遠路はるばる運ばれてくる死体。

死を待つ人々。


ヒンズー教徒は、その命をまっとうして、この地で火葬され

ガンジス河に流されるのが至上の喜びなのだという。


猛烈な陽射しを受けながら

ガンジス河に沿って上流へと歩く。


空気。

異臭と煙。

黒いすすがこびりついた建物。

そこが火葬場であることは、すぐに分かった。

マニカルニカー・ガート。


全体が見渡せる高台から見下ろす。

その情景はあっけらかんと当たり前にそこにあった。


金色に縁取られたオレンジの布に巻かれた肉体が焼かれる。

淡々と次々に焼かれる。

この地で焼かれるのを夢見た魂は、既に旅立った後。

焼かれてゆく肉体はすでに物質なのだ。


何の感情も沸き上がってこない。

涙だけが、ぶわーっと出てきた。


ガンジス河に浸けられた死体は薪の上に乗せられる。

薪の周りにワラを敷き詰め、火がつけられる。

布が燃え死体の全容があらわになる。

時々着火材のような物が振りかけられる。

立ちのぼる白い煙に黄色い煙が混ざる。

皮膚が膨らみボンと爆ぜる音が聞こえる。

人間の肉体が灰になってゆく。

たんたんと静かに灰になってゆく。

灰と燃え残った肉体が、聖なる河に還えされる。


死とは、こういうものなのだ。


焼け残ったワラをヤギが食べる。

河から死体の肉片を引き上げ犬が喰らう。

犬の喰い残しをカラスがついばむ。

そのすぐ横では子供達が歓声を上げ次々に河に飛び込んでいく。

濡れた褐色の肌に陽の光が反射してきらきらと輝く。

ああ、何という生と死の対比だろう。


朝夕に大勢の人が大河に浸かり祈りを捧げる。

身体を洗う。

水浴びをする。

洗濯をする。

ゴミを捨てる。


全てを飲み込み悠然と流れる大河。

生と死が混在しながら流れる大河。

悠久の流れ。

聖なる流れ。


永遠の時間がゆっくりと今日も刻まれてゆく。

いったい、どれだけの魂が、この地から次の旅を始めたのだろう。