タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『新しい風』  4/15〜
TBS系 木曜10時  期待度 ★★★☆☆

新聞記者の夫が突然、政治家を目指すことになり、
普通の主婦が代議士の妻となる話。
報道では伝えられない政治の裏側を描く。

主演はともさかりえ、吉田栄作。
先妻との間に生まれた娘役で
「あした天気になあれ。」の実々、
森迫永依も出る。

今、政治の話はうまく作ればかなり面白くなるはず。
植木等、橋爪功、野際陽子、伊藤蘭、
段田安則、新山千春、小田茜など、
脇もかなり豪華なので期待できるかも。




『新しい風』  第1話

チーフプロデュース:貴島誠一郎
プロデュース:刀根鉄太
演出:三城真一
脚本:浅野有生子
主題歌:「金木犀」笹川美和
イメージソング:ミッシェル・ポルナレフ
制作:TBS、ドリマックステレビジョン
出演:ともさかりえ、吉田栄作、植木等、橋爪功、野際陽子、寺田農、段田安則、
   伊藤蘭、市毛良枝、森迫永依、山下真司、新山千春、小田茜、高杉瑞穂、
   高知東生、筒井康隆、小野寺昭、石井美奈子、西田健、他

これは面白い。丁寧に作ってある。
キャスティングも「ホームドラマ!」並みにベストで、
とくに吉田栄作のキャラ作りはすごく自然で良かった。

娘役に森迫永依を起用できたのも大きい。
昂(吉田栄作)と真子(ともさかりえ)が仲良くしている様子を
横で見ている演技は最高だった。

継母に馴染めない子供のリアクションは
ヘタなスタッフが作るともっと大袈裟に撮ることが多いけど、
このあたりはスタッフのセンスの良さも感じた。

家族は社会の最小単位。
そこに新しい風=真子が入る、という部分で
作品のテーマとリンクさせているのかもしれない。
いずれにしても新見家のパーツも丁寧に作ってあることは確かなので
全体のクオリティーは今後も高く維持できるような気がする。

で、本筋の昂が政治家になるという部分。
ここも大物代議士の中澤(植木等)、
中澤の第一秘書・黒川(寺田農)あたりがどっしりしていて
見ていて迫力があった。

エンターテイメント性も十分に確保してあるので
今後も非常に期待できそうだ。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『新しい風』  第2話

演出:三城真一
脚本:後藤法子

丁寧。本当に丁寧。
林原(段田安則)の振る舞いも
普通なら下世話に描いてしまうところを、
きちんと昂(吉田栄作)などにセリフでカバーさせて
説得力を持たせていた。
これなら中澤夫人(野際陽子)の扱いもそんなに心配ないだろう。

萌(森迫永依)が破いた絵本を昂が見つけたシーンも良かった。
ひとことで言ってしまえば余計なことをしない。
大袈裟なことをしない。
それがこのドラマは一貫して出来ている。

真子(ともさかりえ)と萌がハイタッチをした後も
そんなにすぐには仲良くならないところも良かったな。
一緒にお絵描きしていても
まだ萌がどう接していいか分からない雰囲気がよく出ていた。
脚本だけでなく、演出も丁寧だ。

そしてついに昂が中澤(植木等)の申し出を受け入れて
選挙に出ることを決意。
この昂の心理はもう少し詳しく描写して欲しかったけど、
次回以降、延岡(橋爪功)などとの会話の中で
フォローしていくのかもしれない。

今期のラインナップの中では地味な作品かもしれないけど、
見て損はしない作品だと思う。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『新しい風』  第3話

演出:松田礼人
脚本:田中江里夏、後藤法子

かなりセリフを省略しているので
不親切と感じる部分もあった。

ただ、昂(吉田栄作)が何をしたいのかについて、
演説で原稿を読まずに自分の言葉で話した流れは良かった。
(↑描き方としては珍しくないけど)
既成政治側の林原(段田安則)のセリフにも説得力はあったし。

昂の思いや考え方については
今後も様々なシーンに分けて描いていきそう。

それ自体がこの作品の伝えたいことでもあるので
方法としては悪くないと思うけど、
昂がなぜ安定した仕事を捨て、家族と過ごす時間を削ってまでも
政治家になることを決意したのか、という部分は、
早めにもう少し分かりやすく説明した方がいいと思う。

