タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『GOOD LUCK!!』 1/19〜
TBS系 日曜9時 期待度 ★★★★☆木村拓哉主演の青春群像劇。
航空会社が舞台で
キムタクは新人パイロット役。共演はキャビンアテンダント役で内山理名、
男勝りの整備士役で柴咲コウ。
他に堤真一、黒木瞳、竹中直人、
いかりや長介などが出る。正直、もう木村拓哉のドラマに期待感はないけど、
プロデューサーは「ケイゾク」「いら夏」などの植田博樹。
木村拓哉とは同じ枠で「ビューティフルライフ」を作っている。
脚本は「きらきらひかる」「タブロイド」などの井上由美子。スタッフに期待して★4つ。
『GOOD LUCK!!』 第1話プロデュース:植田博樹、瀬戸口克陽
演出:土井裕泰
脚本:井上由美子
音楽:佐藤直紀
主題歌:「RIDE ON TIME」山下達郎
制作:TBS、TBSエンターテイメント
出演:木村拓哉、柴咲コウ、内山理名、黒木瞳、堤真一、いかりや長介、
段田安則、竹中直人、ユンソナ、加藤貴子、要潤、市川実和子、
安住伸一郎、佐藤康恵、中尾明慶、西山繭子、植松真美、天野浩成、
岡あゆみ、岩堀せり、畑田亜希、他パイロットというお仕事モノを
無条件に受け入れられるのって
小学生までかも。少なくとも初回に関してだけ言えば
かなりこっぱずかしい場面が多かった。明らかにワケありの査察官・香田(堤真一)が
新海(木村拓哉)を異常に叱責したり、
やむを得ないトラブルに
乗客がバカみたいに騒いだり。ただ、全体の味つけはそんなに悪くなかった。
歩実(柴咲コウ)とうらら(内山理名)の
対照的なキャラクターとか、
ほんのわずかだけど
ユンソナのシーンとか、
竹中直人の“バーロー”とか(笑)それにしても、
この初回の視聴率は31.6%か。
恐るべしだな、木村拓哉。
意外と10%くらいは安住の数字だったりして(笑)今回は出番が少なかったけど、
(これからもこんなものか)
予想以上にナチュラルにやってたので
安住伸一郎にもちょっと期待だ。採点 6.5(10点満点平均6)
『GOOD LUCK!!』 第2話演出:土井裕泰
脚本:井上由美子前回よりも見やすかった。
新海(木村拓哉)が、
コーヒーを飲みながら富樫(黒木瞳)と話すシーン、
トイレで太田(段田安則)と話すシーン、
父親(いかりや長介)に諭されるシーン、
ハンガーで歩実(柴咲コウ)と話すシーン、
と、畳みかけた構成が良かったんだと思う。まあ、それぞれに言ってる内容は
思いっきりストレートで、
相変わらずこっぱずかしいんだけどね。ハンガーで歩実が話したエピソードは
たぶん自分のことだと思うけど、
この歩実の両親のことや、
富樫と香田(堤真一)の過去などについては
早めに明らかにして欲しい。あと、ユンソナは
かなりいいアクセントになっている。
このまま続けて欲しい。
リンクするのはずっと後でいいんじゃないかな。採点 6.5(10点満点平均6)
『GOOD LUCK!!』 第3話演出:福澤克雄
脚本:井上由美子やっと離陸したな。
ここまで我慢して見た人は
もう最後まで見るでしょ?(笑)そのターニングポイントとなる回が
福澤演出だったというのも
偶然じゃないような気がする。最後に歩実(柴咲コウ)が
電話をかけるシーンなんて
すごく美しかったね。大きなストーリーとしては、
歩実の両親が死んだ飛行機は
本当は香田(堤真一)が操縦するはずだったんだと思う。それがおそらく香田の体調不良か何かで
スタンバイのパイロット(長谷川キャプテン)に代わり、
そのパイロットも死んでしまった。その事故がキッカケで香田は変わった。
富樫(黒木瞳)とのつき合いも続かなくなった。香田は当時のことを悔やんで
歩実の家に無記名でお金を送っている?ただ、飛行機事故の場合は乗客の数が多いので
すべての遺族に毎年30万円送るのはいくら何でもムリだよな。
ここはまだ何か明かされてない事情があるのかもしれない。放送前は内山理名と柴咲コウとで
三角関係みたいになるのかと思ってたけど、
最初から木村・柴崎の線がしっかりしてるので安心した。
内山理名じゃムリだったろうな、この役は。今回、最後に新海(木村拓哉)と歩実が電話で交わした
