一般教養講座「宝石・初級2」 ・・・2単位

第二講 硬度と靱性じんせい

 さて。今回は『かたさ』についてお話ししましょう。
 一般に硬いものは強いと思われがちですが、実は硬さと打たれ強さは同じではありません。ダイアモンドが硬いのは皆さんもよくご存じでしょう。しかしこの石はへき開性、つまり割れやすい性質も持っているのです。ですから、ある一定の方向から打撃を加えると、スパッと割れてしまいます。硬度は劣っていても、靱性は翡翠の方が高いでしょう。
 この二つはどう違うのか。硬度は『傷つきにくさ』を、靱性は『衝撃に対する粘り強さ』を表わします。一般に使われるモース硬度で石の硬さを比べてみましょう。

 

硬 度石 名
10 ダイヤモンド
9コランダム(サファイア、ルビー)
8.5クリソベリル(アレキサンドライト、猫目石)
8トパーズ、スピネル、エメラルド(7.5〜8)
7水晶、ジルコン(7〜7.5)、トルマリン(7〜7.5)、ガーネット(7〜7.5)
6.5玉、翡翠(6.5〜7)、ペリドート(6.5〜7)、瑪瑙(6.5〜7)
6ラブラドーライト、月長石ムーンストーン(6〜6.5)、アマゾナイト(6〜6.5)
5.5黒曜石オブシディアン
5ガラス
4蛍石フローライト
3方解石
2石膏
1滑石タルク

 

 こうしてみるとコランダムがとても硬いようですが、実は、10と9の間は9と1の間よりも離れているのです。それだけダイヤモンドが硬いという事ですね。
 さて、ダイヤモンドの微結晶が集合したカーボナードはへき開性がなくなって、とても強靱で硬い鉱物です。
 このカーボナードを10として靱性を比べると、

 

10カーボナード
8翡翠、コランダム
7.5ダイヤモンド、水晶、アクアマリン
6ペリドート
5.5エメラルド
5トパーズ、ジルコン、月長石
3クンツァイト

 

となります。靱性に優れた翡翠は昔から細工物に向くとして重宝されました。それは、ちょっとやそっとの衝撃では、欠けたりしないからです。

 さて、かけ足で説明してきましたが、理解できましたか? そろそろ時間になりますので、今日の講義はここまで。それでは皆さん、さようなら。