その日の部屋が決まり、荷物を降ろした瞬間。

          初めての国に来て、いちばんホッとする時である。


          窓から景色を眺める。

          夕闇に包まれたデリーの街。

          星も見えないスモッグの空。

          視線を落とすとメインバザールが見渡せる。

          ヒンズー語と英語の看板にけばけばしく灯がともり

          街はますます騒がしくなってゆく。

          狭い道をものすごい数の人、牛、車、リキシャーがデタラメに通る。

          クラクションが鳴りやまない。


          ベッドの上で両替したばかりの見慣れない通貨を眺める。

          1ルピーは2円60銭。

          100ドルが4600ルピーになった。

          50ルピー札72枚、10ルピー札100枚

          穴があいてたり千切れそうなボロボロの紙幣。

          ひと握りほどの厚みがある。

          どのお札にもガンジーの顔が書いてある。 


          天井のファンが申し訳程度にむっとした部屋の空気をかき混ぜる。

          「まずはカレーだな」

          街に出る。