“あたし、緒川。整備の”
“整備のって別に言わなくても分かるよ”
というセリフはすごく良かった。採点 7.5(10点満点平均6)
『GOOD LUCK!!』 第4話演出:平野俊一
脚本:井上由美子特別チャーター便に関するくだりは
かなり脚色もあっただろうけど、
香田(堤真一)・富樫(黒木瞳)との関係を絡めて、
エンターテイメント性とシリアスなドラマ性を
うまく描いていたと思う。ただ、やっぱり個人的には
木村拓哉の表現力にひく場面が多い。
とくに台湾から帰国したあと、
会社でずっと待っていた新海(木村拓哉)が
富樫と話すシーン。この第4話全体でも重要なシーンだっただけに
もっと自然な会話で伝えて欲しかった。
もちろん、あれが木村拓哉の考える
ナチュラルな表現なんだろうけど。歩実(柴咲コウ)のキャラは
どんどん明確になって良くなっている。採点 7.0(10点満点平均6)
『GOOD LUCK!!』 第5話演出:土井裕泰
脚本:井上由美子うらら(内山理名)にスポットを当てる回は
必ずあると思っていたけど無難にこなした感じ。
しかも新海(木村拓哉)と歩実(柴咲コウ)の関係を
近づけるエピソードも絡めていたし。今回は木村拓哉の演技もそんなに浮いてなかった。
兄弟ゲンカをするシーンはむしろ自然だったくらいで。
そういう意味でも今回は見やすかった。キャビンに聞こえるくらいの大声でクルーを怒鳴るなんて
香田(堤真一)が一番会社の恥じゃないか!
みたいなツッコミはナシ(笑)ちなみに予告のテロップで表記された
「ダイバート(DIVERT)」というのは、
悪天候などの理由で飛行機が代替空港に着陸すること。
ダイハード(DIE HARD)ではないので念のため(笑)採点 7.0(10点満点平均6)
『GOOD LUCK!!』 第6話演出:平野俊一
脚本:井上由美子霧の切れ間が100m?
十分にリスクを背負ってると思うんですけど…。
まあ、そのへんはエンターテイメントだからね。
気にしない、気にしない。ただ、いくら北京とはいえ、
ホテルのフロントで
医者が日本語で騒ぐっていうのはどうなんだろう?
もう少し知的な慌て方にしてもよかったんじゃないかな。その医者は植田Pがらみで
「いら夏」の須野内先生、じゃなくて石田えり。
でもさすがにオペの患者は亜子(広末涼子)じゃなかった(笑)で、全体的には今回も
エンターテイメントと登場人物の人間関係を
うまく絡めて描けていた感じ。とくに成田へ戻ってきた後の
新海(木村拓哉)と歩実(柴咲コウ)、
香田(堤真一)と富樫(黒木瞳)、
この2組のカップルの描き方の違いは良かった。それにしても新海と歩実は急接近だなあ。
もうお互いメロメロって感じじゃん。でも歩実のキャラはかなりいいので
このまま突き進んでいいと思う。
当然、香田の過去が明かされてくれば
甘いだけのラブストーリーには成り得ないんだし。阿部(要潤)の歩実への感情は
話が広がりすぎるのでいらないと思う。採点 7.5(10点満点平均6)
『GOOD LUCK!!』 第7話演出:福澤克雄
脚本:井上由美子パイロットという仕事の厳しさと
香田(堤真一)の過去を絡めた話。
終盤に向けてのブリッジという位置づけか。バランスは取れていたと思うけど、
さすがに「そんなバカな…」という描写も多かった。航空法で義務づけられている
半年ごとの機長の試験(シックスマンスチェック)は、
口頭試問、筆記試験、そして
フライトシミュレーターによる技能審査じゃなかったっけ?行きの運行でいきなり本人に不合格と告げて、
帰りの便が最終フライトっていうのはちょっと…。まあ、ドラマだからいっか。
採点 7.0(10点満点平均6)
『GOOD LUCK!!』 第8話演出:土井裕泰
脚本:井上由美子ラストの新海(木村拓哉)の事故シーンは
ちょっとムリがあったかな。
ドラマとしての盛り上げも考慮しての展開なんだろうけど
流れとしてはかなり不自然だぅた。ただ、今まで徐々に明かされていた
香田(堤真一)と歩実(柴咲コウ)の過去を描きながら、
新海の実家のシーンを入れつつ
新海と歩実の関係とも絡めていたストーリーは上質だった。香田が何人の遺族にお金を送っていたのかは
明かされないままになりそうだけど、
