1.各国概要
- ラディス
- 気候が穏やかで肥沃な土地に恵まれている。農業・漁業・商業がバランスよく発達し、治安も良い豊かな国である。元々商業都市群の戦時同盟(ラデリース都市連合)だったものが、そのまま国家として生まれ変わった。そのため、国内の交易路として発達した諸国最大の街道網を有している。
現在の領主はアルヴァ・ウォーレン。数年前に父親のウォーレン・トルより代替わりしたばかりで、いまだ30前と若い。
名産品:ソル湖の紫貝(装飾用) - ヘルン
<諸王国> の中で最も歴史の古い国。<古の王国>の名残を領主一族の中に見ることができる。一族は強い先読みの力を持つ者を数多く輩出しており、領主は代々「見者の主」たる「サイリン」の号を名乗る。
南端の港街ケストリアは<諸王国>最大の通商港であり、情報の集結地でもある。ここには唯一の魔術学院(通称リドルカレッジ)が存在する。
現領主はサイリン・レーデルム。先読みの力は歴代領主の中でも随一といわれている。
名産品:織物、ワイン(白)- エルダノール
- 数々の戦乱に彩られた軍事大国。内乱・外征の数は随一。<古の都>に隣接する首都サザビアは、<都>の石材を使って築かれた城砦都市である。<都>に彷徨う霊や、内乱で滅びた者達を慰めるため、年に2回の鎮魂祭が領主の手で執り行われる。この国独特の成人の儀式は、大変厳しいことで有名。
現領主はコウレン・デル=レイ。妹のシーレン・デル=レイは、魔術学院で唯一の女性導師 である。跡取りのアシルは現在出奔中。
名産品:魚介類、エール - ロイダル
- 北に草原地帯、南に大森林を有し、種々雑多な動植物に恵まれる。北部は放牧が、南部は林業が盛んである。地域住民は全体的に小柄。
この国の警備隊は剽悍なことで有名で、特に森林警備隊「ブルーアロー」、草原騎馬隊「レッドランス」は別格である。また、この両部隊長が犬猿の仲である事もよく知られている。
現領主はヴェレス及びエラリー夫妻。
名産品:香料、木工品、馬 - オスタート
<諸王国> 最北端に位置する聖峰エスファーンへの玄関口。深い森と荒涼たる山々に囲まれた国である。主産業は鉱山資源と獣猟。冬が厳しいため長く屋内で暮らす土地柄、手工業が発達している。
密猟取締の警備隊、「クラウドウルフ」と「ムーンディア」は、長弓の腕前ならロイダルの警備隊にも引けは取らない。彼らは夜目が利くことでも有名である。
現領主はファール・デュナ。曾々孫がいるほどの高齢でありながら、かくしゃくとしていまだに領内の見回りを欠かさない。
名産品:宝石細工、毛皮- ランバー・ウォルフ
- <古の王国>時代、「風の民」が戦力強化の為に生み出した「セレ」の飼育地だった。<四族戦争>の後、主の去ったこの島で、人々はセレの世話を続けた。以後、彼らは「セレ使い」(俗にセルダーと呼ばれる)としての地位を確立する。
島内の産業に見るべきものはなく、島民が食べていけるだけの物を作っている。唯一にして最大の産業は「セレ使い」達の出稼ぎであり、成人男子のほぼ3割が島外で働いている。諸国におけるセルダーの需要は高い。
現在の長はアースキン・コードウェル。領主は存在せず、「セレ使い」の長、次代、長老、村長の合議によって治められている。
名産品:なし
2.名所案内
- <アルビナの谷>
- 創世の女神アルビナが眠ると云われている。底の部分が緩い擂り鉢状の、完全な円形を成す小さな谷で、ほとんど一年中春のような気候を保っている。背後に天槍山を控え、周りを切立った断崖に囲まれているため、ここへ出入りできる道は一本しかない。
谷の中央には諸王国で最も古いとされる祠がある。 - <古の都>
- <古の王国>時代、大変栄えた都であったが、<暁の大戦>で壊滅した。現在は崩れた建物や敷石の点在する、耕作地にならない不毛な平原地帯である。かつての戦で使われた強い魔法の力により、この地には亡者の念がそのまま焼きついている。そのためこの平原の中で村落を形成することは難しい(亡霊達は、人の集団が発する気に強く引き寄せられる為)。
エルダノールではこの亡霊達の被害を抑えるため、年に2回鎮魂の儀式を執り行う。領主の最も重要な役目がこの鎮魂祭を執り仕切る事で、この儀式を恙無く行えなかった年は、種々の怪異によって近在の土地は大変な被害を被る。耕作地の少ないエルダノールにとっては死活問題である。 - ヴァルズール樹海
