タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

>>バックナンバー >>ドラマ別レビュー


『ちょっと待って、神様』  第1週 オバサンは女子高生

制作統括:銭谷雅義
演出:西谷真一
脚本:浅野妙子
原作:大島弓子「秋日子かく語りき」
音楽:小六禮次郎
主題歌:「元気を出して」島谷ひとみ
制作:NHK名古屋
出演:泉ピン子、宮崎あおい、京本政樹、津嘉山正種、塚本高史、勝地涼、
   安達祐実、裕木奈江、碇由貴子、佳梯かこ、井沢勉、他

大島弓子の「秋日子かく語りき」をドラマ化。
かなり脚色はされそうだけど、
秋日子が宮崎あおいというのがイイ!
この第1週も魂がオバサンの時の変化がよく出ていた。

もちろん、竜子(泉ピン子)が女子高生となって
家族に会いに行くシーンは泣ける。
第2週以降が楽しみだ。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ちょっと待って、神様』  第2週 親が子のためにできること

演出:西谷真一
脚本:浅野妙子

なんかずっと泣いちまった。
家族のために何かしてあげられることはないかと考え、
結局、お弁当を作った竜子の気持ち。
そして自分が死んでいるからではなく、
生きていても何もできなかったのではないかと絶望する気持ち。
せつないなあ。

あと、秋日子側の家族にも問題があると設定したのは効いてるよな。
竜子が秋日子の気持ちになって親に口答えをした後、
すぐに竜子として母親にやさしい言葉をかけた所なんか良かった。

原作は1週間だけの秋日子の身体を借りた再生だけど、
まだまだ延長がありそう。

物語上の時間としては間延びしている感もある。
でも膨らましているエピソードがかなり良いので見ごたえは十分だ。
最終週は号泣しそうで今からコワイ(笑)

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ちょっと待って、神様』  第3週 お母さんみたいになりたくない

演出:海辺潔
脚本:浅野妙子


娘からお母さんみたいになりたくないとまで言われながら
お母さんみたいにならなくていいからと言う竜子。
泣けるなあ。

東京で怪しいプロダクションに騙されそうになる、
という展開はありきたりだったけど、
同じように家を出ている子供達に
とにかく美味しいご飯を作って上げるシーンは良かった。

たくましく生きようとしていた秋日子が
両親の離婚を聞いてこのままでもいい
(肉体を竜子に貸したままでもいい)
と竜子にしがみついて泣いたシーンも効果的だったし。

専業主婦をここまで哀しく偉大に描くドラマもすごい。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ちょっと待って、神様』  第4週 もう一回セイシュン!?

演出:海辺潔
脚本:浅野妙子

秋日子と竜子、両方の気持ちを
本当にうまく描いてる。
で、それを演じ分けている宮崎あおいはスゴイ。

映像的にも秋日子と竜子が入れ替わる部分を
無理なく処理してるし。

最終週もこの見事なアレンジのまま締めて欲しい。

             採点  8.0(10点満点平均6)




『ちょっと待って、神様』  第5週 そこにあるのに気づかないこと

演出:西谷真一
脚本:浅野妙子

ちょっと時間配分を間違ったかなあ。
お父さん(津嘉山正種)と別れる時の原田(裕木奈江)のセリフや、
竜子が最初にお父さんに真実を告げるシーンなどは
もっと丁寧に作ってもよかった。

ただ、竜子が秋日子に“生きなさい”と言ったセリフには重みがあったし、
すべてを投げ出したかった秋日子が、
人生の素晴らしさや生きていくことの意味を
竜子から学んだこともよく描けていた。

もちろん、その過程で視聴者は
尊い家族の物語を堪能できたわけだけど。

全体的には、
約50ページの短編コミックを
TVドラマとしてこういう形で脚色した企画は素晴らしかったと思う。

そして、宮崎あおい、泉ピン子、
津嘉山正種などのキャスティングも完璧だった。
とくに今後、宮崎あおいを語る上では
忘れてはならない作品になったことは間違いないだろう。

NHKの深夜ドラマ、本当に侮れない。

             採点  7.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★★
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  7.60(10点満点平均6)



『3時のおやつ』

プロデュース・演出:田村直己
協力プロデュース:里内英司
脚本:清水優
制作協力:5年D組
制作:テレビ朝日
出演:要潤、有森也実、太田琴音、石井正則、石橋蓮司、
   大河内浩、螢原徹、松田悟志、唐橋充、他


第3回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞受賞作で、
売れない若手芸人と難病を抱える少女の交流を描いたドラマ。
ストーリー自体はそんなに悪くなかったけど、
印象的なセリフはほとんどなかった。