まあ、それはいっか。最後まで全体のバランスは崩さないで描いて欲しい。
採点 7.0(10点満点平均6)
『GOOD LUCK!!』 第9話演出:福澤克雄
脚本:井上由美子前回の新海(木村拓哉)の事故は、
一般における健康と
パイロットにおける健康の違いを
ドラマティックに描くためのものだったのか。ハッキリ言ってドラマティック過ぎたような気もするけど、
木村拓哉の演技はなかなか良かったと思う。
とくに病院で父親(いかりや長介)から
もうパイロットには戻れないと聞いた時の演技とか。こっぱずかしいくらい前向きな新海の姿には
リアリティーさが欠けるかもしれないけど、
それがこのドラマの良さでもあると思う。
制作者側の姿勢が一貫している点は評価したい。結局、大きな失速もしないまま迎える最終回。
どれくらい視聴率を取るのかも興味深い。採点 7.0(10点満点平均6)
『GOOD LUCK!!』 最終話演出:土井裕泰
脚本:井上由美子“へぇ〜”
“1へぇかよ!”
は現場のアドリブなんだろうなあ。ていうか、他局ネタをよくそのままオンエアしたな。
意味が分からなかった人は
フジテレビ系で7月から水曜9時に格上げされる
「トリビアの泉」をどうぞ。で、注目の最終回。
最後までエンターテイメントに徹して
うまくまとめたと思う。こんなに機内で騒ぎばかり起きる航空会社の飛行機なんか
乗りたくねえよ!というツッコミは当然ナシで(笑)、
歩実(柴咲コウ)もクルーのひとりであるという描写、
ドラマチックに歩実に雲の上の太陽を見せる効果、
乗客の安全を徹底的に考えるという基本姿勢、
すべてを内包した効果的なストーリーだったと思う。とくに停電の理由が判明した後、
新海(木村拓哉)と歩実の会話による、“コックピットへの影響は?”
“キャビンのシステムと飛行機をコントロールするシステムって
別系統だから問題ない”
“それって整備士として言い切れる?
いや、オマエを信じないわけじゃなくて、
オマエを含めた300人の命がかかってるから”というシーンが良かった。
その後、歩実が敬語で新海にもう一度説明する部分も含めて。もちろん、停電の理由は最初から視聴者に想像できる範囲で、
そういう意味でのハラハラとした展開はなかった。
いや、このドラマに一貫してなかった。つまり、とことん分かりやすい内容に徹していたわけで、
その点においてこの作品は軽かったと言わざるを得ないと思う。ただ、スタッフはそういう作品を確信犯的に制作していたのは明らかで、
しかも、分かりやすさをカバーする要素として
木村拓哉という飛び道具を使うこと以外にも、
脚本、演出、あらゆる面で工夫を凝らしていた。ここが「美女か野獣」との決定的な違いだった。
好き、嫌い、という次元ではなく、
明らかに「GOOD LUCK!!」は「美女か野獣」を上回っていた、
と断言していいと思う。
(ちなみに個人的には木村拓哉より松嶋菜々子の方が
100倍好きです。当たり前か・笑)ラブストーリーという面でも
新海・歩実のカップルだけでなく、
香田(堤真一)・富樫(黒木瞳)を描いたことで深みが出ていた。ラストの新海と歩実のキスシーンにしても
2人の出会いの場面で印象的だった
“ヘタクソ!”というセリフを効果的に入れて、
艶のあるラブシーンに仕上げていたし。本筋にはまったくリンクしなかったけど、
ユンソナの使い方にもセンスが感じられた。
これには好き嫌いがあると思うけど、
ドラマ全体を考えるといいアクセントになっていた。というわけで、
連ドラ冬の時代にこのドラマが高視聴率をキープしたのは、
決して偶然ではなかった、
ということは確認しておきたい。採点 8.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★★☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★★★☆
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ★★☆☆☆
話題性 ★★★★★平均採点 7.10(10点満点平均6)
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