タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『僕と彼女と彼女の生きる道』 1/6〜
フジ系 火曜10時  期待度 ★★★★☆

「僕の生きる道」に続くシリーズ第2弾。
前作とはまったく別の話で、
今回は親子、夫婦の絆をメインに描く。

主演は前作と同じ草なぎ剛。
スタッフも基本的には変わらないが、
メイン演出が星護ではない。
これがどう響くかに注目したい。

共演は小雪、りょう、
前作にも出ていた小日向文世、大杉漣も出演する。




『僕と彼女と彼女の生きる道』  第1話

アソシエイトプロデューサー:石原隆
プロデューサー:重松圭一、岩田祐二
演出:平野眞
脚本:橋部敦子
音楽:本間勇輔
主題歌: ?
制作:関西テレビ、共同テレビ
出演:草なぎ剛、小雪、りょう、美山加恋、長山藍子、大杉漣、小日向文世、
   東幹久、山口紗弥加、要潤、浅野和之、大森南朋、田村たがめ、他

こりゃまたスゴイ所を突いてきたな。
少なくとも前作の評判に乗じて
ただシリーズ化しただけの作品ではない。
もしかしたら最初からこのテーマもやりたかったのでは?
と思わせるくらいの切り込み方だった。

メイン演出が星護から平野眞に代わったことも
マイナスの影響は出ていなかった。
世界観は前作の良い部分をきちんと引き継いでるし。
大したもんだ。

内容的には、ある意味、前作以上に重たい。
でも最終的には“僕と彼女と彼女の生きる道”になると思う。
その描き方の取っ掛かりはやっぱり父親(大杉漣)との関係か。
愛情の抱き方は連鎖するからな。

子役の美山加恋は非常にいい。
表情も声も。
この作品で子役の出来は全体の印象を左右するので
彼女のキャスティングは成功と言えるだろう。

いずれにしても前作同様、
最後まで目を逸らさずに見ていきたい。

ちなみにこの第1話のエンディングロールで
主題歌のタイトル・歌手名の表示はなかった。
たぶんゴローちゃんだと思うけど…。
このへんは妙にビジネスの香りがするよな(笑)

             採点  8.0(10点満点平均6)





『僕と彼女と彼女の生きる道』  第2話

演出:平野眞
脚本:橋部敦子

第1話でもゆら(小雪)が年収4000万円を捨てた、
というセリフがあったけど、
今回、徹朗(草なぎ剛)と同じ、
いやそれ以上にエリートだったことがハッキリ語られた。

もしかしたら子供を産んだことも、
捨てたこともあるかもしれない。
少なくともこれでこのドラマにおける
ゆらの存在理由がハッキリした。

一方、母親である可奈子(りょう)からは
凛(美山加恋)を愛していないという言葉も語られた。
これを自覚して夫に告げるシーンは重たかった。

子供を愛していない親なんかいない、という
テレビの前の言葉を封じるように、
宮林(東幹久)に言わせた“みんな自分が普通かよ”
というセリフは良かったな。

凛のことを思うとツライ描写が多いけど、
ラストで徹朗の最初の一歩が…。

どうやって愛すればいいか、
メンツを捨ててゆらに聞いたシーンも良かったし、
“ハーモニカを買ってください”という
ゆらのアドバイスも良かった。

             採点  8.0(10点満点平均6)




『僕と彼女と彼女の生きる道』  第3話

演出:平野眞
脚本:橋部敦子

今まで凛(美山加恋)の辛い境遇を散々見てきたのに、
動物園で凛が声をあげて笑うシーンが一番泣けたよ。号泣だよ。

それにしても今回は珠玉のシーンが満載だったな。
レーズンパンのシーンとか(凛の“両方食べてもいいですか?”)、
ピザを食べるシーンとか(2人で一緒に“垂れる!”)、
ハーモニカを吹くシーンとか(徹朗の“吹いてもいい?”)。

2人の関係が少しずつ変わっていく過程も丁寧に描写されていて、
第1話ではあんなに離れていた出社・登校時の2人の距離が
ぐっと近くなっている場面などは象徴的だった。

動物園のベンチで声をあげて笑うシーンも、
その前のピザを食べるシーンで
笑い出しそうだったけど2人してためらったシーンがあったから活きた。

徹朗(草なぎ剛)が凛をおそるおそる抱きしめた時の
凛の穏やかな表情も良かったし、
徹朗とこれからも一緒に暮らすことになった日の
ぐっすり眠る凛の寝顔も良かったし…。
本当に丁寧な作りだったな。