あと、この手のドラマの決定的な弱点は、
天才芸人の芸も映像化しなくてはいけないこと。
これが普通のジャグリングやシガーボックス、
宴会芸並みのマジックでは説得力が出ない。

別に一流芸人を使わなくても
何か方法はあったろうに…。

新人脚本家の作品だけど、
むしろ演出に足を引っ張られた感じかな。
うまく作ればもっと感動したのに、と思うと
ちょっと残念な作品だった。

             採点  6.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  音楽  ★★☆☆☆
                  新鮮さ ★☆☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆



『STAR’S ECHO 〜あなたに逢いたくて〜』

企画:イム・ナムウォン、本間欧彦
プロデュース:中島久美子
演出:キム・ナムウォン、コ・ドンソン
共同演出:小林和宏
脚本:キム・ユンジョン
音楽:ハン・キョンフン
テーマ曲作曲:チョン・ヘソン
制作:フジテレビ、文化放送(韓国)
出演:中越典子、チョ・ヒョンジェ、イ・タヘ、黒谷友香、
   イ・ジュンギ、谷原章介、他

美咲(中越典子)が最後に韓国を離れる時、
ソンジェ(チョ・ヒョンジェ)に対して
“彼女が謝ってきたら許してあげて”と言った流れは良かった。

でもそれぐらいだったな、見どころは。
あとはシンプル過ぎるストーリーだった。
シンプル過ぎるというか、
シーンを繋いだだけのようなドラマだった。

まあ、韓国ドラマはそういうタイプが多いんだけどね。
期待を裏切らず交通事故シーンも出てきたし(笑)

2人の会話が日本語と韓国語のチャンポンになるのはかまわない。
でも、もう少し中越典子には韓国語をしゃべらせるべきだった。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『それからの日々』

チーフプロデューサー:五十嵐文郎
プロデューサー:内山聖子
制作統括:早河洋
演出:深町幸男
作:山田太一
音楽:福井峻
テーマ音楽:「セイリング」ロッド・スチュワート
制作:テレビ朝日
出演:松本幸四郎、竹下恵子、瀬戸朝香、武田真治、松村達雄、永島敏行、
   岸部一徳、渡部いっけい、松本紀保、他


1月31日に放送された
テレビ朝日開局45周年記念ドラマスペシャル。

そんなに評判が良くなかったので心配してたけど、
最後まで見ると個人的にはそれなりに納得できた。

確かに、前半の竹下恵子は良くなかった。
ちょっと芝居の質が古かったというか、
舞台っぽかったというか。

でも、終盤になってグッと良くなった。
史郎(松本幸四郎)が息子の啓治(武田真治)と
バーで話すシーンはすごく印象的だったし。

そして、晶子(竹下恵子)が
“こんな言い方よくないわね”
と言って史郎の前に戻ってくる展開や、
その後、史郎が少し後ずさりしてしまう場面などは
実に山田太一らしかった。

ラストシーンも山田太一らしくて、
晶子が子供にプレゼントを渡す場面では泣いた。

そんなに良い旦那でもないし、
そんなに良い奥さんでもないし、
そんなに良い子供たちでもないけど、
紛れもない家族のワンシーンだった。

             採点  6.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★☆☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆





『恋する京都』  全5回

制作統括:小見山佳典
演出:笠浦友愛、谷口卓敬
作:伴一彦
音楽:岩代太郎
主題歌:「恋する京都」神野美伽
制作:NHK大阪
出演:鶴田真由、村上淳、山本陽子、犬塚弘、村崎真彩、永澤俊矢、
   雛形あきこ、豊原功補、鈴木紗理奈、村田充、淡島千景、
   愛華みれ、松尾れい子、大杉漣、他

鶴田真由の京都弁はどうなんだろう、
という気持ちはずっと抜けなかったけど、
想像していたよりずっと良かった。

伴一彦の脚本に岩代太郎の音楽だもんな。
京都の風景と相まって雰囲気は上品だった。

その上品な雰囲気のアクセントになったのは、
もちろん晶を演じた村崎真彩。
可愛かった、ていうか、
最高の“じゃりン子チエ”キャラだった。

最近、目を惹く役者はみんな子役だなあ。
感性の問題なのか?

