タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『ゴールデンボウル』 

4/20〜
日テレ系 土曜9時  期待度 ★★★★☆

期待と不安でいっぱいの
野島伸司ドラマ。

ボウリング場を舞台に
昔の恋人を思い続ける芥川(金城武)と
夫との冷めた関係に悩む瞳(黒木瞳)の関係を描く。

野島伸司だから何かやってくれそうな予感があるものの、
やはり土曜9時という枠に心配の種は尽きない。
でもとりあえずチェックはしとこう。

注目はしばらく芸能界を離れていた松本恵が
松本莉緒という名前で復帰すること。
それだけでも見る価値あるかも。




『ゴールデンボウル』 1frame

チーフプロデューサー:増田一穂
統括:井上健
プロデューサー:伊藤響、北島和久
演出:猪股隆一
脚本:野島伸司
音楽:大坪直樹
テーマ曲:「YOU ARE MY DESTINY」ポール・アンカ
制作:日本テレビ、アァベエベエ
出演:金城武、黒木瞳、松本莉緒、大滝秀治、竹脇無我、瀬川瑛子、
   榎本加奈子、小川直也、出川哲朗、笑福亭鶴光、小木茂光、
   藤沢大悟、岩崎杏里、関口翔太、西川義郎、三波伸一、他

基本的に野島伸司の才能は認めているので
この新作を楽しみにしていた反面、
日テレ土曜9時という枠に
正直言って過剰な期待はしていなかった。
ところが、予想以上に面白いじゃん。

TBSで伊藤一尋プロデューサーと一緒に作った
「高校教師」や「未成年」のようなタイプの作品ではない。
かといって、同じ日テレ系で作った
「世紀末の詩」とも違う。

野島伸司が本当は「フードファイト」で
どういうものをイメージしていたかが分かる、
そんな作品に仕上がっているのだ。
(「フードファイト」は企画だけで、
 脚本は別の人が書いていた)

大きなストーリーとしては
つぶれかけたボーリング場を買い上げるために
地上げ屋が次々と送り込んでくる挑戦者を
毎回、芥川(金城武)と瞳(黒木瞳)がうち負かしていく、
というだけだと思う。

ただ、そこに関わる人たちの人生や恋愛を
コミカルに、メルヘンチックに描いていく感じ。
その方法が野島伸司らしくロジカルで
バランスがいいのだ。

音楽はテーマ曲でポール・アンカを使っているように
50'sの曲が頻繁に流れる。
これも画面の雰囲気と合っていて
なかなかよろしい。

キャストでは瀬川瑛子がかなり心配だったけど
意外に上出来だった。
まあ、普段もコミカルだしな、あの人は。

黒木瞳の旦那さん役は電話だけの出演だったけど、
声は篠田三郎だったような…。
出てくるのかな。

肝心のボーリングのシーンは
実際に役者が投げたものと、
プロが投げたボールをCGでつないだもの、
2種類が使われていた。
でもこれは金城武も黒木瞳もフォームがきれいなので
ほとんど違和感がなかったな。

唯一、気になったのは、
金城武がセリフの中で“汚名挽回”と言ったこと。
これはもちろん“汚名返上”か“名誉挽回”のはず。
脚本が間違っていたのか、あるいは
セリフを言い間違えたのに誰も気がつかなかったのか。
笑いを取るシーンではなかったので
やたら気になってしまった。

野球をモチーフにした「木更津〜」のように、
このドラマも1フレーム、2フレームと回が進んでいくようだけど、
全11話って発表されてるんだよなあ。
ボーリングは野球みたいに延長がないから、
最後はどうするつもりなんだろう。

いずれにしても、これが“当たり”なら
今期はかなり楽しめるな。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ゴールデンボウル』 2frame

演出:猪股隆一
脚本:野島伸司

地上げ屋の入場テーマは毎回変わるのか。
前回は早口言葉だったけど、
今回は「一週間の歌」の替え歌だった。
ちなみにこんな感じ。

月曜日はパチンコやって
火曜日は競馬に行って
水曜日は競艇行って
木曜日は麻雀やって
金曜日は競輪行って
土曜日はプレステやって
日曜日はラスベガス
はい! チュラチュラチュラ〜

まあ、プレステあれば何でもできるからな(笑)

