バンコク、ドンムアン空港を発った。

               70分後にはラオスの首都ビエンチャンに降り立つ。

               ビエンチャンは、メコンを挟んでタイと国境を接する。


               機内に日本人らしき姿は見えない。

               眼下には規則正しく並んだ水田が見える。

               機体は急激に上昇して、急激に下降したのだろう。

               耳の奥が痛んだ。

               やがてメコンを越える。


               ビエンチャンのワッタイ国際空港は

               地方都市の市立図書館のような、こじんまりした外観だった。


               ここワッタイ国際空港で、ヴィザを取り、国内線に乗り換える。


               すぐに15日間有効のツーリスト・ヴィザがおり

               シンプルなイミグレーションを通り税関を抜ける。


               どんな国であっても、税関を出る時は、少々の緊張を伴う。

               初めてのラオスの空気。

               そこは今まで経験したことのない、おだやかな空気が流れていた。


               うるさいタクシードライバーも客引きもいない。

               声をかけてくる者はいない。

               ちょっと拍子抜けするくらいだ。


               涙を流しながら、抱き合っている一団がいた。

               再会の喜びなのだろう。

               おばさん同士が、喜びに顔をくしゃくしゃにしている。


               こんなに喜びを素直に現しているシーンに

               出くわした事は、今まで無かったかもしれない。


               人と人が出会うこと。

               人が人を大切に想うこと。

               なんて素晴らしいことなんだろう。

               美しいシーンだった。


               周りの人々は、その様子を穏やかな微笑みを浮かべて見守っている。


               こんな空気が流れている空港は初めてだ。

               ラオスにやって来て良かったという気持ちが、沸き上がってきた。

               すでにラオスが好きになっていた。