初心者のための昔話 「冒険者セット」

 前回お話しした「火口箱」に引き続き、冒険者にとって必要な物を考えてみたいと思います。キャラクターを作る時、一番最初に買う物は何でしょう。当然武器と鎧ですね。最も高価で最も生死に関わる装備ですから、所持金に余裕がある内に買いましょう。その残ったお金で、できれば揃えておいた方が良いのが、「冒険者セット(友人I君が命名した、基本装備品パックの事)」です。

 

冒険者セット内訳(AD&Dの場合)

バックパック(背負袋)
主な装備品を入れる。これなくして冒険者とは言えず。
ロープ50′(約15m)
どんな時でも役に立つ。ただし重くて嵩張る。
火口箱(火打石、火打金、火口のセット)
必ず買いましょう。
ランタン
できればシャッター付きの光源を絞れるタイプを選びたい。高いけど。
オイル(ランタン用)
ランタンが無くても用途は広い。できれば多めに買っておきたい。
トーチ(松明)
貧乏ならこっちだけ、金があればランタンと共に揃えておきたい。ランタンとはまた違った使い方があるので、用途に合わせて臨機応変に。
スパイク(鉄の楔)
ダンジョンアタックや山登りで活躍する。地味だが、持ってて良かったと思う場面が必ずある。
ハンマー(小槌)
楔用。これを忘れると、楔はただの重しと化す。
サック(袋)
合切袋。せっかく宝物を発見しても、入れ物がなければ持ち帰れない。大・小2種類揃えておきたい。
水袋
水を入れたものだけでなく、酒を入れた物も持っていたい。
マント
毛布代わり、即席担架、簡易大袋、たまに遭遇する裸の姉ちゃんに着せ掛ける等々、実に重宝な代物である。

所持金に余裕があれば

鏡(手鏡)
とくに女性、シーフは持っていて欲しい。高いけど。
羊皮紙&ペンとインク
字が書けるかどうかは別として、一枚は持っていたい。スペルユーザーとシーフは必携。
ベルトポーチ(巾着)
本当に手放せないものはこの中に入れる。荷物を捨てなければいけない場面でも、ポーチは捨てずに済む事が多いので、できれば大きいものを。

 

 これだけの物を買うと結構値段も重量もかかるのですが、冒険者のような不安定な立場の者は、常に準備万端でなければいけません。いつでも必要な物が手に入るわけではありませんから、買える内に買っておくべきでしょう。

 

 昔々、とあるシーフのPCがいた(以下Nと呼ぶ)。彼女は来る日も来る日もダンジョンに潜っては、下等モンスターから金や宝物をかっぱいでいた。しかしある時、とんでもない化け物に仲間をやられて以来実入りは悪く、手元には僅かな金しか残っていない。装備品は大分減っていたから補充しないといけなかったが、それをすると明日の宿代も出ないという有様。しかし、「今回の探索で元をとればいいことよ」と冒険者らしく、充実した装備品と空の財布を携え、Nのパーティは再びダンジョンアタックを開始した。
 以前遭遇した凶悪モンスターのテリトリーを避け、パーティは未知の領域へと侵入した。初めは何事もなくセコイ稼ぎをあげていたが、奥にはなんと巨大蟻の巣があったのだ。わらわらと巣穴から湧き出る兵隊蟻。パーティは必死になって応戦したが、何せ堅い身体な上に、倒しても倒してもキリがない。仕方なく撤退を始めたが、蟻共はどこまでも追ってくる。皆は洞穴の出口を塞がなければと、一瞬で合意に達した。
 まずは手持ちのオイルをありったけばら撒いて、そこに火のついたトーチを投げ込み、炎の壁を作る。油は長くは燃えないが、多少の時間が稼げる。その間に、戦士たちが近くに転がっていた木ぎれや鉄板をロープで組み合わせ、出口の穴を塞いで楔を打ち込んだ。突貫工事ゆえにあちこち隙間ができていたものの、一度に一匹しか出られないので一方的に攻撃でき、その隙に出口全体を覆うことに成功したのだった。
 結局、その日は大した実入りはなかったものの、全員無事生還することができた。パーティの面々は、貧乏ゆえ誰も買っていなかったオイルや楔を「Nが買っておいてくれて良かった」と口々に感謝したのだった。

 

 一人が全てを買う必要はないですが(特に重荷エンカンブランスの定義があるシステムでは)、パーティ内の誰かが持っているように、普段から持ち物の調整をするように心がけるといいでしょう。