あと、内容的には、
綾(小田茜)が雪乃(伊藤蘭)の本当の娘ではなく、
中澤(植木等)の隠し子だったことが
今後の前振りのような形で明かされた。

ドラマとして面白くなる要素は
まだ十分に内包していると思う。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『新しい風』  第4話

演出:竹村謙太郎
脚本:成瀬活雄

うーん、抜群に面白かった1・2話に比べると
明らかに失速している感じ。

もちろん、演説会での小田島(小野寺昭)の反応や、
真子(ともさかりえ)がきちんと絵本を描き上げる展開など、
下世話なエピソードは持ち込まず
テーマに沿った作り方をしている部分は好感が持てる。

ただ、テンポが遅いというか、
内容をもっと詰めてもいいというか…。

あと、昂(吉田栄作)に対して感情移入できる要素もね。
これは真子側から見る上でも大事なことだと思うのでしっかり描いて欲しい。

すでに4人の脚本家が書いているけど、
そのへんも影響してるのかな。
もう一度最初の頃の密度を取り戻してもらいたい。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『新しい風』  第5話

演出:三城真一
脚本:後藤法子

第2話と同じ三城(演出)・後藤(脚本)のセット。
人物の描き方はやっぱり丁寧だった。

ただ、選挙の裏側のエピソードに関しては
無理に入れたような感じがして浮いてしまっていた。

基本的にはそういうエピソードがあることを
聞いたり、取材したりして脚本に盛り込むんだろうけど、
どうしてもパーツのひとつになってしまうんだよな。

まあ、いわゆる職業ドラマという分野に当てはまるものは
際立った仕事にスポットを当てれば当てるほど
そういう傾向が強くなるもんだけど。

うまく盛り込めないなら削る勇気も欲しい。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『新しい風』  第6話

演出:松田礼人
脚本:成瀬活雄、後藤法子

真子(ともさかりえ)が逮捕されたエピソードを
あまり引っ張らずに描いたのは良かった。

車椅子の少女のエピソードも
ヘタをすれば下世話になるところだけど、
その直後の昂(吉田栄作)と林原(段田安則)の会話で
うまくテーマに絡めたと思う。

綾(小田茜)と中澤(植木等)のパーツも
ある種の政治の裏側で面白いかも。

多少は持ち直してきた感じか。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『新しい風』  第7話

演出:竹村謙太郎
脚本:後藤法子

前回の終わりで思わせぶりだった
代議士の妻の涙という下世話なエピソードは
やっぱり引っ張らずに終了。
そして昂(吉田栄作)が選挙に負ける展開となった。

これはなかなか見ごたえのあるストーリー。
代議士を目指す者とそれを支える者の違いも垣間見られて
また新たな見どころも生まれそうだ。

真子(ともさかりえ)の取材ビデオも
ヘンなお涙頂戴のアイテムとして使わず、
昂の新たな決意を確認させるものとして使ったのが良かった。

このドラマ、中だるみはあったけど、
まだ最後まで目が離せないかもしれない。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『新しい風』  第8話

演出:三城真一
脚本:成瀬活雄

1クールでまとめられるのかなあ。
昂(吉田栄作)が進民党から出馬するなら
次の選挙戦はある程度省略することも可能だけど、
無所属で出るとなれば戦い方も違うだろうし。

林原(段田安則)にも新たな役割が出てきたな。
ヘンに感傷的な展開で
昂の秘書を買って出たりしないところは良かった。

ただ、実際は無所属だと
国会へ行ってもやれることは限られると思う。
今の政治そのものを改善したいと思うなら
むしろ与党議員になって
中から壊していかないとダメだと思うけど…。

でもそうなると別のドラマになっちゃうしな。
ここは昂の無所属出馬を素直に受け入れて
このドラマとしての仕上がりを最後まで見届けよう。

あと、全然関係ないけど、
番組の最後のCDプレゼントの告知でともさかりえが
“住所、氏名、年齢をお書きの上、
 下記の場所にお送り下さい”
と言った。

下記の場所って原稿上は正しいかもしれないけど、
画面には送り先のテロップだけ出てるんだから
“ごらんの宛先”に直さなきゃダメなんじゃないの?
…秘書失格じゃん(笑)

