タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

>>バックナンバー >>ドラマ別レビュー



『電池が切れるまで』  4/22〜
テレ朝系 木曜9時  期待度 ★★★☆☆

ベストセラーとなった
長野県立こども病院・院内学級で学ぶ子供たちの詩画集と
そのドキュメンタリーが原作。

田中康夫知事に交渉し、
原作の舞台となった病院でもロケをしているという。

院内学級へ赴任してきた国語教師・財前直見と
彼女と対立する医師・陣内孝則を中心に、
命の大切さを描く。

テレ朝は普通のドラマを作るとダメだけど、
極端なコミックドラマか
実話ベースの感動モノを作ると精度が高い。
なのでこれも外さないと思う。

「こころ」の倖、黒川智花も
院内学校の生徒役で出演する。




『電池が切れるまで』  第一話

チーフプロデュース:五十嵐文郎
プロデュース:川島保男、中込拓也
       椿宜和、藤本一彦(角川映画)
演出:藤田明二(共同テレビ)
脚本:江頭美智留
原作:『電池が切れるまで』すずらんの会編
   『「電池が切れるまで」の仲間たち』宮本雅史
音楽プロデュース:葉加瀬太郎
主題歌:「ひまわり」星村麻衣
オープニングテーマ:「君の分まで」平川地一丁目
制作:テレビ朝日、角川映画
出演:財前直見、陣内孝則、野際陽子、原沙知絵、要潤、吉岡美穂、デビット伊東、
   河合美智子、黒川智花、成美璃子、美山加恋、谷本一、近江谷太朗、
   糟谷健二、篠田拓馬、柳楽優弥、横山亜里紗、斎藤千晃、松本梨菜、他

内容はもちろん感動的なんだけど、
脚本も演出も音楽の入れ方も今イチだった。
間宮(要潤)のキャラも工夫がないし。

原作に頼らず、
ドラマとしてのクオリティーをもう少し上げて欲しい。

関係ないけど、結花を演じていた子、
「川、いつか海へ」なんかの時は塚本璃子だったけど
このドラマでは成美璃子になっていた。
研音に移籍して改名したらしい。

研音かあ。
…この世渡り上手!(笑)

             採点  6.0(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  第二話

演出:藤田明二
脚本:江頭美智留

「命」を書いた結花(成美璃子)の死を描いた回で
内容的にはさすがに泣けた。

結花の心臓が停止したシーンで
末永(陣内孝則)にまだ諦めないで、と言うさとり(財前直見)と
もう楽にしてあげて、と言う両親の対比は、
自分の親も結花と同じ小児ガンで最初の子を亡くしているので
見ていてつらかった。

ドラマ的には次回から美山加恋が登場するようなので
むしろここからが勝負だろう。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  第三話

演出:唐木希浩(5年D組)
脚本:遠藤彩見

美山加恋はとりあえず登場しただけ。
今回は黒川智花がメインだった。

長期入院している子どもの心理、
院内学級の意味、
院内学級に対する考え方の違いなど、
相変わらず見どころは多い。

でも、ドラマとしてすごくクオリティーが高いかというと、
そうでもないんだよな、やっぱり。
スタッフにはもう少し頑張って欲しい。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  第四話

演出:唐木希浩
脚本:江頭美智留

「私の青空」の太陽、
修平(篠田拓馬)にスポットが当たった回。

それにしても子役は豪華だ。
美山加恋だけでなく、
「ニコニコ日記」の永井杏まで控えてるよ。

しかし、そうなると余計にもったいない。
もっとうまく作れるはずなんだけど。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  第五話

演出:藤田明二
脚本:江頭美智留

ああいう考えの校長もいるだろうけど、
もう少し描き方を工夫して欲しかった。

扱っている内容は良くても
ドラマとしての質が今ひとつ上がらない
典型的なシーンかもしれない。

子供に対して一生懸命になりすぎてしまう教師と、
冷静に、大局的に考えようとする
医師の対比を描きたいのは分かるけど…。

病気の子供が車の中にいるのに
川の向こうからサッカーボールを蹴るというのも、
登場人物の感情だけを優先した冷静さを欠く描写だった。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  第六話