彼女がジュリエットを演じた
京都弁版のロミオとジュリエット。
これは最高だった。

おー、ロミオさん、ロミオさん、
なんでロミオさんやの? アンタは…。
アンタのお父ちゃんはお父ちゃんやない言うて。
アンタの屋号を捨てて欲しいのどす。
それともそれがイヤやったら
せてもウチを好きやて言うて欲しいのどす。

ウチの敵と言うても、それはアンタの名前だけどす。
モンタギューの名前を捨ててもアンタはアンタ。
名前を捨てたところでアンタが素敵な人やいうことは
ちっとも変わらしません。
ロミオさん、その名前を捨てとくれやす。
そのかわりこの私を受け取ってくれやす。

これはなんやろ。
杯が、愛する人の手の中に…。
毒なんや。
ひどいやないの、みんな飲んでしもうて。
ウチに一滴も残してくれへん。
そや、まだ唇に毒が残ってるかもしれへん。
それで死ねたらあの世で結ばれるんや。

(-。-)チュ

アンタの唇まだ温かいやん。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★★★
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆





『てるてる家族』  全150話

制作統括:若泉久朗
演出:榎戸崇泰、高橋陽一郎、他
脚本:大森寿美男
原作:なかにし礼
音楽:宮川泰
制作:NHK大阪
出演:石原さとみ、浅野ゆう子、岸谷五朗、紺野まひる、上原多香子、上野樹里、
   藤村志保、錦戸亮、でんでん、有薗芳記、森口博子、桂小米朝、九十九一、
   紅萬子、大村崑、杉浦太陽、川岡大次郎、近藤芳正、松尾敏伸、田島寧子、
   いしのようこ、樋口浩二、伊藤正之、ミッキーカーチス、小林ゆか、
   田島有魅香、大島正華、滝裕可里、中村愛、櫻谷由貴花、釜口茅那子、
   足立悠美加、米田良、他

ミュージカル仕立てという企画が最初は敬遠されたのか
視聴率はそれほど高くなかったようだけど、
笑えて泣ける、非常に質の高い作品だった。

特筆すべきは繊細な脚本。
ストーリーの流れが奇をてらったものでなくても、
そこに絡む人物の心理を丁寧に拾い、
生きた言葉で全体を紡いでいた。

笑いを取りに行くシーンは、
やはり浅野ゆう子、岸谷五朗らのセンスに
引っ張られた部分は大きいと思う。

でも、そんなお笑い部分やミュージカルシーンを
メリハリの一部として浮き立たせるくらい、
家族の絆、人の繋がりをきちんと描いていた。

夏子(上原多香子)のモデルとなったいしだあゆみを
売れないクラブ歌手として起用した時も、
ヘタをすれば企画倒れになってしまうような状況を
見事なドラマにしていた。

中でも一番印象に残っているのは、第13週、
工場長(でんでん)が20年前に別れたままになっていた
娘(松本麻希)と再会するエピソード。

工場長と娘の心理だけでなく、
無断でラジオ局にハガキを出してしまった
冬子(石原さとみ)の複雑な気持ちが
痛いほど伝わってきた。

第6週、少女時代の冬子(田島有魅香)と
少年時代の和人(米田良)の別れもせつなくて、
これはラストのハッピーエンドをより盛り上げる効果にもつながっていた。

まあ、最後の和人(錦戸亮)が歌うシーンは
さすがにどうかと思ったけど、
告白が“ラブ・ミー・テンダーや”の一言だったのは良かったな。

冬子のモデルとなったいしだあゆみの妹は、
実際は宝塚音楽学校を卒業後、上京して歌手になり、
芽が出ないまま1年でなかにし礼と結婚するわけだけど、
このドラマでは才能を開花させた2人の姉とは違う距離で母親と接しつつ、
自分で夢を切り開いていった末っ子として良く描けていたと思う。

そういう意味では最後に秋子(上野樹里)の旅立ちのシーンを
丁寧に描いてくれたのも嬉しかった。
両親に話す前に、
冬子(石原さとみ)にその夢を打ち明ける場面も含めて。

個人的には秋子のキャラクターが好きだった。
秋子には秋子の悩み、寂しさがあったと思うけど、
あんな風に生きられたらいいな、とさえ思った。

もちろん、ヒロイン・石原さとみの頑張りには拍手を送りたい。
物語が進むに連れてどんどん良くなっていった。
笑いの間も、すぐに浅野ゆう子と岸谷五朗の間をキャッチして、
違和感なく溶け込んでいった。
コメディエンヌの才能もあると思う。

4月3日放送の日テレ系スペシャルドラマでは、
ソニンや「桜咲くまで」の沢尻エリカらと一緒に
チアリーダーの役をやる予定。
冬子以外の役をどう消化して演じるか、
かなり楽しみだ。

ここ数年では最高と言っていい
NHK朝の連続テレビ小説だった。

             採点  8.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★★
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★★☆
                  話題性 ★★★☆☆






[ロビー田中の自己紹介]

[トップへ]