             採点  7.0(10点満点平均6)




『新しい風』  第9話

演出:松田礼人
脚本:後藤法子

進民党は26区から候補者を出さなかった。
まあ、従来の政治セオリーに乗っ取れば
ある意味、当然の作戦か。

ということで選挙戦には時間を割かずに描けたわけだけど、
もう少し当落の差や大衆党の様子を
描いてもよかったんじゃないかな。
あと、真子(ともさかりえ)の絵本の出来も。
いくら2度目の選挙戦と言ってもあっさりし過ぎていた。

ただ最後、黒川(寺田農)に
“国民に嘘をついても組織に戻りたくなる。
 政治とはそういうもの”
とハッキリ言わせたのはインパクトがあった。

あと2話。
無所属の立場で政治を変える、
あるいはそのための具体的な方法まで描ければ、
それはそれで面白いかもしれない。

今回の昂(吉田栄作)と昂の父親のエピソードは、
昂が政治家を目指すことにした動機の一部でもあるので
入れる意味は大きかったと思う。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『新しい風』  第10話

演出:松田礼人
脚本:成瀬活雄

今回だけに関して言えば
相当に質の高い政治ドラマだった。
しかも妥協せずに工夫すれば
こんなに多くの内容を一話で描けることも示した。

政治の暗部も描いたのに
やはり過度な演出はしていなかったし、
善と悪という単純な構造にもしていなかった。
国民の無関心もきれいにセリフに折り込んでいた。

バイパスでの子供の事故死は
ストーリー上の盛り上げ効果も狙ったとは思うけど、
バレー中継の音楽「白鳥の湖」を流したまま
一滴の血も映さず2分半ですべてを描いた演出は秀逸。
とにかくほとんどムダのない1時間だった。

ただ、作品全体を考えれば
今回の昂(吉田栄作)と真子(ともさかりえ)は
どう考えても萌(森迫永依)に寂しい思いをさせているし、
真子の絵本作家の夢も両立できているとは思えない。

1・2話とその後でも感じたテーマのぶれを
今回も感じてしまったのが残念だった。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『新しい風』  最終話

演出:三城真一
脚本:後藤法子

小田島(小野寺昭)の辞任まで描いたのは
ちょっと出来すぎか。

でも、国民が政治に参加する、
腐敗した国会に新しい風を送り込むという
理想を描いた作品と考えれば許せる範囲かな。

今回も足の引っ張り合いをする政治家、
それを面白おかしく書くマスコミ、
そしてそれを信じる国民という構図は
分かりやすく描いていた。

年金問題に例えた部分はリアリティーがあったし、
子供が何気なく言ったひとこと
“新聞の広告に載ってたもん”というのは
怖いくらい現実を語っていた。

家族とのつながりについても
綾(小田茜)の存在で何とか最後まで引っ張った感じかな。

この作品、最後まで見ると
かなり真正面から現代を捉えた政治ドラマだった。
1・2話はもっと家族をメインにするような描き方だったので
そういう意味での違和感はずっと拭えなかった。

初回の脚本家がそれ以降一度も書いてなかったりするので、
何かしらの混乱はあったのかもしれない。

少なくとも真子(ともさかりえ)が絵本作家になるパーツは
最後まで活かせなかったし、
結果的にはジャマなエピソードになってしまった。

ただ、それぞれのシーンに関しては、
このドラマは一貫して丁寧に作られていたと思う。
視聴率は最低で営業的には失敗だったけど、
スタッフのセンスや志は
今期のドラマの中ではトップクラスだったと思うし。

キャストも豪華で見ごたえがあった。
とくに寺田農、伊藤蘭といった役者を脇で使えたのは
作品全体に重みを出せたと思う。

本当にもったいなかったな。
現実の参院選公示日に最終回を迎えるという
タイミング的にもバッチリだったのに
見てもらえないんじゃ…。

マイナス面も多々あったので
見逃した人は損をした、とまでは言えない。
でも、個人的には今期このドラマがあって助かった。
今回のスタッフにはまた別のテーマで
質の高い作品を作って欲しいと思う。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

           平均採点  6.86(10点満点平均6)






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