タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 4/14〜
日テレ系 水曜10時 期待度 ★★★★☆同名の大ヒットコミックをドラマ化。
自閉症児を抱えながら
周囲の人々の力を借りて力強く生きていく
若き母親の姿を描く。母親役に篠原涼子。
彼女を支える教師役に小林聡美。
難しい自閉症児の役を担当するのは
「砂の器」で和賀の少年時代を演じた斎藤隆成。まだまだ誤解の多い自閉症を
家族を軸に正しく扱ったドラマとしては
NHKの「抱きしめたい」が記憶に新しいけど、
それに勝るとも劣らない作品になる予感はある。脚本は「太陽は沈まない」「ビギナー」の水橋文美江。
メイン演出は「すいか」の佐藤東弥。
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第1話チーフプロデュース:梅原幹
プロデュース:櫨山裕子、内山雅博
演出:佐藤東弥
脚本:水橋文美江
原案:「光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜」戸部けいこ
音楽:溝口肇
主題歌:「万華鏡キラキラ」RYTHEM
制作協力:オフィスクレッシェンド
制作:日本テレビ
出演:篠原涼子、小林聡美、山口達也、斎藤隆成、高橋惠子、金沢碧、
武田真治、渡辺いっけい、鈴木杏樹、井川遥、甲本雅裕、他初めての子供を妊娠した喜び、
生まれてくる子供への期待からスタートしているので、
光(佐藤隆成)が自閉症と診断される場面も描かれた。この直前の幸子(篠原涼子)の悩み、
幸子の母親(金沢碧)の気遣い、
告知された時の動揺、
そして夫(山口達也)への報告の仕方などは、
かなり丁寧な描き方だったと思う。ただ、夫や姑(高橋惠子)を最初は無知に描くのは仕方ないにしても
もう少し別の描写をして欲しかったなあ。
まあ、現実にもああいう人はいっぱいいるんだろうけど。そういう意味では今後の相良(鈴木杏樹)の扱い方も心配。
自閉症に関する無理解を描くことは重要だけど、
ドラマとしての精度を落とすようなことはして欲しくないな。元ヤンキーで同じ自閉症児を持つ母親役に
井川遥を起用したのもどう出るか。
元ヤンキーって滲み出るものだから
井川遥には荷が重そうだけど。あと、光のナレーションは入れない方がいいと思うな。
“ごめんね、ママ〜”は確かに泣けたけど、
あれはやっぱり客観的な願望だと思う。聞きたくても聞けない、
抱きしめたくても抱きしめられない辛さが
この世界にはあると思うので。それでも小林聡美はいるからこのドラマは大丈夫。
そう思わせるくらい、
小林聡美の落ち着いた、淡々とした演技は良かった。幸子に向かっての“あなたのせいじゃない”という言い方は
本当に人を救う言い方だった。本格的な学校生活が始まる次回以降に期待しよう。
採点 7.0(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第2話演出:佐藤東弥
脚本:水橋文美江入学式後の教室のシーンとか、
教員免許を持つ川見(市川実日子)の反応とか、
描き方としてはちょっとな…。でも、井川遥は意外と頑張っていた。
今回くらいやってくれれば大丈夫か。いずれにしても
小林聡美と篠原涼子のシーンは際立って質が高い。
それだけでもこの作品を見る価値はあると思う。採点 7.0(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第3話演出:佐久間紀佳
脚本:水橋文美江まだ良いシーンと悪いシーンに差がある感じ。
誤解や偏見があることを伝えることに意味はあると思うけど、
もう少し描き方を工夫して欲しい。そういう不満点は多々あるものの、
最後まで見るとやはり印象は悪くない。
今回はとくに幸子(篠原涼子)も参加した授業で
里緒(小林聡美)が“これからは先生にすぐ言って”と
萌(大城紀代)に言った時、
幸子が“光に呼びかけて”と訂正したシーンが良かった。雅人(山口達也)が協力的になってきたこと、
貴子(高橋惠子)が自閉症を理解しようとし始めたことで、
ドラマを見る上でのストレスは軽減されてきた。採点 7.0(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第4話演出:佐藤東弥
脚本:水橋文美江やっぱり井川遥には荷が重いかなあ。
乱暴な言葉使いのセリフはかなりムリがあった。
「八百善の人びと」のみどり役はけっこう頑張ってると思うけどね。里緒(小林聡美)の誕生日を幸子(篠原涼子)が祝う最後のシーンは
コミカルな雰囲気も取り入れてあって良かった。
こういうシーンは今後も大切にして欲しい。薫(鈴木杏樹)の描き方は好きじゃないけど、
意外と鈴木杏樹はハマってるかも。
今回、旦那も登場したので、
薫のキャラクターもしっかり描いて欲しい。採点 7.0(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第5話演出:佐藤東弥
脚本:水橋文美江幸子(篠原涼子)の気持ちは今回も良く描けていた。
貴子(関根惠子)と里緒(小林聡美)を交えた
3人の話し合いはさすがに泣けたし。でも、自閉症を取り巻く環境はこういうもの、
という部分にウエイトを置きすぎる気がする。
もう少しドラマとしての完成度を上げて欲しい。これを見た翌日に「アフリカのツメ」を見ると
井川遥と大倉孝二の絡みにホッとするな。採点 7.0(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第6話演出:佐久間紀佳
脚本:水橋文美江光(佐藤隆成)がいなくなるエピソードに
