タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『伝説のマダム』 4/14〜
日テレ系 月曜10時 ★★☆☆☆伝説のドレスメーカー“マダム・マリ(桃井かおり)”が
ウエディングドレスを通じて花嫁に人生の決断を迫り、
本当の幸せを問いかける、という話。日テレがよく失敗するパターンではあるけど、
桃井かおりが打ち合わせの段階から参加している点、
共演が永作博美という点で、
かすかに期待を持ちたい。
『伝説のマダム』 第1話
チーフプロデュース:藤井裕也(よみうりテレビ)
プロデュース:前西和成、堀口良則(よみうりテレビ)
大森美孝、大沼睦美(日本テレビエンタープライズ)
演出:藤井裕也
脚本:野依美幸(アシスト:マダム・マリ)
原作:横谷順子「男たちのウエディング・ウエディング」
音楽:中村竜哉
主題歌:「孤独なカウボーイ」矢井田瞳
制作:よみうりテレビ
制作協力:日本テレビエンタープライズ
出演:桃井かおり、永作博美、草刈正雄、高田万由子、大浦龍宇一、
日野陽仁、杉崎政宏、他相当、面白い。
ちょっと想像とは違ったんだけど、
いい方向に裏切られた感じだ。教会の懺悔室を通じて
マダム・マリ(桃井かおり)とコンタクトが取れる、
というあたりの設定では
エンターテイメント性も十分あって、
毎回登場するであろう花嫁を通しての
恋愛・結婚に関するエピソードでは
シリアスな部分も描くことができる。構成、演出が非常に良くて
作品全体としてのまとまりを感じた。マダム・マリのキャラクターも
完全に悟りきっている人間ではなく、
自ら悩みながら花嫁に幸せとは何か、
結婚とは何かをアドバイスしていくところがいい。この初回は、
永作博美をメンバーに入れるという都合があったため、
相手が死んでしまうという展開になった。いきなりこのストーリーは無しだろう、
という気もしたけど、
とにかく全体の作りに統一した意思を感じたので、
次回以降に期待感を抱けた。最後の目覚まし時計の使い方なんかは
結構、泣ける演出だったしね。これが今期の大穴かも。
ところで、これもコミック原作だったんだね。
(ちなみにこの初回はオリジナルストーリーだったらしい)
かなり昔に雑誌掲載された作品で、
今回のドラマ化を期に初めて単行本発売されたらしい。原作者本人のHPでも、
自ら「原作者が無名なので漫画原作であることに気づいてもらえない」
と嘆いていた(笑)設定や作品の雰囲気などは原作と違うんだろうけど、
ドラマとしてはしっかり作ってある。こういう形で昔の本が日の目をみるのはいいことだと思う。
ずっと企画を温めていたというスタッフはエライな。採点 7.0(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 第2話演出:藤井裕也
脚本:野依美幸(アシスト:マダム・マリ)内容はやっぱりかなりイイ。
基本的には感動的なストーリーなんだけど、
コメディーチックな笑いも
きちんと散りばめているところがイイ。ただ、ちょっとバタバタした構成ではあるな。
今回の話なんか2時間で見たかった感じ。玲子(永作博美)もすんなりとメンバーに入って、
ドラマ全体の雰囲気はもう確立しているので、
今後も質の高いストーリーを期待したい。採点 7.0(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 第3話演出:新城毅彦
脚本:野依美幸(アシスト:マダム・マリ)今回のストーリー自体はかなりストレートだった。
ただ、構成として玲子(永作博美)のエピソードを絡めたり、
マダム・マリ(桃井かおり)の過去を
匂わせていた点が良かったと思う。ゲストは女優陣に比べて男優が少し物足りない感じ。
「男たちの〜」なんだから男優にも気を使って欲しい。とは言っても完成度は相変わらず高い。
今回、お墓のシーンはとくに美しかった。採点 7.0(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 第4話演出:新城毅彦
脚本:野依美幸(アシスト:マダム・マリ)すさまじいドレスだなあ。
このドレスは全然いいと思わなかったけど、
内容は今までで一番良かった。花嫁の父(小野武彦)と新郎(塚本高史)が
いい味を出していたというのも大きいな。
桃井かおりと塚本高史のやり取りも最高だった。遠藤久美子も想像以上に良かったんだけど、
「笑う犬」のコントで鍛えられたのかな。ただ、今回はちょっと
玲子(永作博美)の存在意味が分からなくなった。
次回以降、玲子の描き方にも気をつけて欲しい。採点 7.5(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 第5話演出:白川士
脚本:野依美幸(アシスト:マダム・マリ)ラストカットだけキレがなかったけど、
内容は今回もかなり良かった。玲子(永作博美)だけでなく、
他のスタッフもこれくらい絡んでくると存在感が出る。そのぶん、マダム・マリ(桃井かおり)の混ざりシーンは
やや少なかったんだけど、
回想シーンの髪型がオカッパだったのは粋な演出だった。完全にスタイルが確立されていて
安心して見ていられるドラマだ。採点 7.0(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 第6話演出:日名子雅彦
脚本:野依美幸、李正姫(アシスト:マダム・マリ)キレイ事を言うのではなく、
結婚するなら簡単には消せない過去もある、
ということをきちんと描いた点は良かった。ただ、やっぱりTVドラマということで
最後に武彦(今井明彦)がいつか家族を説得する、と
マダム(桃井かおり)たちに言いに来るシーンをつけてしまった。これをつけるなら、
どうして京子(吹石一恵)は武彦を好きになったのか、
なぜ武彦はそこまでして京子を愛そうと思ったのか、という
2人の出会いや恋愛の形についての描写をしなくてはいけなかった。慎之介(大浦龍宇一)が教会から京子を連れ出すシーンには
それなりのカタルシスがあったので、
武彦が迎えに来るシーンは思い切って無くしてもよかったのに…。ただ、相変わらず全体のトーンは安定していて、
今回もマダムと慎之介の会話シーンなどはすごく良かったと思う。この6話から最後まではオリジナルストーリーのようなので、
プロットには十分に気を使って欲しい。採点 7.0(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 第7話演出:新城毅彦
脚本:野依美幸、川上徹也(アシスト:マダム・マリ)オリジナルの話だけど
「男たちのウエディング」という内容で良かった。キャスティングがバッチリだしね。
松方弘樹はもちろん、中澤姉さんも。物音がして
ナオミ(中澤裕子)が組長(松方弘樹)を
かばったシーンは、
そんな経験あるんじゃないの?