徹朗と可奈子(りょう)があっさり離婚してしまった展開も、
テーマをきちんと捉えているという意味で納得。

あえて不満点を挙げるとすれば、
2話で可奈子が凛を愛していないという言うシーンや
この3話で徹朗が凛を抱きしめるシーンなど、
かなり決定的なシーンを予告で流してしまっていること。

もちろん、それ以上のシーンも用意されているので
すべてを見せているわけじゃないけど、
もう少し予告の作り方には気を使って欲しい。

全体的な展開が早いので、
このまま素直に愛し合う親子になれるとは思えない。
もうひとりの“彼女”もまだ本格的には絡んでないし。

1秒たりとも目が離せない。

             採点  8.5(10点満点平均6)




『僕と彼女と彼女の生きる道』  第4話

演出:三宅喜重
脚本:橋部敦子

今までの流れからすると
前半はややセリフが平坦だった印象。
状況を説明するシーンが続いたから仕方ないんだけれども…。

ただ、最後に凛(美山加恋)が逆上がりをできた瞬間、
徹朗(草なぎ剛)が泣いた心理はよく描けていたと思う。

子供を愛していなかったという自覚、
愛し方が分からない戸惑い、
そして愛してみようという努力が3話までだとしたら、
あの涙は自然と湧き上がる“愛おしい”と思う気持ちだった。
そこがきちんと描けていた。

徹朗が父親(大杉漣)の生き方について考えている最中だったので
やっとできた逆上がりを見逃すのでは?と心配したけど、
救われた気分だった。
ああいう時は見ている方も自然と凛に感情移入してるもんだな。

冒頭のココアのシーンも個人的には好きだった。
凛も徹朗に少しずつ心を開いてきて、
お父さんと同じものが飲みたいと思ったような描写で。

で、ココアの入れ方を教わったら、
それを楽しそうに何度も繰り返したりするだよね。
そういう姿を今までの徹朗は見てこなかった、
いや、見ようともしなかったわけだけど。

凛のことを愛おしいと思うようになった徹朗が
今後どういう行動を取っていくのか、
次回も期待したい。

…だから予告で見せすぎだっつーの(笑)

あ、ちなみに今回のエンディングロールで
主題歌は『Wonderful Life』 &g と表示があり、
その &g が稲垣吾郎であることも後日発表された。
やっぱりね。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『僕と彼女と彼女の生きる道』  第5話

演出:平野眞
脚本:橋部敦子

最初、凛(美山加恋)の学校でのイジメ問題は
話を広げすぎるんじゃないかと思ったけど、
教師(浅野和之)の対応と絡めながら
徹朗(草なぎ剛)が父親として
本気で凛に接していくという流れだったので、
最終的にはそんなに気にならなかった。

体操着袋が無くなったことで
凛が母親(りょう)を恋しく思うという効果もあったし。

それにしても、ゆら(小雪)が予想以上に
徹朗親子の生活に入り込んできたなあ。
今回の徹朗からの2度の電話(夜中と体操着袋が見つかった直後)は、
これまでとは明らかに意味の違うものだった。

でも、ゆらに
“近くにいる大人が
その子のことを見てあげられるなら
それでいいんじゃない?”
という一般的なメッセージを言わせてるくらいだからなあ。
どうなるんだろう、今後この関係は…。

今回のマイナスポイントは、
徹朗が連絡帳に先生への要望を書くシーンで、
ゆらとのやり取りを引っ張りすぎたこと。

一応、徹朗もエリート銀行員なんだから、
最後に「よろしくお願いします」を付けないなんてことは
さすがにないと思うんだよね。
これ、オトナ語だし(笑)

そういえば、坪井(山口紗弥加)のキャラもいいよなあ。
この先どういう風に絡んでくるのか、これも非常に興味深い。

ちなみに今回の一番の泣き所は、
体操着袋が見つかった後、
それを抱えて勉強を始めた凛を
徹朗が後ろから見つめていた時の目だった。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『僕と彼女と彼女の生きる道』  第6話

演出:三宅喜重
脚本:橋部敦子

物語の中盤らしく、
いろいろな要素が断片的に重なり合った回だった。

まず、凛(美山加恋)に関しては
前回のイジメ問題が何とか解決し、
学校へ行くまでの展開。

凛自身の努力もよく描けていたし、
徹朗(草なぎ剛)の接し方も
これまでの流れを受けて微笑ましかった。

母親(りょう)との関係はまだ何も解決していないので、
夜中に凛が泣き出すシーンは
あまりにも可哀想でもらい泣きしたけど。

徹朗の父親(大杉漣)の描き方もせつない。
徹朗が父親を客観的に見始めていることが
父親にも感情移入できる要因になっていて哀しいんだよな。

ゆら(小雪)の微妙な感情も
ドラマとしてはアクセントになっていた。

そして徹朗との会話、
バーでの宮林(東幹久)との会話などで
そのキャラクターが一気に描かれた部長(小日向文世)が
最後に飛び降り自殺をするという衝撃の展開に。

そっちか!って感じだったと思う。
前回の予告を見てしまった人たちにとっては…。

また厳しい現実を突きつけてきたなあ。
やっぱりまだまだ先がありそうで見逃せない。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『僕と彼女と彼女の生きる道』  第7話