様々な要素を絡めてあって、
今回が今までで一番見ごたえがあった。自閉症を理解していない人の描写は毎回出ていたけど、
今回、自閉症は知っていても
自分が知っている症状が
自閉症のすべてだと思っている人を出したのは良かった。過去にも自閉症を扱ったドラマが放送されるたびに
その家族からウチの子はあんな行動をしないと
クレームが出たりしていた。
つまり、関係者でさえそのすべてをなかなか把握できないくらい
様々な症例があるのが自閉症。
それをこのエピソードの中でうまく取り入れていた。でも一番泣けたのはやっぱり光が帰ってくるシーンだろう。
抱きしめたくても抱きしめられない、
その幸子(篠原涼子)のつらさが、
横を素通りしてしまう光とそれを見送る幸子の表情に出ていた。親が離婚している同級生の環境とリンクさせたことは
またクレームが出るかもしれないけど、
むしろまわりの子供たちに差別的な意識を植え付けないという意味で
良いアプローチだったと思う。採点 8.0(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第7話演出:佐藤東弥
脚本:水橋文美江せっかく理解し始めてくれたまわりとの関係を保つために
頑張り過ぎてしまう幸子(篠原涼子)の心情が良く描かれていた。
そしてそれをサポートする雅人(山口達也)や
里緒(小林聡美)たちの気配りも。でも今回の見どころはやっぱり薫(鈴木杏樹)だろう。
光通信を読んで思わず涙を流したシーンは、
一般の視聴者サイドから見れば
今までで一番感情移入できたかもしれない。
だからこそ序盤の薫をもっと丁寧に描いて欲しかった気もするけど…。自閉症に対する誤解や偏見を分かりやすく描写する部分が減って
ドラマ的な質は上がってきた。採点 7.5(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第8話演出:佐久間紀佳
脚本:水橋文美江光(佐藤隆成)のような子を見守るまわりの姿勢を
運動会を通して描いた回。
連ドラの一話としては密度が薄かったかもしれないけど、
これは時間を使って描くことに意味があるので良かったと思う。あと、今回も鈴木杏樹が良かった。
今期の隠れたナイスキャスティングだな。採点 7.0(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第9話演出:佐藤東弥
脚本:水橋文美江里緒(小林聡美)があさがお教室を去っていく理由、
それを幸子(篠原涼子)が受け入れるエピソードを、
最終回ではなく、この段階で描いたことでより深く伝わった。前回の終わりで振っていた
同級生が光(佐藤隆成)のマネをしてしまうエピソードを加えたことも
連ドラの一話としては効果的。しかも、桜(武田真治)が
モノマネをする真由子(福田麻由子)に語りかけるシーンは
静かで、心がこもっていて、秀逸だった。こういう脚本を書かせると水橋文美江は抜群にうまい。
採点 8.0(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 第10話演出:佐久間紀佳
脚本:水橋文美江前回の“光より1日でも長く生きたい”という
幸子(篠原涼子)の言葉を受けて、
里緒(小林聡美)が言った、
手を貸すのは母親でなくてもいい、
いろんな人の手を借りればいい、
そういう未来が待っていればいい、
というセリフが良かった。光(斉藤隆成)が川見(市川実日子)と一緒に
初めて買い物に出るこのシーンは良かったな。NHKの「抱きしめたい」は、
このどうしようもない現実を
姉の決意を通して描いていたわけだけど、
今回の里緒のセリフも川見を絡ませることで
単なる理想論という印象を和らげていた。檜治(大倉孝二)に関しては、
やはりサブキャラクターなので
どうしても唐突な感じが出てしまうのが残念だった。採点 7.5(10点満点平均6)
『光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜』 最終話演出:佐藤東弥
脚本:水橋文美江厳しい終わり方。
でも、世の中がみんな
里緒先生(小林聡美)みたいな人ばかりではない、という現実は、
この作品の最も伝えたかった部分でもあると思うので、
ドラマの締め方としては間違ってなかったと思う。むしろドラマ前半のこうした部分の描き方は
多少不自然なところがあったので、
この終わり方は良かったと思う。この手のドラマは、
現実を伝えるというところにウエイトを置くか、
ドラマとしての完成度を上げるかのバランスが難しい。そういう意味では全体的に
「抱きしめたい」ほどの完成度はなかったと思うけど、
自閉症児を抱える母親の気持ちは
篠原涼子の頑張りもあってよく描けていた。小林聡美の淡々とした演技も
単にお涙頂戴のテイストにはならず、
静かにその内容を伝える役目を果たしたと思う。「抱きしめたい」のような
家族にスポットを当てたドラマ、
「君が教えてくれたこと」のような
高機能自閉症者にスポットを当てたドラマ、
そして今回の「光とともに…」のような
自閉症児を抱えた母と
彼女を支えた養護教諭にスポットを当てたドラマ…。様々な視点で何度もドラマ化していくことが
現実の誤解や偏見、無理解を無くすことにもつながると思うので、
これからも作り続けて欲しい。採点 7.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★☆☆
演出 ★★★☆☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★★★☆
音楽 ★★★☆☆
新鮮さ ★★☆☆☆
話題性 ★★★☆☆平均採点 7.27(10点満点平均6)