- 霊峰エスファーンを取り巻く大森林地帯。昼尚暗いこの森は、慣れぬ者ならほんの50歩で迷うといわれている。土地の者でさえ、定まった道から外れる事は滅多にない。しかし希少価値の高い薬草類が採取できる為、迷い込む人間が後を絶たない。
妖や魔が出没する事もあり、この付近の住民は頑強な者が多い。 - エスファーン山
- 霊峰として知られる最も高く険しい山。代々の<
司 >が住まう御座所であり、<諸王国>人全てにとっての聖地である。 - <荒野>
- <古の都>同様、「暁の大戦」によって不毛の土地になる。この地には魔術学院と魔法工房があったため、どこよりも激しい魔法合戦が繰り広げられた。その結果、何一つまともに育つことのない、異形のものが徘徊する地となった。
海岸沿いに伸びる交易路は、ロイダル〜オスタートの重要な街道だが、武装隊商以外通ることはほとんどない。 - 天槍山
- <アルビナの谷>の西にそびえ立つ切り立った山。あまりにも高いため、頂上は雲に隠れて見えない。この山にはアルビナの元へ通じる「女神の門」があると言われている。
ヘルンの有名な剣姫フレイアは、この山に登って戻らなかった。彼女は今女神の元で暮らしているが、ヘルンに危急の時には、再び山を下りてくるという言い伝えがある。 - <ヘルンの鏡>
- 透明度が高いせいか、常に周りの景色を湖面に映し出す円形の湖。月夜の晩には、水底に見える国へ行けるという伝承がある。領主一族の先読みは、この湖の小島にある「水鏡見台」で行われる。
3.人名・用語豆辞典
- <
月影の狩人 > - オスタートの伝説に出てくる魂を狩る者。月のある夜、深い山や森の中で彼に出会ったら、懼れずに挨拶をしなければいけない。ただ震えるばかりな弱い魂は狩られてしまうという。
眷属としてクラウドウルフとムーンディアを付き従える。夜の狩りをする姿を運良く見る事ができたら、その年は冬でも獲物が捕れるという。<角を戴く者>、<影を走る者>とも呼ばれる。 - 蒼い鴉
- <
司 >の御使い。蒼い光を放つ鴉が司の意志を伝えたという逸話が各地に残されている。 - <アルビナ>
- 創世の女神。この世の誕生と同時に世界へ4つの力(大地・風・水・炎)を贈ったとされる。現在は<アルビナの谷>で深い眠りについているが、夢を見ながら世界の綻びを繕っているという。
- 古の王国
- 「四族戦争」〜「暁の大戦」までの間に栄えた「人」の王国のこと。
- 四族戦争
- 神人四氏族が互いに覇権をめぐって起きた戦。この時の勝者はなく、それぞれ大きな痛手を受けて終結。この当時「人」は下僕にすぎなかったが、その擁護者であった風の民イーロスが、地の民クローディアと共に知識を授けて人の国を造った。
- 暁の大戦
- 四族戦争の約二百年後に勃発。かつて下僕であった人の国は大きくなっていたが、四神族の一斉攻撃によりあえなく壊滅。この時、大魔法の嵐が吹き荒れた為に各地で様々な歪みが発生。この異変に心を痛めたアルビナが、何らかの力を振るって戦に介入したと言われている。
水と炎の民の力を受けたモーラが同族を振りきり、リドム(イーロスとクローディアの子)の元へ行った事で力の均衡が崩れ、神人は次々に眠りにつかされたという。この時より人の時代が始まった。 - 蛇根草
- いわゆる万病の薬。ヴァルズール樹海の奥にしか生えていない、大変貴重な薬草。薬師のリンがセレ使いのドラクルと共にこれを持ち帰って、現ラディス領主の病を治したのは有名な話。
- <
司 > - 人の守護者であり、神人の眠りを守る者。暁の大戦で破壊を繰り返した神人達を眠りにつかせ、この地を人の手に譲り渡した。以後、その任を継ぐ者が代々エスファーン山から見守っているという。
- 成人の儀式
- 春に行われるエルダノール特有の儀式。全ての領民は16才になるとこの儀式に参加しなければならない。彼らは本人の申告で、ある程度得意な分野ごとに5、6人の班に分けられる。そして与えられた課題を期間中にこなせれば成人と認められる。儀式は毎年挑戦できるが、失敗し続けるような者は、たいてい途中で命を落としてしまう。
- セレ