さて、今回も
“ブルーサンダー・エレクトリックパレード
 東京ディズニーランド”を操る芥川(金城武)と、
“ピンクパンサー2002・シュビドゥバー・パパイヤ”
を操る瞳(黒木瞳)が地上げ屋チームと対決。

当然、芥川・瞳チームが勝つわけだけど、
横並びのスプリット(メイキング・イン・フィット)、
バイバイ・スプリットに絡めながら
芥川の死んだ元恋人に関連した話が中心だった。

そして、試合中の2人の会話で
野島伸司らしい恋愛観が語られる。

ひとり寂しく死んでいった彼女を、
ずっと想い続け、新しい恋人を見つけようとしない芥川。
それに対し、瞳は
“寂しいのは本当に彼女の方?”と問いかける。

“寂しいのは残されたあなたのはず。
 想い出はだんだん薄くなっていく。
 想い出せるうちはまだいい。寂しくても、悲しくても。
 だけど、もはやあなたの寂しさは、
 彼女を失った寂しさじゃない。
 悲しさも次第に癒され、
 あなたはもう、その寂しさもなくなっている。
 残っているのはストイックな自分よがりの孤独”

ここで画面は、1本だけ残ってしまったピンに。
芥川はこのピンを倒すことができない。

“本当は彼女のことなど、もう愛してはいない。
 時間が経つとシャボンの泡のように消えるの。
 そういうものなの”

“違うね、オレは違う”と芥川。

“そこまで言うならなぜ?
 なぜあなたは彼女が亡くなった時に
 あとを追わなかったの?”
“そんなこと…”
“(彼女は)望まない?
 そんなこと、どうして勝手に言えるの?
 だったら彼女が、あなたにひとりでいて欲しいって
 望んでるかどうかも分からないじゃない”

このあと、ピンの倒れ方が
別れる恋人のようでイヤだ、と
(2本のピンが別々の方向に飛び散ってしまうから)
死んだ恋人が言っていたバイバイ・スプリットを
芥川が取って、2人は試合に勝利する。

試合後、芥川は
“ひょっとして彼女も新しい恋人を見つけて
幸せになって欲しいと思っているかも”
と考えを改めようとするが、
今度は逆に瞳が否定する。

“やっぱり私だったら
 あなたにずっとひとりでいて欲しいと思う。
 決して誰にも心を奪われずに”

旦那に浮気をされ、
ひとり寂しい思いをしているのは実は瞳。
“時間が経てば愛は消えてしまう。そういうもの”
と芥川に言い聞かせながらも、
ずっと自分だけを見て欲しいと願っているのは瞳自身なわけだ。

ボウリングのピンに人間模様を投影させながら
死んだ恋人を想い続ける芥川と
夫との冷めた関係に傷ついている瞳の心情を
実にロジカルに描いたストーリーだった。

もちろん、ドラマ全体としては
金城武のやや聞き取りにくいセリフを始め
すべてがスムーズに見られるわけではない。

ただ「君が嘘をついた」などの初期ラブコメディー路線。
「高校教師」「この世の果て」などの中期ストイック純愛路線。
これらを経てきた野島伸司だからこそ描ける世界観のような気もする。

一筋縄ではいかない野島伸司の新たなラブコメディー。
しばらくはじっくりと観察してみたい。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ゴールデンボウル』 3frame

演出:猪股隆一
脚本:野島伸司

やっぱり篠田三郎が登場。
ただ、とりあえず今回は
ホテルから出てくる映像もぼかして、
瞳(黒木瞳)の夫であることは伏せたままだった。

…で、全体の内容なんだけど、
前回が「世紀末の詩」第7話でも扱った
愛する人が死んだ時、後を追うのが愛か、
心に留めて生きるのが愛か、
というテーマをさりげなく入れていたのに対して、
今回は感情的な部分が多く、
今ひとつパッとしない感じだった。

今日だけは負けたくない、いう瞳の決意も
相手が若い女性ペアだったということはあるにしても
説得力に欠けるものだったしね。

とはいえ、瞳が芥川(金城武)とみどり(榎本加奈子)に
夫が浮気をしていることを告白したのは、
作品全体の流れを考えればトピックだった。

とくにトイレでみどりに言った
“(浮気している夫を)愛してるって言い続ける私は
 頭がおかしくなる一歩手前なのよ”
というセリフはかなり訴えるものがあったし。

全体的には軽いラブ・コメディーの体裁は保っているので
中身の恋愛論に関してはもう少しディープに描いて欲しい。

             採点  6.5(10点満点平均6)



