明るい陽ざしの中、国内線のターミナルに向かって歩く。


   タクシーとして使われているのは古い日本車だ。

   白い無骨な車がロータリーに、ぽつぽつと停められている。


   しかし、ここは、空港というには、あまりにのどかだ。

   一時間に一本くらいしか列車がやってこない

   田舎駅の待合室のようだ。


   ベンチでビールを飲んでいると、のら犬がやってきて

   こちらを見ながら、あくびをした。


   搭乗時間が近づく。

   ゴーッという音と共に、視界にプロペラの付いた翼が見えてきた。

   乗客が降りてきた。

   給油車が近づく。

   もうすぐ自分が乗り込む番だ。


   ラオスの国内線は安全面で悪名高い。

   世界中の航空会社の中で、唯一、外務省の注意勧告が出ている。


   「大丈夫だろうか」


   運動場のトラックを思わせるような飛行場を半周すると

   飛行機は空に浮かんだ。


   プロペラがハチの羽音のようにブンブン唸る。

   震動が伝わってくる。

   何だかハチに乗っているような気分になってくる。

   けなげに山並みを越えて飛んでゆく。


   到着地であるルアンプラパーンは

   ラオスの内陸部に位置する山に囲まれた町。

   たくさんの寺院があり、町全体が世界遺産にも登録された古い都だ。

   将棋の飛車で、敵の陣地にいきなり、ドンと入ってゆく気分である。

   ルアンプラパーンは目前だ。