演出:藤田明二
脚本:遠藤彩見

このドラマの子役が豪華なことは周知の事実だけど、
なんと大地役の柳楽優弥がカンヌ映画祭で男優賞を受賞。
作品としては切れかかった電池に
掟破りの充電をするようなニュースとなった。

しかし、ドラマを見慣れている者からすると
このニュースは長谷川がメジャーリーグで
通用したような驚きはあったな。

長谷川が活躍できるなら
国内にはまだまだ世界で通用する人材がいるぞ、みたいな。

今回もそんな豊富な人材の中から永井杏、斉藤千晃にスポットが当たった。
斉藤千晃は「まんてん」で満天の子供時代を演じた子ね。

ストーリーは良かった。
今までとは違い、
元気になって退院していく子供達の不安を
院内学級のもうひとつの意味を示しながら描いた。

そういう意味ではさとり(財前直見)とも
末永(陣内孝則)とも考え方の違う
相馬(大杉漣)のキャラは効果があった。

ただ、やっぱりいつものように仕上がりの雑さは感じたな。
今回はとくに脚本をもっと練っても良かったと思うけど。

あと、子役が頑張ってるんだから
吉岡美穂ももう少し頑張れ、とだけ言っておきたい。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  第七話

演出:唐木希浩
脚本:江頭美智留

そば打ちの後に慎吾(笠原織人)が
こんなオレでも何かできるのかな、と言うシーンは、
まさに教育テレビのような脚本と演出だった。

まあ、最初から本当に学校教材を意識してるのかもしれないけど、
これじゃやっぱり連ドラとしてのクオリティーを求めるのはムリかな。

今回は相馬(大杉漣)の最後の授業ということで、
やたら真耶(美山加恋)との絡みが多かった。

“おじいちゃん! …あ、間違えた”
というセリフを期待したけど、
もちろんそんなサービスはナシ。

せめて最後に相馬が言った
“(またおそばを打ってくれるのを)楽しみにしてるね”
というセリフの返事は
“うん!”じゃなくて“はいっ!”と言って欲しかったな。

ゲストで登場する患者のお母さん(今回は石野真子)は、
なぜかいつもいい芝居をする。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  第八話

演出:常廣丈太(テレビ朝日)
脚本:江頭美智留

龍輔(佐野観世)と母親(高橋由美子)のエピソードに関して言えば
院内学級が舞台である必要性はあまりなかった。

ひとつの母子の話としては悪くなかったし、
龍輔が母親と別れたあと、
何も言わず父親(水口てつ)に抱きついて泣いたシーンは
かなり良い演出ではあったけど…。

ラストへ向けて必要な前振りがいくつかあったとはいえ、
もう少し龍輔が病気で苦しんでいることも絡めて欲しかった。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  第九話

演出:唐木希浩
脚本:遠藤彩見

そういえば再生不良性貧血という病気を初めて知ったのは
山口百恵の「赤い疑惑」だったなあ。
あれは事故でコバルト60を浴びたんだけど…。

このドラマはそんな事故も出生の秘密もないけど
妙なチープさをかもし出すのは
財前直見の小学生のような指揮のせいか?

美山加恋に見せ場があったのは良かった。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『電池が切れるまで』  最終話

演出:唐木希浩
脚本:江頭美智留

薫(黒川智花)の移植が成功し、
元気に退院したところで終了。

“私の電池は私だけのものじゃない”と、
移植と「命」の詩を絡めたことで
最終エピソードとしての体裁は整っていた。

リスクの高かった母親からの移植にしたことで、
長期入院する子供と親との関係も描けたし。

原作が原作なだけに、
描こうとしている内容は最後まで良かった。
ただ、その作り方が安っぽかっただけで。

スタッフだけでなく、
財前直見にもその責任はあるな。
キャラ設定とは別の次元で品がなかった。

豪華な子役陣を十分に使いこなせなかったのも
かなりもったいなかった。
まあ、すべては脚本と演出が原因だと思うけど。

結局はテレ朝らしい作りの作品だった。
でもこれを見て小さい子が命を大切に思うようになれば
それはそれでドラマ化した意味はあると思う。

             採点  6.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  6.30(10点満点平均6)





[ロビー田中の自己紹介]


[トップへ]