『ゴールデンボウル』 4frame

演出:吉野洋
脚本:野島伸司

今回は、芥川(金城武)が、
瞳(黒木瞳)の夫(篠田三郎)の愛人(梅宮万紗子)に
会って話を聞いてくる、
というエピソードに絡めながら、
芥川と瞳の距離がぐっと縮まった
かなりロマンチックな回だった。

篠田三郎を徐々に出していたところや
愛人のキャラクターをあんな風にしたところが
全体の構成としては効果を発揮している。

愛人のキャラクターに関しては
これから変わる可能性もあるけど、
とりあえず今回は瞳の感情が愛人に向かわず、
自分自身の葛藤と
キスによって生じた芥川への揺れに
的を絞れたところに作品としての精度の高さがある。

あと、瞳と芥川が2人して同じような曲線で
盛り上がっていかないところもいい。

ラストで描写されていたように
キスのことはもちろん芥川も覚えている。
でも芥川はそれをことさら意識しないようにしている。
そのあたりのバランスもいい感じだ。

たぶん、最終回までには
芥川の死んだ恋人に似た女も出てくるだろうな。
対戦相手として。

偽ウルトラマンとか、偽仮面ライダーみたいに
対決モノの常套手段でもあるし、
そこを乗り切らないと
芥川に未来もないし…。

今回はディープな恋愛論ではなかったけど、
すべてにバランスがいい回だった。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ゴールデンボウル』 5frame

演出:吉野洋
脚本:野島伸司

多少、マンネリ感が出てきたところで舞台を温泉に。
芸者ボウラー(ひとりは木村多江!)との
対戦を絡めたコメディー部分も十分に笑えたけど、
今回はそれ以外にもかなり見応えがあった。

まず、前回までは瞳(黒木瞳)の旦那(篠田三郎)が
実は浮気をしていないという可能性も残っていたけど、
今回で浮気は確定的になった。

そしてその愛人(梅宮万紗子)は、
ずっと自分が旦那につきまとわれている、
と瞳に電話で話しておきながら、
実は瞳に離婚を決意させ、
旦那を自分のものにするための策略を練っていたのだった。

ところが、旦那は瞳と離婚する気がない。
愛人はホテルのバスルームで手首を切り…。
なんと愛人はリストカット症候群だったというわけだ。

この愛人問題は、当然まだまだ先がある。
まったく考え方の違う愛情表現を
今後どうやって描いていくのか。

中心となる芥川(金城武)と瞳との関係も
複雑な感情がゲーム中に語られた。

前回は唐突なキスに対する
瞳側の感情が中心に描かれたけど、
今回は芥川からの感情だ。

芥川が瞳とキスしたことを惚けたのは
瞳が人妻だったからでも、
昔の恋人に対する罪悪感からでもない。
(もちろん、多少はあったが…)
キスしたあと、瞳が旦那に離婚を言い出したので
ビビったわけでもない。

“恋人や夫婦は別れてしまうことがある。
 でも友達なら離れることはあっても別れることはない”
だから芥川はその方がいいと思った。
“たとえこれから、僕がどれほどあなたに惹かれたとしても”
友達の方がいいと。

それでキスしたことを惚けてしまおうと思った。
これは、恋人を永遠に別れてしまった過去を持つ芥川なりの
瞳に対する感情の持っていき方だ。

芥川にいつも大胆に迫る晶(松本莉緒)が
部屋にゴリ(小川直也)を待機させていて
“そりゃイザとなると恐いからさ”
という何とも可愛い描写。

温泉ボウリングのストライクなら相手が脱ぐ、というルールで、
脱げない芥川・瞳組は、芥川が顔にスミを塗られていたけど、
最後は瞳がストッキングを脱ぐというサービスカット付き。

そんな見どころもみせながら
今回もかなり込み入った脚本を書いてきた野島伸司だった。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ゴールデンボウル』 6frame

演出:佐久間紀佳
脚本:野島伸司

瞳(黒木瞳)の感情がおさまったわけじゃないけど、
旦那(篠田三郎)の愛人問題は
今回でとりあえず終息した感じ。
全体としてはわずかな出演だったにも関わらず、
愛人(梅宮万紗子)の性格や考え方は
うまく表現されていたと思う。