演出:高橋伸之
脚本:橋部敦子

井上部長(小日向文世)は助かっていた。
でもその後、急変して死亡という展開に。

ここはかなり強引な展開だったけど、
「僕」の生き方を描く上では
徹朗(草なぎ剛)と部長を直接会話させた方が
説得力が出るという判断だったのかもしれない。

ただ、どんな飛び降り方をしたのか、
どの程度の外傷だったのか、
何が原因で急変したのか、というあたりを、
簡単でいいのでセリフで説明してもよかったと思う。
病院での部長の姿もきれい過ぎたし…。

それでも徹朗がトイレで「禁煙」の文字を見て
ふいに号泣するシーン、
ベッドで凛(美山加恋)を抱きしめるシーンは
「僕生き」らしくて良かった。
映像の力を信じて書かれた脚本だと思う。

そして徹朗とゆら(小雪)の関係は
坪井(山口紗弥加)が絡んできて複雑に。

このパーツに関しては、
ゆらが夜中に鍋を洗うシーンと、
坪井が徹朗を送ってきた朝のシーンが良かった。

凛の“…ハイ!”はもう名人芸の域に達してるけど、
あの朝の不機嫌な“…ハイ”は最高だったな。
大女優だよ、美山加恋は。

物語はいよいよ母親(りょう)が
凛を迎えに来るという方向に。
いくら“愛していなかった”と告白しても
これは別にムリのない流れだ。

この母親の心理、徹朗との関係、
そしてゆらとの絡みなど、
次回以降、また新たな展開を期待したい。

             採点  7.5(10点満点平均6)





『僕と彼女と彼女の生きる道』  第8話

演出:平野眞
脚本:橋部敦子

ゆら(小雪)にはこういう役割も与えていたのか…。
改めて構成の用意周到さを支持したい。

物語は第二部に入って、
可奈子(りょう)が凛(美山加恋)と暮らしたい
と言い出す展開になった。

こうなると子供を持つ夫婦の離婚という、
テーマとしては何度も描かれているものになるわけだけど、
このドラマはそこに見ている者の集中力を切らさないエピソードと
説得力のある内容を盛り込んでいると思う。

まずはそのゆらの存在だ。
プロポーズをしてくれた亮太(大森南朋)に対して
“好きな人がいる”とまで口にしたゆらが、
凛に遊園地へ行こうかと誘った時に言われた
“3人がいい。凛とお父さんと、お母さん”という言葉。

パニックになったら電話をかけてくださいと
自分から告げていた徹朗(草なぎ剛)に言われた
“今の俺なら可奈子とやり直せるんじゃないか”という言葉。

これには重みがあった。
単に第三者としての女性ではなく、
徹朗が変わっていく過程で、
両親の離婚後、凛が精神の安定を保つ過程で、
重要な役割を果たしたゆらだからこそ出る重みだ。

坪井(山口紗弥加)の存在も含め、
今後、ゆらをどう描いていくのか、
非常に興味深いところだ。

そしてメインとなる、徹朗、可奈子、凛の関係。
徹朗が凛に今の状況を説明する過程で
分かったらピースサインをさせる描写は
ドラマチックなやり方だったと思う。

その中で“もう3人で一緒には暮らせない”という説明に
凛が翌日、土手でピースサインをするシーンは哀しかった。
子供がそんなにもの分かりよくならなくていい。
最後まで3人で暮らしたいと言い張っていい。
そう視聴者に思わせる哀しさがあった。

だからこそ、その後で徹朗が
可奈子とやり直す選択肢を選ぼうとしている行動にも説得力が生まれた。
ここは見事な流れだったと思う。

今回は他にも、
娘をひっぱたきながら家へ帰ってきなさいという
可奈子の母(長山藍子)の気持ちとか、
徹朗が食事を作っていないことについて母親と話した後、
食事を作ってくれと徹朗にせがむ凛の姿とか、
久しぶりに母親とレストランに入って
凛が足をバタバタさせているカットとか、
印象深いシーンは多かった。

今後、可奈子が徹朗の変化をどう受け取るのか、
その中で徹朗と父・義朗(大杉漣)の関係をどう描くのか、
さらに興味がわいてきた。

             採点  8.5(10点満点平均6)




