タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『ダイヤモンドガール』 4/9〜
フジ系 水曜9時  ★★☆☆☆

脳天気な社長令嬢が
恋と仕事を通して成長して物語。
スタッフから判断して
典型的な共同テレビ主導のラブコメディー。

主演は観月ありさなので
「ナースのお仕事」っぽくなるかもしれない。
でも共演が岸谷五朗なのでちゃんと笑えるドラマにはなると思う。





『ダイヤモンドガール』  第1話

企画::石原隆
プロデュース:稲田秀樹、矢吹東
演出:小椋久雄
脚本:川嶋澄乃
脚本協力:山浦雅大
音楽:本間勇輔
主題歌:「Shout It Out」観月ありさ
制作:フジテレビ、共同テレビ
出演:観月ありさ、岸谷五朗、原沙知絵、谷原章介、勝村政信、白河由美、
   濱田マリ、国分佐智子、大島さと子、鷲尾真知子、正名僕蔵、牛尾田恭代、
   須賀貴匡、大塚安里、宝積有香、氏家恵、卜字たかお、他

ホントにコメディーなのか?

まあ、初回はとりあえず設定の説明が中心だから
笑いが少ないのはいいとして、テンポ悪すぎ。
ていうか、脚本が古過ぎ。

道でぶつかるのが出会いのキッカケとか、
コピーする書類と捨てる書類を間違えるとか、
朝まで一緒にゴミ捨て場で無くした書類を探すとか、
いつの時代のドラマやねん。

キャストは揃ってるのにもったいないなあ。
次回がダメならツライかも。

             採点  5.0(10点満点平均6)




『ダイヤモンドガール』  第2話

演出:村上正典
脚本:山浦雅大

早めに麗香(観月ありさ)と慎一郎(谷原章介)を会わせたのは正解。
鍋島(岸谷五朗)が扱っていた案件のエピソードから
鍋島が麗香に対して「お前はバカじゃない」と言わせたのも正解。

今回、脚本をひとりで書いた山浦雅大は
「オカンは宇宙を支配する」で
フジテレビのヤングシナリオ大賞を取った人だね。

「オカアンは〜」はアイディア一発という感じがして、
それほどうまいセリフまわしがあった印象はないけど、
今回みたいにまとめられるなら基礎はしっかりしてそう。

初回より2回目の方が書きやすいのは当然だけど、
しばらく山浦雅大の脚本で見たいな。

ドラマ全体としても少し光が差してきた。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『ダイヤモンドガール』  第3話

演出:小椋久雄
脚本:田辺満

3話で早くも3人目の脚本家・田辺満が登場したけど、
ドラマとしてはすごく面白くなってきた。

今回の離婚調停のストーリーにも
麗香(観月ありさ)のエピソードをうまく絡めていたし、
麗香と夏目(谷原章介)の関係を
早めに鍋島(岸谷五朗)に知らせたのもテンポが出て良い感じ。

鍋島と麗香のコンビもこなれてきたしな。
園田(原沙知絵)もイヤな女でない所が
話に深みが出る要素になってる。

初回はどうなることかと思ったけど、
これなら最後まで十分に楽しめそうだ。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『ダイヤモンドガール』  第4話

演出:村上正典
脚本:山浦雄大

演出と脚本は2話と同じセット。
麗香(観月ありさ)と園田(原沙知絵)を絡めながら
麗香の成長を描いたストーリーは悪くなかった。

ただ、最初にスナックで
烏山(モロ師岡)と話す機会があった時に、
麗香が普通に法律事務所で働いていることを話してしまう展開や、
割れた皿を直すことを諦めないことの象徴にするなど、
具体的なエピソードに捻りが無さ過ぎた。

こういう回をアイディアでどううまく見せるかが
そのドラマの全体の質に影響するんだけどなあ。

まあ、役者たちはだいぶキャラをつかんできた感じなので
見やすくはなっている。

             採点  5.5(10点満点平均6)