そんな中で旦那は
“妻がいないと生きていけない。
 それが分かった。
 妻から離婚話を突きつけられて”
と芥川(金城武)に告白する。

しかし、芥川も
“彼女の魅力はそばにいる時は気づかないのかも。
 それがすごく自然で。
 消えてしまうと寂しくて、きっと耐えられない”
と、死んだ恋人と瞳を重ね合わせていく展開だ。

このあたりの構成は
一見、ただのメロドラマっぽい作りだけど、
かなり綿密に組み立てられている。
野島伸司が他の脚本家よりも優れているのは、
実はこういうところだと思うんだけどね。

前半、パターン化させて笑いを取っていた
試合の申し込みシーンなどは、
微妙に変化させて
しつこくない作りにしてあるところもいい。

そのかわり今回などは
芥川が瞳の旦那から会社の部下だと紹介されて
強引に瞳の家に泊まらされるシーンなどで
コメディー色を確保していた。

お気楽に見られる作品でもあるんだけど
かなり質が高い。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ゴールデンボウル』 7frame

演出:猪股隆一
脚本:野島伸司

今回も木村佳乃と堺雅人という
かなり豪華なゲスト。
しかも芥川(金城武)の昔の友人役で
登場した堺雅人の役名は太宰だった(笑)

それにしてもこのドラマは
コメディーとシリアスのバランスがいいなあ。
とくに今回は構成と演出が際立って良かった。

たとえば、
冒頭で太宰(堺雅人)が芥川に
何かしらの因縁があるという前振りを入れて、
ボーリング場での芥川を
誰かが隠し撮りしているシャッターショットを入れる。

その後、太宰がカメラを持って
芥川の家を探っているシーンを入れる。
ここで当然、隠し撮りしていたのは
太宰だと視聴者は思う。

そして、瞳(黒木瞳)が芥川に
家を探っている男がいた、と報告した時に
“興信所が調べてるんじゃないの?”と
さりげないセリフを入れておいて、
太宰が芥川の部屋の中にいる状態で
部屋の外にいる瞳に対してシャッターショット。

これで最初のシャッターショットも
太宰ではなかったことが分かる。

で、明らかにおかしい
瞳が芥川の逆さまつげを取るシーンでは
逆にシャッターを切る演出は入れない。

もちろん、ここもシャッターは切られていて、
最後に興信所の人間が
瞳の旦那(篠田三郎)に報告するわけだけど、
この一連の構成はうまかった。
旦那に“逆さまつげでも取ってたんじゃないの?”
と言わせるところまで含めて。

芥川の人間性を描きながら瞳と芥川の距離を縮めて、
なおかつ瞳の旦那が
瞳と芥川の関係に気づくというところまで描いた今回。
これまた見事だった。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ゴールデンボウル』 8frame

演出:吉野洋
脚本:野島伸司

死んだ恋人に似ている女性ではなくて、
本人を出してきたか…。

死んだと言っていた恋人が実は生きていた、
という展開は、本来は面白くないんだけど、
このドラマはそういうストーリーが
メインではないのでまったくかまわない。

むしろ、この事実で
芥川(金城武)と瞳(黒木瞳)の関係、
いや、複雑な恋愛観の描き方に
幅が出てくるので歓迎したいくらいだ。

今回はまず、
芥川が瞳の旦那(篠田三郎)に、
“(瞳に)恋愛感情がある”と言うまでの流れが
実に野島伸司らしくて面白かった。

そのシーンがあった上で試合中の会話があり、
そして最後の瞳の涙があった。

ものすごくロジカルな構成で、
なおかつ、芥川と瞳の性格と恋愛観を
見事に表現してたんだけど、
意外と普通の不倫モノに見られてしまうのかなあ。
だとしたら残念。

まだ語られていない
芥川と一美(吉川ひなの)の過去も描かれるであろう
次回以降にかなり期待だ。

…って、次回はお休みか。
次回の対戦相手は松浦亜弥なのに(泣)

ていうか、
やっぱり野島伸司も松浦亜弥には
目をつけてたところがトピックだな。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ゴールデンボウル』 9frame