- 風の民が創り出した種。外見は豹に似た尾の長い大型の獣で、風の力を受けて空を飛ぶ。知能は高く、感応力が強い。えり好みが激しいため、多くのセレは決まった相手(ほとんどの場合ランバー・ウォルフ生まれ)しか乗せず、子供は島でしか生まれないため、セレが他国のものになる事はない。尾を切られたセレは飛ぶことができなくなり、すぐに衰弱して死んでしまう。
セレ使い - ランバー・ウォルフにのみ生息するセレと共存する一族。元は風の民の下僕で、セレの飼育をしていた。空を飛べる者を支配しようと、何度となく人質をとられたり攻め込まれたりしたせいで、島に籠もって外界と交渉を絶った時期があった(1200〜1600頃)。
以後、戦には一切関わらない事を条件に外の国と交渉を再開。現在彼らが提供するものは、主にセルダー伝令網を利用した情報の遣り取り、配達等。各領主館には契約で1〜2人のセレ使いが常駐している。 - 創世の物語
- 『世界が生まれると同時に一人の女神が現れて、大地と風、水と炎を贈った。これによって、大地と水は樹を生み出し、風と炎が鳥を、大地と炎が獣を、水と風が魚を生んだ。風と大地がぶつかって山ができ、炎と水がぶつかって海ができた。
四つの贈り物によって世界は色と音を得て栄えた。これを嘉 した女神は、より一層栄える事を願って、それぞれの力を伸ばすよう四人の子供達を遣わした。彼らを祖として四つの一族は増えていき、その力は世界の果てまでも及んだ。
しかし、やがて四つの神族は自らの力をより伸ばそうと、互いに争うようになった。こうしてそれぞれが手足となり、戦いの力となる種族を生み出した。大地は四つ足、二足の頑健なもの共、水は泳ぐものや滑る長虫達を、炎は光る獣、生きている火焔を、風は翼あるもの、空をゆく獣達を。そして東の彼方から、まだ獣のような人々を連れて来て、それぞれの獣を扱う技と戦い方、さらに自分たちへの仕え方を教えたという。
これが我々人の祖先だった。(尚、最後のくだりはもう一つ別の言い伝えがある。「四人の子供は四つの力を少しずつ分け合って、自らに似た種を作り出し、僕しもべとして仕えさせた」というものだ。一般的に、こちらがより受け入れられている)』 - <谷の主>
- アルビナの谷にいると伝えられる漆黒、紅目の大猪。谷の番人で、アルビナの眠りを妨げる者を狩ると言われている。ごく一部の選ばれた者にだけ名を明かし、その名を知る者には生涯その加護が及ぶという。
- <血の時代>
- シュロサント歴1000年頃から各地で戦乱が増え出す。とくにジェル・アンス山脈の東側、当時
東の平原 と呼ばれていた地域は小国の乱立により長く戦国時代が続いた。 - <柱の時代>
- シュロサント歴1500年頃、
東の平原 が統一の道をたどり始める。英賢王エリックの統一エルダー王国建国を皮切りに、ラデリース都市連合がラディスとなり、ヘルンは自治領ケストリアを吸収。現在の形に近くなる。 - <払暁の三つ星>
- ヘルンの三英雄。<血の時代>後期に現れ、<柱の時代>への導き手となった。それぞれ「暁の騎士」、「暁の姫」、「暁の導師」と呼ばれた。
- 妖女ラーミア
- ヴァルズール樹海に住まうという老婆。魔術でもって、森に入った人を迷わせて殺すと言われている。たまに人里に現れ、その醜い容貌を馬鹿にした者を蛙や家鴨に変えてしまうという。気難しい意地悪な魔女だが、親切にしてくれた人には小さな贈り物をする事もあるらしい。
- モーラの剣
- <
司の左手 >が携えるという剣。水と炎を司る。 - リドムの竪琴
- <
司の右手 >が携えるという竪琴。風と大地を司る。 - リドル・カレッジ
- ヘルンの南端ケストリアにある魔術学院の別称。初代院長が大の謎掛け好きで、謎掛けを解かないと学院内でまともに生活していけなかった。以後も頭の柔軟性を保つのにも都合が良いと、代々その仕来りが受け継がれている。
階級は下から見習い、初等、下級、中級、上級、修士、学士、導師となる。それぞれローブの色で分けられ、灰、白、青、赤、緑、銀、金、黒である。
学院内の事は全て導師達の合議で決まり、院長は導師の中から選出される。この「黒師会 」の決定は大変権威があるため、例え領主といえど口出しを許されない。それゆえに、導師への認定は、魔術の才よりも人柄に重点がおかれている。 - ロイダルの葦毛
