眼下には海と空が織りなす世界が広がる。

     境目のない抜けるようなブルーが続く。

     太陽の光が、青い広がりに、透き通るような輝きを与える。


     二杯目のワインを飲み干し、本を閉じる。

     シートを倒し、目を閉じる。


     しばらく続いた太平洋上空の飛行が

     インドシナ半島にさしかかった。


     ちょうどベトナムのホイアンの上空を飛んでいる。

     ホイアンで過ごしたのは、ほんの二ヶ月前のことだ。


     赤い提灯がぼんやり灯る、幻想的な夜。

     おやすみの握手をした手の暖かさに、繋いだまま歩いたベランダ。

     ひらひらと蝶々のように舞い降りた、たくさんの小さなトンボ。

     市場で偶然出会った不思議な、おばあさん。

     ミン、マイちゃん、トゥアン、タンちゃん、トゥイちゃん。

     みんな元気にしているだろうか。


     ホイアンでの時間は既に、記憶の中で星の瞬きに変わっている。


     ふと気がつくと、蛇行する茶色いラインが見えてきた。

     メコン河だ!

     この河をさかのぼるとラオスに辿り着く。

     ラオスには、メコンが運んできた肥沃な大地が広がる。

     明日には、恵みの大地に降り立つ。

     ラオスでの数日間、良い風が吹きますように。