『ダイヤモンドガール』  第5話

演出:植田泰史
脚本:吉田智子

この期に及んで吉田智子の起用。
トラブってるな、これは。

ただ、修正はできてると思う。
このまま進んでいいぞ>スタッフ

今回も出来過ぎというか、ありがちというか、
お約束のストーリーだったんだけど、
精度は高かったと思う。
こういうドラマはこれでいい。

麗香(観月ありさ)、鍋島(岸谷五朗)、
そして夏目(谷原章介)の今後を考えると、
エポックメイキング的な回でもあった。

次の見どころは、
詩織(原沙知絵)がいつ、どういう形で
麗香と夏目の関係を知るかだな。

             採点  6.5(10点満点平均6)



『ダイヤモンドガール』  第6話

演出:小椋久雄
脚本:川嶋澄乃

あれ、もう吉田智子にシフトしたと思ったのに…。
でも一話完結の話としてはまとまってた方かな。

気になったのは冒頭で
佐久間(勝村政信)の妻(広岡由里子)が
麗香(観月ありさ)を間違えて叩いたシーン。

それ自体はかまわないけど、
その後に何のフォローもなかったのは不自然だった。

妻が常識はずれのいい加減なキャラクターなら
謝りもしなければテレもしなかったシーンに意味があるけど、
後半の描き方を見るとそういうキャラではなかったので。

冒頭のシーンだっただけに、
もう少し気を使って撮って欲しかった。

             採点  6.0(10点満点平均6)



『ダイヤモンドガール』  第7話

演出:村上正典
脚本:川嶋澄乃

麗香(観月ありさ)の成長、
麗香と鍋島(岸谷五朗)の信頼関係、
両方を深めるエピソードとしては良かった。

同時に夏目(谷原章介)と園田(原沙知絵)にも
お互いの気持ちを深めるようなエピソードがあって、
今後の展開を考えるといいブリッジになっていたと思う。

欲を言えば、
京極(橋本さとし)は集めた金を何に使ったか、
最後にどうやって金を工面したのか、
裁判にならなかったとはいえ
弁護費用はどうなったのか、
なども一言でいいから説明して欲しかったけど、
まあ、弁護士物語じゃないからいっか。

観月ありさは一番得意なポジションに落ち着いてきた。

             採点  6.5(10点満点平均6)



『ダイヤモンドガール』  第8話

演出:植田泰史
脚本:遠藤彩見

また別の脚本家だよ(笑)
スゴイことになってるなあ。

今回のストーリーはオーソドックスだったけど、
合間に田中(大島さと子)のエピソードを挟んだりして
飽きさせない工夫をした構成は良かったと思う。
観月ありさのコスプレ潜入捜査もあったし(笑)

ただやっぱりこの手のストーリーは
演出がお決まりのスタイルになってしまうからね。

最後に有香子(浅見れいな)と治美(水川あさみ)が抱き合って
まわりが拍手するシーンはやれやれって感じだった。

ドラマ全体としては、
ラストでついに詩織(原沙知絵)が
慎一郎(谷原章介)と麗香(観月ありさ)の過去を知る展開に。

これで話も大きく転がりそうだ。
詩織がどんな反応をするのか、
いや、麗香に対してどう接するのか。
そこに興味が湧くな。

             採点  6.5(10点満点平均6)



『ダイヤモンドガール』  第9話

演出:村上正典
脚本:吉田智子

うまい。今回はうまかった。

作品全体としては、
徐々に近づけてきた
麗香(観月ありさ)と鍋島(岸谷五朗)の関係を
さらに進めるような展開。

それをハッキリと示すために
序盤で振っておいた麗香の学生時代のクラブを
最後にチアリーダーと明かして
鍋島との相性に説得力を持たせていた。

ただ笑いを取るだけかと思われた
佐久間(勝村政信)のギックリ腰も、
担当を鍋島に代えるための理由になっていたし、
実に考えられた構成だった。

前回の終わりで
麗香と慎一郎(谷原章介)の関係を知った
詩織(原沙知絵)のリアクションを
今回は大袈裟に描かず、
自分と麗香の違いを考える程度に留めたのも
全体の流れを考えると良かったと思う。

あと、鍋島の別れた妻役で登場した森口瑤子。
彼女もいい雰囲気を出してたなあ。

ラストで耕太(金子雄)が鍋島に笹舟を渡す場面を
横で見つめていた時の表情は
今回のベストショットだった。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ダイヤモンドガール』  第10話