- 名馬の代名詞。ロイダルは良馬の産地だが、なぜか葦毛には頭の良い名馬がよく出る。伝説の名馬たちの約1/3が「ロイダルの葦毛」だと言われている。
- 「暁の騎士」
- 別名「騎士の中の騎士」とも呼ばれた。当時(1400年代)のヘルン近衛騎士隊隊長、リガルド・リィーアの事。対
東の平原 戦争の際、「暁の姫」フレイアと共にこれを撃破。さらに未踏のジェル・アンス山脈越えを敢行、敵本陣を奇襲して勝利をおさめる。後にサイリンの座を継いだ「暁の導師」ルースを妻に迎える。 - 「暁の導師」
- 別名「暁を招く者」、または「星を生む女」。ルース・L・エリースター、後のサイリン・ルースの事。「暁の姫」フレイアのまた従姉にあたる、学院の銀の衣(修士)所持者。東の本拠地奇襲作戦は、彼女が内側より道を指し示した事で成功したという。フレイアがサイリンの座を押しつけていなくなったため、泣く泣くその座を継いだ。
東の平原 統一に力を尽くした獅子王マーティンの后モイラはルースの娘。 - 「暁の姫」
- ヘルンの偉大な剣姫、フレイア・ルー・ルシニアの事。当時(1400年代)、東からの度重なる侵攻を
悉 く防いだ。更に戦時同盟を組んでいた東の氏族本拠地を、少人数で各個撃破し完全勝利を得る。しかしその後、サイリンの跡継ぎであったにもかかわらず各地を放浪。ある時、天槍山に登ったきり帰って来なかった。ヘルンでは「フレイア」という名はこの姫のみを指し、けしてこの名を子供に与えない。この姫が山から下りてきたら、サイリンはその座を譲り渡す事を代々誓っている。 - 獅子王マーティン
- 乱立していた小国をまとめ上げ、一つの国へと導いた英雄王。生涯の大半を戦場で過ごしたが、内政にも秀でる。長子のエリック(後の英賢王)共々、民の繁栄と文化の発展に力を注いだ。
- 英賢王エリック
- 獅子王マーティンの長子。統一エルダー王国を建国した初代。エルダノールの偉大なる祖。数々の法規、制度を考案し、彼の時代より急速に国力が強くなっていく。魔術にも造詣が深く、鎮魂祭を行って耕作地を飛躍的に増やした。
- 「セレ使い」ドラクル
- ランバー・ウォルフ生まれではないのに、セレに受け入れられた珍しいセレ使い。出身地は不明だが、ある日ふらりとやってきて、あっという間にセレ使いの仕事を覚え(普通は10年かかる)、当時一番の有望株と言われていたセレに「選ばれた」。その後各地でいくつも目覚ましい働きをしたが、ヴァルズール樹海から蛇根草を持ち帰ったことで一気に有名になった。
- テイラー・デュナ
- オスタート領主の長子。現領主があまりに長生きなため、彼自身は後を継がず、息子にその座を譲るつもりらしい。銀細工師としては神技と言われる腕前だが、寄る年波には勝てず、近頃は気が乗った時だけしか腕を振るわない。
- リオン・デル=モー
- エルダノールの
導師 。領主一族の分家筋にあたる。現領主とその妹の教師役だった事もあり、今なお彼の発言は重んじられている。学院に残っていれば、確実に学院長に選ばれていただろうと言われている。 - ランザラス
- ロイダル草原騎馬隊「レッドランス」の隊長。
突撃槍 とフレイルの第一人者。若い頃からその厳 い容貌と抜き出た体格で周囲を圧倒していたが、年を経てその傾向はますます強まり、一目見て子供が泣き出しそうな頑固親父となる。「ブルーアロー」のレイナスが、『レッドランスのランザラスだから、「ランラン」』と馬鹿にして以来、水面下でこの呼び名が定着。以来二人は「ランラン」、「嫁き遅れ」と呼び合って反目を深めあっている。 彼らの日常風景はこちら→「ランランと悪魔」 - レイナス
- ロイダル森林警備隊「ブルーアロー」の隊長。ロイダルレンジャーズギルド代表、通称「青レンジャー」の愛弟子で、長弓の腕前は3本の指に入ると言われている。オレンジ色の燃え立つような赤毛に相応しく、気性の方もかなり激しい。怒ったときのあまりの凄まじさから、陰で「悪魔のレイナス」という異名をつけられている。「レッドランス」の隊長とは喧嘩仲間。魔星剣「華煌」の主。
- 青レンジャー
- ロイダルレンジャーズギルド代表、ブシンメイルの事。蒼いレザーアーマーを着用していた事からついた名。「神弓」と呼ばれることもある。弓使いの第一人者。