オールド・ハバナを歩く。
若い男が、いつまでも付きまとってくる。
「いいかげん、ひとりにしてくれよ」
「じゃあ、1ドルくれ」
「やだね。何でおまえに」
「だって、いろいろ案内したろ。ガイド料だ」
「おまえが勝手にしゃべっただけだろ。俺はそんなの頼んでない」
「いいじゃないか。日本人はたくさん持ってんだろ。俺達の10倍給料もらってるの知ってるぞ」
「その通りだ。だけど日本の物価もキューバの10倍だぜ」
「・・・・・」
「見ろよ」
新聞を売り歩いてるオジサンを指差す。
「見ろよ」
ゴミを集めているオバサンを指差す。
「見ろよ」
キャンディーを売り歩いている女の子を指差す。
「みんな働いてるんだ。俺だって自分で働いた金でキューバまで来たんだぜ」
「・・・・・・」
「まあ、せいぜい頑張ってくれよ。グッバイ、アディオス、グット・ラック」