演出:猪股隆一
脚本:野島伸司

今回のゲスト、松浦亜弥は、
地上げ屋が送り込んだ刺客ではなくて、
ボウリングのTV番組に出演するアイドルという設定。
ストーリー的にもほとんど意味がなくて
かなりもったいない使い方だった。

ただ、全体の内容はすさまじくディープ。
最初、一美(吉川ひなの)のキャラクターに
違和感を感じまくりだったんだけど、
なぜ芥川(金城武)が一美とつき合っていたのか、
なぜ自分の中で一美を死んだことにしていたのかが語られるにつれて、
その違和感も無くなった。

圧巻だったのは瞳(黒木瞳)と旦那(篠田三郎)の会話。
“お前に恋愛感情がある。
 彼はそう言ったよ。
 ぬけぬけと夫である私にね”
という旦那の言葉を聞いた時の瞳の表情、
そこから瞳がゴールデンボウルに向かう展開。
ここは見事と言うしかなかった。

そして瞳との会話のあとで
番組の約束を破り、最後まで本気で投げる芥川。
パーフェクトというボウリングとしての盛り上げも見せながら
芥川と一美との関係に変化が訪れる。

うーん、ここまで深く描くとは思わなかったなあ。
しかも今回は、地上げ屋(小木茂光)も
ただの地上げ屋でないことが、
ゴールデンボウルのスタッフ、柴原(藤沢大悟)との
エピソードで明らかになった。

恐るべき作品かも。

             採点  8.0(10点満点平均6)



『ゴールデンボウル』 10frame

演出:吉野洋
脚本:野島伸司

毎回、繰り返してきたパターンを少しずつ崩して
いよいよ佳境に入ってきた。
1話ずつの構成もうまいけど、
こうしてみると全体の構成も緻密だ。

今回はTV番組の対戦相手として
本物の世界チャンピオン(パーカー・ボーン)が登場。
曲芸のようにスプリットを取り続ける対戦は
今までにない面白みがあった。

そして、地上げ屋の辺見(小木茂光)が
ゴールデンボウルのオーナー(大滝秀治)の息子
であることが明かされる。

なぜ今まで毎回、
オーナーは地上げ屋の挑戦を
言われるがままに受けてきたのか、
対戦を2人仲良く並んで見ていたりしたのか、
ちゃんと理由があったことがここで証明される。

黒田(竹脇無我)にも
みどり(榎本加奈子)の愛が受け入れられない
理由があることが分かった。

これは辺見がスムーズに
ゴールデンボウルを継げる理由にもなっていて
さすがに無駄がない。

柴原(藤沢大悟)は、家がお金持ちでも
大卒のエリートでもなかった。
芥川(金城武)の最後の相手は
もしかしたら彼なのか?

今回、初めて芥川が瞳(黒木瞳)の前で涙を流し、
なぜ一美(吉川ひなの)にこだわってしまうのかも語られた。

もう、芥川を救えるのは瞳だけだし、
瞳を救えるのも芥川だけ。

さて、最終回、
野島伸司はどんな物語を用意してるのか、
楽しみで仕方がない。

             採点  8.0(10点満点平均6)



『ゴールデンボウル』 11 final frame

演出:猪股隆一
脚本:野島伸司

すごい。
野島伸司の才能を遺憾なく発揮した
圧巻の最終回だった。

最後の対戦相手を
ぬいぐるみを着た日本チャンピオンにしたところが
まず見事だった。

前回、芥川(金城武)と瞳(黒木瞳)は
世界チャンピオンも破ってしまったのだから
TV局が対戦相手を探すのに苦労する
という設定は至極当然。
番組を盛り上げるために
TV局は正体が分からない覆面ボウラーを仕立てることにする。

ちなみにその日本チャンピオン役で登場したのは
緒沢凛(極楽とんぼ・加藤の奥さん)と小林一三。
「フードファイト」のアツアツお掃除カップルだった。
何という粋なキャスティング!

