まだ、その時期じゃない。
トールに2000gpのブレスレットを渡す。
魔晶宮についてはほぼ予想通りの答えが返ってきた。しかし巻物の存在を知っているとは、恐るべしシーフギルド。手を出さなかったのはヤバイネタだと思ったからかね。それとも修理法を知らないからか。スルフト村で目撃されている事も考えると、それがらみの話があったのかもしれない。
(S)ティバートの消息とセロ村コア増設可能性低下の報告
今後のために、ツェット爺さんと大司祭にわたし達に対する世間の評価を問い合わせてみた。こういう各階層での噂は事前に把握しておかないとね。
それによると、
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□ パーティに対する世間様の目 □
- 王宮
- 使い勝手の良い善良な冒険者(←笑える)
扱いは難しくとも潰しが効く
フリーな騎士級戦士や司祭の卵がいて狙い目
他国の者も狙っている
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- 神殿
- 大司祭(代理)と問題を起こした者達
司祭クラスが居る実力者
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- 町中
- 相当の実力者
おもしろいヤツら
男色やバイ、恋愛関係のもつれが複雑に絡み合ったラヴラヴファイヤーパーティ
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- 盗賊
- 危ない連中(←よし)
危険なことによく首をつっこむ
色々問題を抱えていて関わらない方が良い
スカルシ村と敵対者が居る
貴族の非嫡子がいる
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だそうだ。比較的好意的でそれなりに高い評価をうけている。
このイメージを保持するべきだろう。
ちなみにわたし達への支援及び敵対勢力についても訊いてみた。これも知っていると知らないとでは大分違う。
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□ パーティ支援&敵対勢力 □
- 支援勢力(☆1〜5)
- クダヒ貴族 ☆☆:主にアベラード家&ロールバレラ家
クダヒ神殿 ☆:一応は、ということか
フィルシム王家 ☆:上に同じ
フィルシム神殿 ☆:上に同じ
スルフト村 ☆:コーラリックとコア潰しの分
セロ村 ☆☆☆☆☆:但し領主不在で影響力無し
パシエンス ☆☆☆☆:ラッキーは愛されている
トーラファン ☆☆☆:興味深い研究対象だからか
ウェアタイガー ☆☆☆:対人間ならこれが最高評価?
大司教 ☆:神託を受け継ぐ者として(実際は★…どうせ他国の田舎者だもんね)
マコちゃん ☆☆☆:あくまで私的評価(騎士としての公的評価は☆…ま、こんなもの)
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- 敵対勢力(★1〜5)
- ロウニリス ★:目障りな奴ってこと(実際は☆☆☆☆☆…これが信頼関係)
スカルシ村 ★:「潜在的な敵対者」、で済んでいる
ユートピア教 ★★★★★:不倶戴天の敵らしい
ウェアウルフ ★★★:敵対的から撤退中?
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- その他
- アンプール家 −:表だっては何も無し(★★★★…内部工作で切り崩し中らしい)
ラストン −?:表だっては何も無し
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まあこんなものか。