「ミリオテ」(君、ここにいるね)
「ミリオネ」(うん、ここにいるよ)
これは「こんにちは」に相当するトツィル族(マヤ系インディヘナ)の挨拶。
まず相手の存在を認める。
それはお互いの関係において全ての基本であり前提である。
メキシコ最南部に位置するチアパス州では
人口の30%以上が先住民(マヤ系インディヘナ)だ。
トツィル族を始め、様々な先住民が山岳地帯で暮らす。
山の中で鮮やかな民族衣装を着て、独自の文化を継承しながら生活している様子は、
おとぎ話の世界に紛れ込んだような錯覚を覚える。
しかし、実際の生活は想像以上に厳しい。
電気・水道の無い家も多く、教育・医療・福祉なども不十分だ。
また歴史的にも奪われ続けた存在であり、それは今も続いている。
メキシコ政府は彼らの存在を忘れている。
忘れたふりをして、始めから存在しないものとして扱っている。
サパティスタ民族解放軍(EZLN)は、先住民の権利・文化の認知、
そしてメキシコ国民の自由・民主主義・正義を求めて立ち上がった。
メンバーのほとんどがチアパスを中心とする先住民であり農民だ。
「君、ここにいるね」と挨拶を交わす彼らは、目出し帽を被り、自らの顔を隠した。
顔を隠すことにより、世界中が彼らの存在に気付くことになる。