4月20日。

深夜3時をまわって帰宅した。

留守電の赤いランプが点灯している。

「話があるので電話を下さい」
 
母の沈んだ声が聞こえてきた。



朝を待って電話をする。

おばあちゃんの状態が良くない。

急に、ここ数日、寝たきりになった。

医者には、あとひと月の命だと言われているとのこと。



嘘だ。

信じられない。

何かの間違いなら良いのに・・・



すぐに祖母のもとへ駆けつけたい。

しかし、同時に、その場に行くのを躊躇う自分もいる。

その姿を見たくない。

その現実を受け入れたくない。

何かの間違いだったら良いのに・・・




その日は深夜まで仕事だった。

翌日午前4時に帰宅して仮眠をとって電車に乗る。


4月21日。

父が車で駅まで向かえに来てくれた。
 
「元気か?」
 
「元気にしてる?」
 
言葉が重なる。



実家は駅から車で2、3分。


玄関に立つ。

「ただいま」

祖母の部屋まで聞こえるように大きな声で言った。