って気さえした(笑)ただ、強いて言えば、
今回も組長とナオミの出会いを
もう少し描いて欲しいとは思った。そこがあって
組長がどれだけナオミを愛していたかが分かれば、
最後の組長の判断ももっと感動的なものになったのに。全体の質は高いし、
ムダなシーンが多いとも思わないので、
もっと長い時間で描くべき作品なんだろうな。2時間ドラマで続編を作れると最高なんだけど、
今の視聴率じゃムリだろうな。
残念だ。採点 7.0(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 第8話演出:日名子雅彦
脚本:野依美幸(アシスト:マダム・マリ)国際結婚がテーマでいいセリフも多かったけど、
今回は全体的に落ち着きがなかった。今までは思い切ってカットしていた部分も
すべて詰め込んでしまったような感じ。
これはこれで見にくいなあ。いよいよマダム(桃井かおり)の過去も
明らかになっていくようなので、
最終回に向けてスッキリ描くことを心がけて欲しい。採点 6.5(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 第9話
演出:新城毅彦
脚本:野依美幸(アシスト:マダム・マリ)衝撃の展開。
ずっと謎の人物だったダイゴは、
マダム・マリ(桃井かおり)自身だった。ただ、実に計算された構成だったと思う。
急にこういう話にしたわけではなく、
前振りは少しずつしていた。
だから納得の展開だった。そしてラストのマダムの涙。
これは圧巻だったなあ。この作品の本質でもある家族愛をきちんと描きながら、
見事にまとめたオリジナルストーリーだった。採点 8.0(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 第10話演出:白川士
脚本:野依美幸(アシスト:マダム・マリ)マダム・マリの偽物が登場するという展開で、
結末は最終回へ持ち越された。
もちろん、次回はそのことだけを描くわけではなく、
ドラマ全体に対して何だかの結末を用意すると思うけど。ただ、個人的には今回の描写でも
かなり結論めいたものは感じたな。マダム(桃井かおり)が性転換をした時、
ゼームス(草刈正雄)は確かに逃げてしまったけど、
今の関係は夫婦みたいなもんだもんね。ウエディングドレスを通じて、
夫婦や家族を描いてきたドラマなんだから、
ここは最も納得できる落とし所だと思う。“友情にしては熱すぎる。
恋というには古すぎる。
…それを人は夫婦と呼ぶんです”採点 7.5(10点満点平均6)
『伝説のマダム』 最終話演出:白川士
脚本:野依美幸(アシスト:マダム・マリ)偽物に関するエピソードは、
マダム(桃井かおり)がヒカル(夏木マリ)に
自分の果たせなかった夢を託すという形で
名前を譲ってしまう意外な展開。ただこれは世界中にマダム・マリはいるのかも、
という提示になっていてなかなか面白かった。マダムとゼームス(草刈正雄)の関係については、
もうすでに分かっている内容を
くどく説明するような場面があってややマイナス。この手のドラマは感性で理解する部分も多いので
ヘンにかみ砕く必要はなかったんじゃないかな。玲子(永作博美)は結局、
ストーリーには大きく絡んでこない存在だったけど、
マダム・マリと世間を繋ぐような役割は果たしたと思う。本当に幸せになりたいと思えば、
誰でもマダム・マリを見つけられると思うしね。
ラストの玲子のように。だってドレスが幸せにしてくれるわけじゃなくて、
本人の努力によってつかみ取れるものなわけだから。とにかくこのドラマは、
10年間あたためた企画を
こういう形で作品にしたということ自体がすごかったと思う。そのアイディアと桃井かおりのセンスが見事に融合して
ドラマの質も化学変化的に高まったんだと思う。ジェンダーに関する奇抜な側面もうまく物語の中に組み込んで、
夫婦になることの深い愛情を描いた
ハイセンスなラブストーリーだった。採点 7.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★★☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★★☆☆
音楽 ★★★☆☆
新鮮さ ★★★★☆
話題性 ★☆☆☆☆平均採点 7.14(10点満点平均6)