もちろん、この2人がレーンに立つことはない。
直前に辺見(小木茂光)らの手によって
拉致されてしまうから。
ぬいぐるみに入るのは瞳と柴原(藤沢大悟)だ。

瞳は離婚し、誰にも行き先を告げずに
ゴールデンボウルを去っていた。
瞳は最後に芥川に会いに来たというような状況で
ぬいぐるみの中に入ることになる。

柴原が芥川と対戦する理由は
ここ数回できちんと描かれていた。
瞳の代わりに芥川のパートナーとなったのは晶(松本莉緒)。
この4人で最後のゲームが行われる。

辺見が柴原を特訓する上で使っていた
「黒猫のタンゴ」は、
辺見の母親に対する郷愁を表していたわけだけど、
柴原が着るぬいぐるみも黒猫。
このあたりのアイテムの使い方は本当にうまい。

柴原が途中で腕を骨折してしまう展開は
かなり劇画チックで「そんなバカな」という感じだったけど、
このドラマにおいてはそんな展開があっても
まったく冷めることがない。

この柴原の途中退場で瞳もぬいぐるみを脱ぐことになり、
芥川と1対1の対決になる。

ラブストーリーである以上、
芥川と瞳は何らかの決着をつけなくてはならなかった。
それがこの最後のゲームで語られることになるわけだ。

ところでこの最終回の冒頭、
芥川と辺見の会話の中で
かつてボウリングは家族の象徴だった
という話が出てきた。

父親が力強いボールを投げ、子供がその背中を真似る。
母親はやさしくガーターになる子供を見つめる。
でも、今はそんな時代じゃない。
ボウリングは“古き良き時代の化石みたいなゲームさ”
と辺見が言う。

これに対して、
ボウリングには夢があると反論する芥川。

力が強い者、お金があっていい道具を持っている者が
必ずいいスコアを出すわけじゃない。
時にはピン同士が助け合って、
偶然にストライクも出る。
不可能なスピリットが取れてしまう時もある。

もともと宗教的な儀式だったボウリングは祈りにも似ている。
人生も悪くないと思わせてくれる、と。

この祈りが
ラストゲームの最後の投球に表現される。

芥川の10フレーム。
残ってしまったピンは7番・10番。
最も離れた2本のスプリットで
全世界で5年に1〜2回取れるか取れないかという
奇跡のスプリットだ。

このスプリットは蛇の眼のように離れていることから
別名・スネークアイと呼ばれていて、
ここでも「瞳」と関連づけがある。
芥川はこの「蛇の瞳」を取ることで
瞳との関係に決着をつけようとするのだ。

行き先も告げずに一度は芥川の前を去ろうとした瞳だが
瞳自身の気持ちも実は芥川と同じ。
離婚は芥川のせいではない、
というのはむしろ瞳の意地で、
芥川とずっと一緒にいたい気持ちは変わらないわけだ。

そしてこの最後の投球の前に
瞳は奇跡であると同時に夢のスプリットでもあると言う。
“もしもあなたがこれを取れたら
 自分にも素敵なことが起きるかもしれないと
 みんな願掛けしてるかもしれない”と。

ここで柴原は晶に対する想いを、
みどり(榎本加奈子)は黒田(竹脇無我)に対する想いを、
オーナー(大滝秀治)は息子・辺見に対する想いを祈る。

もちろん芥川も
“もしも取れたらあなたはどこへも行かない。
 ずっと僕のそばにいてくれる。
 あなたは僕を好きになる”
と願いをかけて投球に入る。

瞳の願いはもちろん、このスプリットを取って…。

ボールが10番ピンに向かって転がる間に
それぞれの祈りを捧げる人の表情、
TVの前で手を握る恋人たちの姿などが挿入される。
ここの演出は本当に圧巻だった。

そしてボールに弾かれた10番ピンは
奇跡のキックバックをして7番ピンを倒す。
抱き合う芥川と瞳。

ここで終わる手もあったんだけど、
野島伸司はもう少しだけエピローグをつけた。

まず、オーナーの件。
じつは盲腸だったとみんなに言って
最後の試合を見に来ていたオーナーだけど、
もちろんあの大手術が盲腸であるわけもなく、
ボウリング場で息を引き取ってしまう。

ボウリング場(みんなの人生)が
新しい時代を迎える象徴として
これは仕方なかった。

で、最後は芥川の部屋の隣に引っ越してきた瞳。
すぐに一緒に暮らすわけじゃないところが
瞳の性格をきちんと表現していて微笑ましかった。

緻密な構成と奥深いセリフで紡いだ
笑えて泣けるラブストーリー。
本当に見事だった。

             採点  9.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★★
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.64(10点満点平均6)






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