『僕と彼女と彼女の生きる道』  第9話

演出:三宅喜重
脚本:橋部敦子

やり直したいと言う徹朗(草なぎ剛)の言葉を
可奈子(りょう)は受け入れず、
2人の関係は家裁の調停から審判という
「クレイマー・クレイマー」状態へ。

その中で今回は主に
徹朗の迷い、不安、イラつきが描かれた。

前回もそうだったけど、
変わったはずの徹朗の不完全さが
所々で描かれている部分がいい。

今回で言えば、
レストランで同僚に陰口を言われるシーンや
ドラッグストアでクリームを買うシーンなどで、
徹朗のプライドを捨てる難しさが出ていた。
これは今期の連ドラの統一テーマか?(笑)

注目だった義朗(大杉漣)の心境にも変化が。
ただ、ここはもう少し丁寧に描いた方がよかったような気がする。
少なくとも今回の中で義朗自身に
“知らなかったよ、徹朗があんな顔して笑うなんて。
 あれが父親の顔というものなのか”
というセリフは言わせなくてもよかったんじゃないかな。

可奈子が母(長山藍子)と暮らすことになって
可奈子と母の生き方も対比ができるようになった展開は
良かったと思うけど。

ラスト2回、
親子の絆、夫婦の絆を描いている作品だけに、
ストーリー的にはゆら(小雪)をどう使うかに
興味が絞られてきた。

             採点  7.5(10点満点平均6)






『僕と彼女と彼女の生きる道』  第10話

演出:平野眞
脚本:橋部敦子

ラストはまた「僕生き」らしかったなあ。

それはそうと、今回のお父さん(大杉漣)の描き方は良かった。
裁判所に凛(美山加恋)のことを聞かれても
何も分からないとゆら(小雪)に告白したあと、
ゆらに言われて凛を呼びに行くシーン。
スーツのボタンを留めてノックする姿。
これがあったからこそあの手紙が活きた気がする。

で、ゆらの描き方。
まずレストランで亮太(大森南朋)たちに語った言葉が印象的だった。

“距離を置いて当たり障り無くつき合う方が中途半端。
 凛ちゃんには別れを怖がって
 人を信じようとしない子になって欲しくない”

ゆらはこのドラマのストーリー上でも重要な登場人物だけど、
作家のメッセージを伝える役も与えられている。
それを小雪が淡々と演じているところがいい。

そして最後につけ加えた“…私のように”
やっぱり過去に何かあったか。

凛がゆらにサービススタンプを預けたことも
ストーリー的には大きな意味がありそう。
可奈子(りょう)の描き方が未だに曖昧だからな。
いったいどういう結末を用意しているんだろう。

あ、全12話だったのね。
ここからあと2回か。

どういう結末にするにせよ、
可奈子をどう描くかが問題だ。

             採点  8.0(10点満点平均6)




『僕と彼女と彼女の生きる道』  第11話

演出:三宅喜重
脚本:橋部敦子

父親(大杉漣)と母親(長山藍子)の描き方が
今回も丁寧で良かった。
やっとネクタイを外せた父親。
象徴的なシーンだった。

そして3人で遊園地へ行きたいという凛(美山加恋)の提案を
徹朗(草なぎ剛)が可奈子(りょう)に電話で伝えた時、
また3人で暮らすことを期待するという可奈子の言葉に
凛はもう3人で暮らせないことは分かってる、と答える徹朗。

遊園地では無邪気に遊んでいた凛が、
家に帰ってきた後に
“もう絶対、3人一緒って言わないから”
と言ったのがツボだった。
徹朗じゃなくても抱きしめたくなるって。

審判の結果はやはり母親である可奈子側に親権が。
ラストは徹朗と凛の
静かな、深い悲しみに満ちた別れとなった。

草なぎ剛の演技も立派だったけど、
美山加恋も大女優だな。

ところで、可奈子が7年間に渡って綴っていた凛の成長日記の存在や、
徹朗がゆら(小雪)との会話の中で
可奈子と暮らしていた時期を改めて振り返ったりすることで、
可奈子がどういう気持ちで7年間を過ごし、
どういう気持ちで家を出ていったのかは描かれた。

でも、これではまだ可奈子について半分しか語られてないだろう。
なぜ凛を置いていったのかをもう少し詳しく描かないと。

最終回はぜひここを描くことで
結末に説得力を与えて欲しい。

そして母親の決断に、まだ
“いいよ、それでも。それが私に対する罰ならば”
としか応えられない可奈子の心も救って欲しい。

             採点  8.0(10点満点平均6)





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