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インドではタクシーやリキシャーでのトラブルがとにかく多いという。
高額の料金を請求されたり、悪徳ツアー会社に連れていかれたり
ホテルを紹介するからと、ぼられたり。
特に空港には、そんな奴らが、うようよしているという。
日本を飛び立って8時間。
予定より1時間遅れてデリーに着いた。
ほこりっぽい、ムッとした熱い濃厚な空気に包まれる。
インドだ。
税関を出ると案の定、たくさんのインド人が群がってきた。
インド人特有のぎょろ目に彫りの深い濃い顔。
ターバンを巻いている奴も多い。
「どこから来た?インド初めてか?」
「何処に行く?タクシーか?」
数人に取り囲まれ、大声でまくしたてられる。
無視してプリペイド・タクシーのカウンターを探す。
空港からは事前にチケットを購入する
プリペイド・タクシーが安全なのだそうだ。
見るからに怪しい男がしつこくつきまとってくる。
「何処に行きたい?俺の車に乗れよ。150ルピーでいいぞ」
安すぎる。ますます怪しい。
無視してカウンターを探すが見つからない。
ポリスマンがいた。
良かった。
「プリペイド・タクシーのカウンターはどこですか?」
「彼がプリペイド・タクシーだ」
ポリスは、つきまとってくる男を指さして、めんどくさそうに言った。
そんな訳ないだろ。
この国の警察は信用できないのか。
汗がぼたぼた落ちる。
「俺がプリペイド・タクシーだ」と男はしつこくついてくる。
「おまえの車には乗らない」と何度言っても
まるで聞こえてないかのようだ。
うっとおしい。
絶対、自分で探してやる。
しばらく歩き廻り、やっと、カウンターが見つかった。
反対の出口から出てしまっていたのだ。
ニューデリー駅まで180ルピー。
タクシーナンバーの書かれたチケットを受け取る。
タクシーが停まってる場所に行く。
「このナンバーのドライバーは誰ですか?」
たむろしてるドライバー達にチケットを見せる。
「おれ、おれ」
「おれ、おれ」
おい、おい、全員が手を上げるな。
「俺の車に乗らないか」
自分の車に誘導しようとする奴までいる。
もう、乗る車は決まってるっつーの。
おまえは白タクだろう。
何なんだ、こいつら。
自分で車を探す。
「この車のドライバーは誰!」
ゆっくりと、ひとりの男が運転席に座った。
やっと、空港から離れられる。
後部座席に座り、バックパックを下ろす。
やれやれ。
息をつくのもつかの間。
今度は、例の、しつこい男が助手席に乗ってきた。
「おまえは乗るな」
「ノープロブレム。ダイジョーブ、ダイジョーブ」
大丈夫な訳ないだろ。
やっぱり、どこかに連れていこうとしている。
男は全く降りようとしないし、ドライバーも何も言わない。
ふざけんな!
いったん車を降り、助手席のドアを開ける。
「ゲット・オフ!」
男の服をつかみ、引きずり降ろす。
男はしぶしぶ車を降りた。
ドアをロックし、男に向かって中指を立て「グッド・ラック」
やれやれ。
これがインドか。 |