演出:小椋久雄
脚本:川嶋澄乃、田辺満

慎一郎(谷原章介)が麗香(観月ありさ)を
見直すエピソードはどこかで必要だったので、
ここで持ってきたという感じ。

過労死に関する案件は
それほど面白みのある描き方ではなかったけど、
ドラマ全体としては重要な回だったと思う。

これで慎一郎がどう変わるか。
慎一郎と仕事をすることで、
麗香は改めて鍋島(岸谷五朗)のことを
どう考えるのか。

流れは非常にいい方向へ転がっている。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ダイヤモンドガール』  第11話

演出:村上正典
脚本:吉田智子

最後の案件はやはり医療過誤。
鍋島(岸谷五朗)がモーリス牧村法律事務所に来る
キッカケとなった案件であり、
鍋島の“宿題”ともなっていた案件だ。

ラブストーリーという側面からは、
慎一郎(谷原章介)や詩織(原沙知絵)の
麗香(観月ありさ)に対する感情を、
もっと詳しく描くという手もあったけど、
麗香が鍋島のことをより深く知るという方法で、
麗香自身の成長、慎一郎との決別を描くようだ。

このあたりは「東京ラブ・シネマ」と比べると
非常にハイブローな感じがする。

そんな中でも麗香が鍋島に対して
“一度の失敗で怖じ気づくのは先生らしくない”
とハッパをかけるシーンがとくに良かった。

自分はピアノの先生に音楽の才能がないと言われたのに続けた。
チアガールの大会で顔面をぶつけて笑われたけど踊り続けた。
ウエディングドレスまで作ってフラれたけど人を好きになることをやめなかった。
と、一見、くだらない話から自分の本質を突きつけ、最後は
先生は甘いもの食べて虫歯になったらもう2度とケーキは食べないんですか?
ヒゲ剃ってほっぺた傷だらけになったらもう2度とヒゲは剃らないんですか?
と続けた。

これは麗香のキャラクターをとてもよく表したセリフで、
日常的な会話の中で鍋島の心を揺り動かす描写となった。
ここは想像以上にテクニカルなシーンだったと思う。

全体のストーリーとしても
モーリス君子(白川由美)が
恵成病院の代理人を受けるのは正しい判断だと思うので、
最後の戦いは非常に見ごたえのあるものになりそうだ。

それにしてもこのドラマは中盤から化けたなあ。
最終回、吉田智子が脚本を担当してくれることを密かに望む。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ダイヤモンドガール』  最終話

演出:小椋久雄
脚本:吉田智子

本来は何年もかかるであろう医療過誤の裁判を
1話で描くのだから簡潔な内容になってしまうのは仕方がない。
そういう意味では出来すぎの最終回ではあったけど、
麗香(観月ありさ)の成長物語という
作品本来のテーマはよく描かれていて、
気持ちのいい終わり方だった。

麗香と鍋島(岸谷五朗)の関係、
夏目(谷原章介)と詩織(原沙知絵)の関係も、
ハッキリとした結論までは描かず、
お互いがお互いを理解しあえたという部分で
止めた構成も良かった。

脇役もみんな個性的で良かったんだけど、
個人的にはモーリス君子(白川由美)のキャラを
少ない出番でうまく描いていたと思う。

裁判で負けたあと、
麗香に“あの時クビにしておけばよかった”と
麗香の成長を喜んでいるような言い方をしたのは秀逸だった。

結局、この最終回も脚本は吉田智子が担当。
メイン脚本だった川嶋澄乃は4話書いただけになった。

メイン脚本が最終回を書かないのは珍しい。
でもこれはハッキリ言って初回の出来の悪さが影響していると思う。
それくらい出だしは酷かった。
それでもここまで盛り返した他のスタッフには敬意を表したいと思う。

そして改めて感じたのは
観月ありさ、岸谷五朗の底力だ。

決して新しい演じ方ではなかった。
いつもの観月ありさであり、
いつもの岸谷五朗だった。

それでも最悪の滑り出しをした作品の中で
自分の個性を精一杯発揮し、
ドラマのトーンを修正してみせた実力はたいしたものだった。

このフジ系水曜9時枠は
来期からドラマが撤退するわけだけど、
最後まで諦めずに、よりいいものを作ろうとした姿勢には
拍手を送りたいと思う。

             採点  7.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★☆☆☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

           平均採点  6.50(10点満点平均6)





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